366日ショートショートの旅

毎日の記念日ショートショート集です。

地下鉄999

2012年12月30日 | 366日ショートショート

12月30日『地下鉄記念日』のショートショート

地下鉄のショートショート333字×3つ・・・そんなわけで地下鉄999でーす。



「123号に爆弾を仕掛けた。われわれの指示に従わねば爆破する」
地下鉄に爆弾だって?地下で爆発炎上すれば、大惨事は避けられない。
「よ、要求は?」
「最大加速後、最高走行速度を5分維持するように123号に指示しろ」
それが要求?そんな無茶な。
「地下鉄は駅の間隔が短いんだ。最高速度を5分間だなんて・・・」
言葉を待たず電話が切れた。
職員一同、青ざめた顔を見合わせる。
犯人の要求の意図がわからない。しかし、とにかくやるしかない。
かくして123号は最大速度で疾駆した。
車両はピストンとなり、地下トンネル内の空気が換気口へと一気に押し寄せていく。
「さっきの電話の男、どうしてこんな所で待たせるのかしら?」
白のフレアドレスのお色気ムンムン美女が換気口の上で待っている。
ププッピドゥッ♪



「地下鉄の電車はどうやって地下に入れたんでしょうかねぇ。それ考えると一晩中眠れなくなっちゃうの」
「また古いネタやなあ。あらかじめ電車を地下に埋めといて、この辺やろかゆうて掘ったんや言うネタやろ。あんな、地下鉄の電車かて地上に整備場があるんや。そこから地下に入っていく引き込み線を通って下って行くわけや。わかったかいな」
「でも地下鉄って都会の道路の下を通っているのに、そんな広い場所がいつもあるんでしょうかねぇ」
「お、それはええ質問やぞ。ほとんどの地下鉄は坂を下って入れんやけど、大阪の地下鉄だけな、クレーンで吊るして穴から地下に突っ込んだそうや」
「へ~、でもなんで大阪だけそんなやり方するんでしょうかねぇ」
「そりゃな大阪人やからツッコミが得意なんや」
「んなアホな~」



座席に腰を落ち着けると、地下鉄の路線図を出して広げた。
路線が複雑に交叉し網の目状に広がっている。
ふと疑問がわいた。
「電車って上りと下りがあるよね。東京駅が基準になってて、東京駅に近づくのが上り、遠ざかるのが下り。でもさ、地下鉄ってどうなの?地下鉄に上りとか下りとかあるの?」
ボクの質問に彼女が穏やかに微笑んだ。
「地下鉄にはね、上りと下りの区別はないの。そもそも東京駅につながっていない路線だってあるんですもの」
そうか。なるほど。
「メーテル、そもそも電車が地面の下だからぜ~んぶ下りだね!」
ボクのダジャレを彼女は聞こえないふりをした。
汽車は天空へと上っていく。
窓の外を見下ろすと、眼下の東京の街が小さくなっていく。
で、今の状況は上り?下り?
くだらない疑問がわいた。 



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