漫画でも人気の「ジパング」がテレビアニメ化されている(東京地区では10月15日現在で第2話まで終了)。この作品のテーマは前作の「沈黙の艦隊」と並んで我が国の存在意義というものを問いかけていると言えるかもしれない。特にこの「ジパング」は現在の我が国の外交・安全保障政策や歴史認識問題を基盤としており、それらの問題への疑問が作品を構成する重要な要素となっている。「ジパング」が示そうとしているのはありえたかもしれないもう一つの日本の歴史である。このような手法を持って歴史を検証しようとする試みが無かった訳ではない。例えば、第二次世界大戦を舞台とした仮想戦記小説はその典型であると言えよう。仮想戦記作家の一人である檜山良昭は「大逆転!ミッドウェー海戦」(光文社、1988年)において当時の最新鋭護衛艦「しらね」がミッドウェー沖でタイムスリップするという内容の小説を書いている。しかし、それ以上に本作が注目を浴びるのは時代的背景と言う側面も大きい。
「ジパング」においてタイムスリップするイージス護衛艦「みらい」(概要を見ると14DDGを基礎としているようである)は周辺事態法の名の下で海外派遣されるという設定になっていた。これはこの「ジパング」の連載が始まった2000年当時においては有り得べき未来でしかなかったが、現実はその未来を遥かに通り越し、現在においてもインド洋において海上自衛隊のイージス護衛艦「きりしま」等が対テロ戦争支援の為の後方支援活動を継続している。つまり、この「ジパング」における自衛隊という意味付けは明らかに連載当初からは変わっていると言えよう。
更に指摘できるのが、現在の日本への疑問である。「ジパング」において主人公である草加拓海は理想の日本として<ジパング>を提唱する。日本が誇りを持ち、独自の道を歩む理想の国としてである。この理想は現実への二つの提示が暗黙の内に含まれているのであろう。一つは、現在の日本の所謂、対米追従とされる外交・安全保障政策への警鐘、そしてもう一つは太平洋戦争が無条件降伏という結末になっていなければ現在の日本とは異なった「確固」とした日本があったのではないかという夢である。そこまで現在の日本は誤っているのであろうか?戦後60年の現実と言うものを否定しきってしまえるほど単純なまでに現在の日本は誤っているとは小生には思えない。無論、「ジパング」にはこのような側面なぞ仮託されていないと主張される向きもあるかも知れない。しかし、アニメ版にはこの現在日本への否定的イメージが現われていると思われてならない。作品中に使用される曲が作品を表すとは言い難いが(作品の内容は第1話の半分をかけて帝国海軍と海上自衛隊の連接を描き作品の背景説明を行った以外は、漫画版を忠実にトレースしている)、AUDIO RULEZが歌うOPテーマ「羅針盤」には現在の日本とは違う日本を求めようとする印象を感じる事が出来るからだ。
もっとも「ジパング」アニメ版にはそのような心配ではなく、何処までを描こうとしているかと言う方に心配すべきなのかも知れない。前作「沈黙の艦隊」はOVA化されているものの北極海での海戦までしか描いておらず国連での論戦等の後半部分は描かれていない(戦闘描写が殆どないと言うので割愛されているのかしれないが)。さらに、そもそも現在連載中の作品の漫画であり、結末が出来ていないので最後までアニメ化出来ないだろうという意見もある(1話完結形式ではないのでアニメ独自の設定を持ち込みにくい)。OPの映像を見る限りではガダルカナルでの戦闘付近までは含まれているようである。13話なのか26話なのか或いは1年間52話なのかでも見通しは全く異なる。この国の誤りかどうかをこの「ジパング」を通して考えるよりも、この作品をこのタイミングでアニメ化すべきだったのかという方がより誤りであったのかも知れない。
「ジパング」においてタイムスリップするイージス護衛艦「みらい」(概要を見ると14DDGを基礎としているようである)は周辺事態法の名の下で海外派遣されるという設定になっていた。これはこの「ジパング」の連載が始まった2000年当時においては有り得べき未来でしかなかったが、現実はその未来を遥かに通り越し、現在においてもインド洋において海上自衛隊のイージス護衛艦「きりしま」等が対テロ戦争支援の為の後方支援活動を継続している。つまり、この「ジパング」における自衛隊という意味付けは明らかに連載当初からは変わっていると言えよう。
更に指摘できるのが、現在の日本への疑問である。「ジパング」において主人公である草加拓海は理想の日本として<ジパング>を提唱する。日本が誇りを持ち、独自の道を歩む理想の国としてである。この理想は現実への二つの提示が暗黙の内に含まれているのであろう。一つは、現在の日本の所謂、対米追従とされる外交・安全保障政策への警鐘、そしてもう一つは太平洋戦争が無条件降伏という結末になっていなければ現在の日本とは異なった「確固」とした日本があったのではないかという夢である。そこまで現在の日本は誤っているのであろうか?戦後60年の現実と言うものを否定しきってしまえるほど単純なまでに現在の日本は誤っているとは小生には思えない。無論、「ジパング」にはこのような側面なぞ仮託されていないと主張される向きもあるかも知れない。しかし、アニメ版にはこの現在日本への否定的イメージが現われていると思われてならない。作品中に使用される曲が作品を表すとは言い難いが(作品の内容は第1話の半分をかけて帝国海軍と海上自衛隊の連接を描き作品の背景説明を行った以外は、漫画版を忠実にトレースしている)、AUDIO RULEZが歌うOPテーマ「羅針盤」には現在の日本とは違う日本を求めようとする印象を感じる事が出来るからだ。
もっとも「ジパング」アニメ版にはそのような心配ではなく、何処までを描こうとしているかと言う方に心配すべきなのかも知れない。前作「沈黙の艦隊」はOVA化されているものの北極海での海戦までしか描いておらず国連での論戦等の後半部分は描かれていない(戦闘描写が殆どないと言うので割愛されているのかしれないが)。さらに、そもそも現在連載中の作品の漫画であり、結末が出来ていないので最後までアニメ化出来ないだろうという意見もある(1話完結形式ではないのでアニメ独自の設定を持ち込みにくい)。OPの映像を見る限りではガダルカナルでの戦闘付近までは含まれているようである。13話なのか26話なのか或いは1年間52話なのかでも見通しは全く異なる。この国の誤りかどうかをこの「ジパング」を通して考えるよりも、この作品をこのタイミングでアニメ化すべきだったのかという方がより誤りであったのかも知れない。