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まっすぐに飛ぶミサイル~エリア88

2005年04月30日 21時20分38秒 | 世情雑感(サブカルチュア)

 「エリア88」は新谷かおる氏原作の航空戦闘漫画だ。中東の産油国「アスラン王国」を舞台に政府軍の傭兵部隊の戦闘機パイロットとして戦う風間真を中心に描かれる。テレビ朝日系でアニメーション化もなされ、現在はNTT東日本/西日本のフレッツスクウェアにおいて無料の動画配信がなされている。当然ながら、航空戦闘がストーリーの中心に据えられているが、原作が古いだけの事はあり登場して来る航空機も懐かしい名機ばかりだ。主人公の風間真が登場するのはF-8Eクルセイダーだし(ベトナム戦争初期の機体)、他の主力機はA-4スカイホークにF-4ファントムだ。何しろ、風間真の相棒のミッキーが乗るF-14トムキャット(2008年頃までに米海軍から退役する)が新鋭機なのである。当然ながら敵機もミグ15や17である。他にも珍しい機体が出てくるF-105サンダーチーフ(ベトナム戦争で活躍した戦闘爆撃機)やスウェーデンのサーブ35ドラケン等だ。近年の航空作品には必ず登場して来ると言って良いSu-27シリーズやラファル、ユーロファイター、F-22ラプター等は姿形も現さない。
 そして、この「エリア88」の素晴らしいところはミサイルが直線の軌跡を描いて目標に向かう点である。アニメーションで描かれるミサイル描写には大きく分けて2パターンがある。一つは「機動戦士ガンダムSEED」に登場して来るミサイルのように実質的に無誘導のロケット弾にしか見えないタイプであり、もう一つが「超機動要塞マクロス」のように複雑な軌跡を描いて飛翔するタイプである。現実のミサイル(特に空対空)は赤外線誘導にせよ電波誘導にせよ基本的に敵機の未来予測位置へと飛翔していくパターンが大半である。つまり、ミサイルシーカーの範囲内に敵機がいることが根本要素なのであり、飛翔時間内に敵機がロックオンから外れる機動を示してしまえばミサイルは遥か明後日の方向へ飛んでいってしまう。その部分をこの「エリア88」は忠実に描き出していると思うし、このミサイルの制限要素が一種の郷愁を醸し出しているのも事実だ。ミサイルの能力に限界があると言っても、近年の新型空対空ミサイルの性能向上は著しい。例えば、以前の赤外線誘導型は敵機の後方からでなければミサイルを発射出来なかったが、現在では前方象限からの発射も可能になっている。ベトナム戦争時の電波誘導型空対空ミサイルの命中率は数%と言われたが、最近では電子装置の性能が飛躍的に向上している為に命中率は90%を超えるまでになっていると言われている。ベトナム戦争ではミサイルの時代と言う事で機銃を搭載しない戦闘機が多く使用され、旧式のミグ戦闘機の機銃で撃墜されると言う事態が相次いだ。その結果、その後の戦闘機では機銃の搭載が当たり前となっている。しかし、新世代戦闘機ではミサイルの性能向上と併せて米軍等では再び機銃不要論も出て来ている(無論、その背景にはAWACS=早期警戒管制機等とのリンクによって絶対航空優勢を米軍が世界中の何処においても確保出来ると言う自信があるのであるが)。
 ミサイルがまだ信用性を確立していなかった時代の懐かしき航空戦を、この「エリア88」は描き出している。

王権神授説という愚論~Destiny考

2005年04月24日 12時01分48秒 | 世情雑感(サブカルチュア)

 「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」も中盤を迎えており後半に登場してくる新型MSがHP上等で明らかになって来ている。例えば、本作の主人公たるシン・アスカはディスティニーガンダムに搭乗する事となるし、作品中において絶対的な力を持っているキラ・ヤマトもスーパーフリーダムガンダムに搭乗する模様だ。この作品が国家が最高主権を持つと言う現在と同様の国際秩序を持ちながら、その中にキラ・ヤマトそして「アークエンジェル」という武力を私する異端分子が存在し、その異端分子がこの世界において最強の力を保持していると言う異質性については当Blogにおいても以前から言及している。どうも各種情報を総合すれば、この状況は改善する事無くストーリー後半においても悪化する一方のようである。
 今回は題名に「王権神授説」という言葉を掲げた。王権神授説とは「”国王の支配権は王の先祖が神から直接に授けられたものであるから、失政の場合も国民への責任はない”とする絶対王政を正当化するイデオロギー」(「世界史B用語集」、山川出版社、1995)である。この世界において武力と言う側面における支配権は、地球連合にもザフトにもない。それは核エネルギーを動力源とするフリーダムガンダムの強大な武力とキラ・ヤマトのSEEDという卓越した能力に依拠している。そして、キラと「アークエンジェル」はその武力を「正義」という名の恣意的解釈によって行使している(この点において第26話に於けるアスラン・ザラの指摘はある意味で正しい)。つまり、「失政の場合の国民への責任」は戦闘における必要最低限度の犠牲と解釈出来るが、この場合は王権神授説等より更に性質が悪いのかもしれない。キラは王権を神授されたと言うよりも自身が「神」となってしまっており、神政となっているからである。この神政の致命的欠陥は補償が為されないと言う事であろう。近代国家は徴兵制によって国民皆兵体制を採り(徴兵も志願制も本質的に相違は無い。此処での意味は身分階級差による差別が無いと言う点である)、国家はその国家の命令による犠牲者に対しては補償を行う事になっている(現実に当てはめれば、戦前の我が国における靖国神社のようなものだ)。近代国家として存在しているであろう地球連合でもザフトでもそれは機能しているのであろうが(それは無論、心理的側面まではカバーしていない)、キラと「アークエンジェル」にはそれを遂行する能力は無い。つまり、キラと「アークエンジェル」がもたらす必要最低限度の犠牲者はまさに殺され損という形になっているのである。
 このように考えると、「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」は一種の革命戦争を描こうとしているのかも知れない。OP映像等にはキラのスーパーフリーダムガンダムとアスカのディスティニーガンダムが干戈を交わすシーンが見られるが、これは前作によって誕生した「神」であるキラ・ヤマトを民衆(地球連合/ザフト)の代表であるシン・アスカが打倒しようとしている姿のかも知れない。ここでは敢えて「神」が現存する人間――「現人神」――となっている点は指摘しないでおこう。この作品が現実の国際政治へのアンチテーゼを含んでいるとする主張が正しいのであるならば、それは極めて恐ろしい現実を我々の前に導き出してしまうからだ。

一衣帯水を超えて

2005年04月13日 23時08分06秒 | 世情雑感(世界情勢)
 中国の反日デモについて様々な意見があるのは事実である。
 日本側に原因があるとする意見も、中国側に原因があるとする意見も何れも真実を含んでいると言う事もまた真実である。日本側の原因として指摘される歴史問題に関して言うならば、国民の多くが靖国問題を重要な国内問題として認識していないという状況において政治が先走りをしているのは事実である。中国側が反対する国連安保理常任理事国入りもこの歴史問題を背景にしているのだから、歴史問題を日本側が表面的にでも凍結してしまえば、中国側は格好の口実を失うというのは一つの真実だ。一方で、中国政府が国内不満のはけ口として反日を煽っていると言う事もまた事実である。特に一党独裁国家である中国にとって国内の不満を外国の脅威に転嫁するのはもっとも簡単な国内掌握法である。しかし、中国にとって日本を完全に敵に回すことは出来ない。日本は政治面でも経済面でも無視するには大きすぎる存在だからである。特に米国との関係強化は嫌がおうにも日本の東アジアにおける政治力を強化している。
 この現実において、日本国民の反応は驚くほど冷静だ。
 それは、この反日デモが我々が何処かで見た光景だからである。その光景が出てくるのは歴史の教科書の中の近代の中国ナショナリズムの高揚に関しての部分だ。五・四運動等での反日デモの情景は現在の光景に重なって見える。つまり、我々は過去の過ちを繰り返す意思は無いのである。例え中国政府が在留邦人を守る意思が無いと言明したとしても、日本政府が自衛隊を邦人保護の目的で派遣する事は無いだろう。このように考えるならば、中国や韓国がしばしば主張する日本は歴史の過ちを繰り返すという主張が如何に滑稽なものかが分かると言うものだ。
 右翼化と言われて久しいが、現在日本は戦前の日本とは異なった論理で動いているのである。