Trips with my RV.

RVでの小旅行。

作用機序不明3

2012-01-17 21:34:12 | Innocent joke
過去記事「作用機序不明 2011-01-26 20:58:43 | Weblog 」で少しだけプラセボ効果について書いたが、うっかりホメオパシーを引き合いに出してしまったので多くのお叱りを受けてしまった。

しかし、作用機序・・・薬剤がその薬理学的効果を発揮するための特異的な生化学的相互作用・・不明だけれども治癒効果を現す薬剤と云うモノが存在するのは、(私は)事実だと思っている。

その最たるモノがプラセボ(偽薬)である。プラセボとは本物の薬のような外見をしているが薬として作用する成分は全く入っていない。プラセボには、薬理的影響の殆ど無い乳糖とデンプンやデンプン糊にステアリン酸マグネシウム等のコーティングがされて、製剤メーカーの常識的な医薬品と同等のSP(strip package) 包装が施してある。治験における比較対照試験で二重盲検法を採る場合は、医師や看護婦と云った投与する側(観察者側)に於いても治験薬とプラセボを区別できない様にして行う事になっている。その場合の製剤や包装の外観もキチンと揃えてある。

この二重盲検法を行う理由は、観察者側が本物の治験薬の評価を高くし偽薬の効果を低く評価する事を排除する理由と、偽薬と知った観察者から投与される場合のマイナスの影響を排除する為である。

観察者バイアスは兎も角、偽薬と知った医師・看護婦から投与された偽薬の治癒効果が低い事は、既に数々の実験で確かめられている。当に二重盲検法の裏をかいた・・・偽薬と偽薬の治験である。医師や看護師と云った観察者側には、治験新薬と偽薬だと説明し、片側は本物の薬だと信じ込ませた上で単単盲検法(患者側から見て新薬と偽薬の区別を不明にする試験方法)で実施すると、両方とも偽薬であるにも関わらず、医師や看護師が本物の治療薬だと知っていた方が評価も高く、患者側の自覚症状の改善効果も高いのである。


Is the Placebo Powerless? ― An Analysis of Clinical Trials Comparing Placebo with No Treatment

Asbjørn Hróbjartsson, M.D., and Peter C. Gøtzsche, M.D.
New England Journal of Medicine 2001; 344:1594-1602 May 24, 2001



をgoogle翻訳等で翻訳してお読み下さい。(「プラセボは無力か?」と云う論文なので、私の考えを補強する目的では不適当カモ知れない。)

だが、この詳細な論文で明らかになる事は、プラセボ効果を生む根源は、薬理学的なものだけではなく理学的手法や操作や会話等の心理学的な行為を含めたモノを指しているとしていている点だ。医師や看護師と云った治験に参加する側が偽薬だと知っている場合の効果が有意に低いにも関わらず、医師や看護師も騙されて新薬だと思った場合には効果が高いのだ。つまり、プラセボ効果とは心理療法的効果だと二重盲検法で(或る意味)明らかになったとも云える。

私自身は「偽薬効果は客観的にも有意な改善が見られ、積極的に用いて良い治療法である」「もし客観的な改善はなくても自覚的・精神的な安息が得られるから認められるべきである」との考えに与するのだが、上の引用論文の医学博士Asbjørn Hróbjartsson氏は「いずれにせよ、いかなる場合も倫理的に認められない治療法である」と云う考えである様だ。つまり、治験を行う場合は被験者の同意を得てから偽薬を用いた比較実験を行う事が正しいとお考えの様である。

過去記事「作用機序不明 2011-01-26 20:58:43 | Weblog 」で頂戴したコメント(及び、私信)でも(ホメオパシーを引き合いに出してしまった愚は大いに反省したツモリだが)、プラセボ効果での治癒は「けがの功名を称揚するようなもの」ともお書きになられプラセボ効果による治療は倫理的に許せないとお考えの方が多い様だ。

そのコメントを頂戴した方がノセボ効果についても書かれているが、ノセボ効果とは、何の薬理効果も持たない筈の偽薬に依って望まない有害な副作用が生じる事だが、それは副作用があると信じ込む事に依って、その副作用だが作用機序不明で出現する事なのだ。この事は、プラセボ効果と同じく心理療法的効果である事を示唆していると思うのだ。

医学者の間でも、議論の分かれる問題で、同じ New England Journal of Medicine の同じ号には米国シカゴ大学の医学博士Bailar氏の論文も載っていて、表題は「The Powerful Placebo and the Wizard of Oz (効果的なプラセボとオズの魔法使い)」となっている。彼はプラセボ効果の肯定論者だ。

The Powerful Placebo and the Wizard of Oz
New England Journal of Medicine Vol. 344, No. 21
·May 24, 2001


人々が魔法使いだと信じていたから畏怖され権威を持っていた「オズの魔法使い」は、カーテンの裏側で蒸気仕掛けの機械を操作する(魔法使いではない)詐欺師に過ぎなかった。その全く無力な普通の男が、ブリキ人形に心を、案山子には知恵を、弱虫ライオンには勇気を、ドロシーには希望を与えたのだ。当に、オズの魔法使いとはプラセボ効果の様なモノでは無いか?彼らには、本物の権威者こそが心や知恵や勇気や希望を与えるべきだと云う事は蒙昧な私にも判る。自分以外の権威に縋らなくても自らの内なる力を信じるべきだ・・・と云うよりも、自らの内なる力を引き出す為には何らかの権威付けが在れば容易い・・・と云う話にも思えてしまう。もし子供の頃に絵本(?)で「オズの魔法使い」を読んで、彼らを偽物に騙されて可哀想な人達と思った方が居られたのなら、市民運動の闘士に相応しいカモ知れない。

##### ココまでが毎度の如くの長~い前置き #####

過去記事「作用機序不明2 2011-05-26 22:42:28 | Innocent joke 」に書いたのは、もし福島第一原発に起因する放射性物質の漏洩に起因して、放射線ホルミシス仮説が信じられて対象エリアでガン発症が有意に減少するプラセボ効果の方が大多数の人にとって幸せなのカモ知れないと思うのだ。もし、LNT仮説・・・曰く「放射線はどんな少量でも確実に細胞を損傷し、その損傷量は放射線量に比例して、これ以上は有害これ以下は無害という閾値が存在しない」が信じられて、そのノセボ効果が発動したら・・・、その被害は甚大且つ悲惨な事になるのでは無いだろうか?

人為的な怠慢に拠る人災とも云える今回の福島第一原発事故をして、災い転じて福とすべし・・・等と絵空事を云うツモリは無いのだが、ノセボ効果に拠って科学的見地から想定するよりも多くの方々が放射線被曝で生じる疾病を発症する可能性だけは早急に解消しなければ成らないと思うのだ。

福島第一原発事故から約10ヶ月経ったが、未だ多くの方々が不便な避難生活を続けて居られる。地域経済の崩壊から大きな不安に苛まれているだろう。実際の被災地域外でも多くの方が不安な生活を続けているのでは無いかと想像される。

千葉県、初の人口減少 東京圏1都3県も人口減時代に
2012年1月9日3時0分 朝日新聞


この朝日新聞の記事の論調では、液状化で大きな被害が出た浦安市や、放射線のホットスポットだと報道された東葛6市等への外部からの人口流入が大きく減少した事が人口減少が早まった原因だとしている。こうして、1920年の統計開始以来初めて首都圏での人口減少となったのだ。

首都圏に住もうと思っている外部の方が東葛6市を危険かも知れないと候補から外しただけで、首都圏にお住まいの方々は何の不安もなく生活をしている・・・のなら改めて田舎オヤジがもの申す必要もないのだが、仕事等で繋がりのある知人からも出来ることなら首都圏から離れたいと思っているが仕事や持ち家の都合で逃げ出す事は出来ない・・・と打ち明けられる次第だ。

福島第一原発事故以降・・・、政府から根拠不明な安全宣言が矢継ぎ早に出され、米軍軍属への退避命令がCGMで流れ、その他様々なウソやデマがCGMで流れ、暫定基準が有事を理由に引き上げられ、原子力事故防護の責任者である学者が涙ながらに危険を訴えたり、ホットスポットが彼方此方で見つかったと報道され、基準値を超える線量を発する作物や飲食物が公表されている。責任の所在が曖昧な類の雑誌類では人々の不安を煽り立てる無責任な記事が掲載されている。遠く離れた地元岡山でも放射線ヒステリーは未だ顕著である。こんな環境の中で首都圏にお住まいの方々は、大きなストレスを抱えて生活をなさっているのだと思うのだ。

私自身も、無責任にも・・・「どんな微量でも放射線は危険である」と云うマラー仮説(LNT仮説)と、「低放射線量は有益(無害)である」とする「放射線ホルミシス仮説」との、科学的に決着の着いていない価値観が、国民の中に並立したまま」と何度も書いている。

国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)では「疫学的には、年間被曝量が100mSv以下では、後々がんになる危険(晩発性リスク)が高まることを実証するデータはない。年間被曝量が20mSv以下なら他の発癌要因リスクと比べ充分低く、過度な心配は不要。むしろ過度な心配のストレスによる健康障害のほうが心配。」と公式に発表している。だが、国際放射線防護委員会(ICRP)では「被曝は少なければ少ない方が良い」としている。従来までは、我が国も国際放射線防護委員会(ICRP)の発表に従い「公衆の被ばく限度は年間1mSv」となっていた。又、多くの方からお叱りを頂戴する事になってしまったが、やはり私は「放射線ホルミシス仮説」を信じている。

こう云った疫学的に判明していない100mSv以下の低線量被曝への考え方をグラフにしたモノが次の画像である。



小さな画像で恐縮だが、グラフで見るとマーラー仮説(LNT仮説)は疫学的に立証されている年間100mSv以上の危険度(高線量被曝領域)のグラフを単純に低線量側に延長しただけである事が判る。これは写真乾板等の放射線を記録する製品でなら当て嵌まるだろうが、これは生物の特性からして有り得ない筈だ。

過去記事にも書いた筈だが、42度のお風呂に3分入るのと、100度の熱湯に75秒入るのとリスクが同じでは無い筈で、温水の温度への閾値があると同じように放射線被曝に対しても何らかの閾値が在って呵るべきだ・・・と思う。

だが、この画像でバイノミナル効果・バイスタンダード効果・ゲノム不安定性としたグラフは、閾値等無く低線量の方が高線量よりも危険度が増すと云う学説である。この研究は広島・長崎での被爆者を対象に行われた調査から得られている。この考え方では42度の風呂よりも、30度の風呂の方がリスク(この場合は皮膚の火傷?)が大きいと云う事だ。

そのバイノミナル効果(低線量域に於ける過剰相対リスク)を表したグラフである。

広島・長崎の原爆被爆者データ 
1997年:馬淵清彦氏 (日米共同放射線影響研究所)

これは、高線量での被曝よりも 低線量での被曝のほうが危険度が高いというデータである。実は、同じ事がチェルノブイリ原発事故でも報告されている。

私は、これらのデータが信頼性に欠けると思っている訳では断じて無い。漠然と過去記事「作用機序不明2 2011-05-26 22:42:28 | Innocent joke 」で不安に思っていた事が、既に現実にデータで立証されている訳だ。これこそが放射性物質漏洩と云う眼でも見えず匂いもしない恐怖に晒され続けた事で発生したノセボ効果の発動の証拠であると思うのだ。

日本に於ける1年間当たりの自然放射線被曝量は1mSvと云われているが、地域毎では大きく異なる。

地域別の自然放射線量(単位はμGy/h だが、ベータ線とガンマ線の場合には、
全身に均等に放射線が吸収されたとき1グレイ=1シーベルトと換算できる)

このマップより更に大縮尺で見れば、温泉地周辺や火山周辺では国際放射線防護委員会(ICRP)基準の年間許容量2.4mSvを大きく超える地域も日本国内には多数点在している。(元来、自然放射線の少ない首都圏と違い、大部分の日本は火山国で温泉天国なのだ)鳥取県三朝温泉や中国広東省やインドケララ州では首都圏での生半可なホットスポット以上の線量に晒されている事になるが、疫学的には有意に他地域に比べて発ガン率の減少が報告されている。自然放射線だけでバイノミナル効果を立証するグラフに登場する低線量被曝程度の地域なら上引用マップからも明らかだ。

この事が「放射線ホルミシス仮説」を証明していると云うツモリは無いが、少なくとも温泉地では低線量被曝が良いプラセボ効果を発揮していると云える筈だ。そして、広島・長崎の原爆被爆者データから導き出されたバイノミナル効果(過剰相対リスク)は悪しきノセボ効果では無いのだろうか?

過去記事にも書いた筈だが、自然放射線は自然のモノだから体に優しく、人口放射線は人口のモノなので体に悪いなんて当に似而非科学のお話だ。だが、人の心が介在する限り、単純に科学の知見の通りには作用しないのだと思う。プラセボ効果とは心理療法的効果と云うのと同義で、望まない被曝を続けている事で、このままでは病気になってしまうと思う事がノセボ効果を発動してしまうのでは無いだろうか?当に「病は気から・・・」カモ知れない。

知人宅で読んだ女性雑誌の記事を見れば、首都圏に住んでいる方ならノセボ効果が発動しそうな煽り記事が満載で驚いた。雑誌編集者は風評被害を画策している訳では無いのだろうが、首都圏に住み続ける事のイヤなリスクを感じさせる恐ろしい内容だった。更に、それこそ似而非科学的な放射線からの自己防衛方法がつらつらと書いてあり、このお薦めの方法を実行しないと不幸になりそうに思えてしまう。似而非科学を総動員して不安を煽る雑誌編集の意図が理解できないが、読者迎合だとすれば、日本人は緩やかな破滅論が大好き(心地良い)なのだろうか?(だから、安心論を説くと「御用ブロガー(?)」と思われてしまうのだろうか?)


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