真理恵の話は、理路整然としている。
たとえ話もはいって、ここちよく耳にひびき、こころにも染みこんでくる。
ただ、組織経営が行きすぎて、これ以上のアメリカナイズはまずい。
力のある者が富をかっさらう――行きすぎた資本主義は、この日本という国には合わない、根付かない、
いや根づかせてはならない、と竹田は考えた。
佐多は、世界をひとつの商圏として捉えなければならん、と力説する。
日本国内だけを相手にしていては、これ以上の成長はないと断じた。
ぎゃくに衰退し、さいあく倒産という事態もありうると、悲観的なみかたをしめした。
それはあまりに悲観的だとはおもいつつも、人員整理などの憂き目はありうるかも、と佐多のことばを聞かされると思ってしまう。
ともに拝聴していた五平は、「オーバーだよ、佐多さんは」と意に介していない。
しかしその楽天的な考え方が、真理恵を通した佐多のによる富士商会の支配につながっていくのではないかと、危機感をおぼえる竹田だった。
偶然にも知った、取引関係のない会社への多額の出金があり、それが真理恵の指示だときかされたとき、いよいよ富士商会の経営権が奪われていくぞ、と思った。
こうなると、やはり小夜子にはがんばってもらいたい。
月に1度でいいから出社をしていただき、とくに出金関係のチェックを図ってもらわねば、とおもった。
しかしそんな竹田の危機意識は他の社員たちには伝わらず、どころか真理恵の経営方針に賛意をしめものがふえてきた。
福利厚生の充実により、正確な残業てあての支給に有給休暇の徹底、そして営業にたいしては残業手当が外されたものの営業手当が支給されることになり、服部を筆頭にもろてをあげての賛同となった。
そしていよいよ、小夜子の帰省がきまった。
春先のあたたかい日がいいだろうと、3月の中旬ないしはおそくとも下旬までにとなった。
事ここに至っては小夜子のなかに感傷はなくなり、ただただ、千勢との別れがつらかった。
そして武蔵との愛の巣の売却についても、五平が責任をもって行うこととなり、家財道具いっさいは悩みになやんだ末に、すべて売却することになった。
これについてはアナスターシアに出会わせてくれたあの百貨店において、中古品販売部にまかせることが決まった。
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*お知らせ
[水たまりの中の青空]第一章の、推敲および校正が終わりました。
とんでもないミスが、ちょくちょく見つかりました。すみません。
誤字・脱字・表記間違い等、すべて(多分ですが)修正しました。
また、書き加えた部分も多々あります。
よろしければ、お時間のあるときにでもお読みいただければ、と思います。
右記の場所にて、公開中です。[やせっぽちの愛]
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