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昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

ドール[お取り扱い注意!]ドール  (四)わたしの涙目に気づいたようで

2025-04-16 08:00:32 | 物語り

 わたしの涙目に気づいたようで
「ご主人さま、申し訳ありません。嫌な思いをさせましたでしようか。

服を着るというプログラムがありませんので。
苦情申した立てをなさいますか。連絡先は…」と、かなしげに聞く。

「いや、いい」。手を振ると
「苦情がかさなりますと、返品処理をされてしまいます」と、目を落としていう。

どうにも、人形であることを忘れてしまう。
どんな目的で作られたものなのか、うすうす察しがついてきたが、そうは考えたくない。

「さよこちゃんだっけ、ひとつ聞きたいことがある。
わからないなら、こたえなくて良い」

「さよこの分かることでしら、どうぞ」
「きみを頼んだ覚えがないんだけど、だれかからの贈りものなのかな」

「そんな…淋しいです、さよこは。お忘れになられたのですか、もう。
2011年8月に、懸賞サイトで応募していただいたのに…」

思いもよらぬ答えがかえってきた。そういえば、昨年だ。
未来のロボットが…、とかなんとか、アンケートに答えたような…。

「ご主人さま。さよこは、お嫌いですか?」。哀しげな目を見せる。
「いやいや、嫌いだとかなんとか…。そんなことはないよ。さよこちゃんは、可愛い」

「でしたら、お部屋に入れて下さい。
いつまでも玄関先だなんて、さよこ、淋しいです」

肩をすぼめて、軽くイヤイヤをする。思わず抱きしめたくなる衝動にかられた。
「そ、そうだな。ここは寒い、風邪をひいちゃうね」

「じゃ、行きましょ」
 いまにもスキップを踏みそうに、わたしの手を引っぱる。

「さよこちゃんの手、暖かいね」
「でしょ、でしょ。ご主人さまのこころが暖かいと、小夜子もあたたかかくなるんです。

いい人で良かった、ご主人さまが。なにをしてあそびましょう?
それとも……、まずは肩もみをしましょうね」



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