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ソフトパワー・世界へ~コミケ67考

2004年12月31日 02時06分16秒 | 世情雑感(サブカルチュア)
 日本最大(そして恐らく世界最大)の同人誌即売会コミックマーケット67が12月29、30日に東京都下お台場東京ビックサイトにて開催された。今まで小生は、このコミケ分析を社会学的見地から小生HPの「世情雑記」において分析してきたが、今回からはこのBlogで分析してみる事とする。
 コミケはただ単なる同人誌の即売会ではない。コスプレ会場でもあるし、サブカルチャー系の企業にとっては格好の宣伝会場である。その企業が出店するのが企業ブースである。その会場で目を引いたのが年齢制限仕様ゲーム業界で「マブラブ」等のヒット作を製作した「age」のブースであった。このブースのスタッフは全員が国連平和維持軍が着用する青いベレー帽を被っていた。それは単なるコスプレにしか過ぎないだろうというのが世間一般の見方と言うものかも知れない。企業ブースでパンフレットを配っているメイドのコスプレをした人々と同様の存在であると言うのは極めて妥当な思考である。しかしながら、彼等が意図したかは別として世界平和にある意味で貢献しているのは事実なのである。
 ソフトパワーという言葉がある。
 米国の著名な政治学者であるジョセフ・ナイが使用している用語だ。この語は軍事力に象徴される国家のハードパワーと対比的に扱われる。その国が持つ文化や習慣を含めた相対的な国家的魅力の大小が国際政治に大きな影響を与えていると言うのがそ語の根幹である。このソフトパワーというものは今や世界各国でも関心を浴びている。国際政治に無頓着に行動しているという言説がある我が国でさえ、小泉首相が本年秋に召集された第161回国会の所信表明演説において「映画やアニメ、能や歌舞伎など内外の人々を魅了する
文化・芸術を振興し、豊かな国づくりを進めます」と述べているほどなのだ。これらの文化の中で我が国が今後力を注ごうとしているのが漫画やアニメ等であるのは周知の通りである。つい数年前までは我が国の恥部として認識されていたものが、象徴へと変化したのだから180度的な転換だ。コミケの主軸である同人誌と言う存在は多くがアニメや漫画、ゲームを基礎として成立している。つまり、ある意味では二次市場と言えるだろう。二次市場が豊穣であると言うことは、其れほどまでに我が国のサブカルチャーは大きな影響を持っているということだ。
 このサブカルチャーは我が国の最大のソフトパワーである。確かにSONYやTOYOTAも世界においては大きな評価を得ており、ソフトパワーであることは言うまでも無い。しかし、工業製品は後発国や企業の追い上げによって直に評価が変わってしまう事が多い。IBMパソコン部門が中国のLenovoに売却され、或いは日本の企業が世界市場から米国製品を駆逐していったようにである。しかし、日本のサブカルチャーの一種の無思想性は未だ他国の追随を許していない。だからこそ、コミケという日本文化に対する諸外国の関心も大きい。コミケ会場にも多くの外国人の姿を見る事が出来るし(近隣諸国・地域からはツアーも企画されている)、台湾のようにコミケを始めてしまう地域もある。それは、それだけ日本のソフトパワーが影響を与えているという事なのである。
 国連のベレー帽は国連と言う幻想さに裏打ちされたソフトパワーの持つハードパワーである。そのコスプレが日本のサブカルチャーが生み出すソフトパワーを補強している。21世紀に世界が抱える多くの問題をハードパワーだけで解決する事は難しくソフトパワーの活用は重要である。コミケの企業ブースへ出店した一企業のコスプレは国際社会を平和にする一端を担っているとも言えるのかも知れないだろう。

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