366日ショートショートの旅

毎日の記念日ショートショート集です。

最終処理

2012年05月30日 | 366日ショートショート

5月30日『ごみゼロの日』のショートショート



「どうです?美しいでしょう?」

ケメロン氏が街を自慢げに見渡した。
無論、同意せざるを得なかった。街中どこにも塵ひとつない。
チラシが一枚風で舞う。たちどころにルンバのバケモノみたいなのが猛スピードで駆けつけて吸い込んだ。
「ええ。実に美しい。まさに宇宙一ですね、惑星ボラボラは」
そうでしょう、そうでしょう。報道官のケメロン氏はご満悦だ。
「ありのままの美しさを記事にしてくださいよ」
「で、ロボットが回収したゴミは最終的にどうやって処理されてるんです?」
「完全リサイクル。ありとあらゆるものが再生される。惑星本来の姿ですよ」
「でも再生できないゴミってあるでしょう?それはどこに・・・」
「そんなゴミはありません。処理方法は企業秘密みたいなものです。重要な観光資源と言ってもいい。そこは勘弁してください」
そうはいかない。記者とは仮の姿。私は惑星ボラボラの最終処理法を探り出し、私の惑星ポラポラもまたゴミ0の惑星にするために潜入したスパイなのだ。
ケメロン氏と別れた私は、早速ルンバの後を追って処理場に潜入した。
地下に作られた巨大な処理場は完全オートメーション化され、やはりここも清潔だった。廃棄物は分解され、分別され、さらに粉砕されて原料へ。確かに完全リサイクルだ。しかし、汚染物質やら毒性の強い重金属やらは、ベルトコンベアでさらに地下へと向かっていく・・・。
「取材禁止区域のカメラにあなたが映っていました。あなたの取材許可は取り消されました」
翌日現れたケメロン氏は明らかに不機嫌だった。
「ボラボラからの退去命令が出ています」
あと一歩。工場のもうひとつ地下に潜入すれば秘密が暴けるはずだった。仕方がない。
乾燥粉砕銃を懐から出し、躊躇なくケメロン氏を撃った。
冗談でしょう?そんな顔をしたままのケメロン氏の全身がひび割れ、粉々に崩れ落ちた。
ルンバのバケモノたちが現れると、群がり貪り食った。
ケメロン氏に変装した私は、工場に向かった。そしてさらに地下の最終処理場へ。
何本ものベルトコンベアが向かう先にあったのは、ステルス型の円盤だった。
そうか、これでこっそり星の外に捨てるのか。
行き先の表示が書いてあるぞ・・・え?『ポラポラ』?!
な~んだ、うちの星と同じことやってるんじゃないか。ま、ある意味、リサイクル・・・。



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