尻切れトンボ的に、地獄巡りからの退出です。
遊びほうけていた20代前半ですが、どう位置づけすればよいのか。
人生における華ととらえるべきか、禍と評すべきか。
ただこの時代がなければ、老をむかえた現在を悠然と過ごせぬのも事実だと思えるのです。
当時にしても現在にしても、わたしがわたしであることに変わりはありません。
意味不明ですか?
正直わたし自身もどう伝えたらいいのか、ことばが見つからないんです。
「人間は変われる」。「人間は変われるものじゃない」。
どちらもよく聞くことばです。
わたし自身の経験から言えば「変われる」ですし、「でも変われない」なんです。
思いだしてもらえませんか、はじめのころにお話しした、ある疑問を。
矛盾してますよね、矛盾してます。
哲学論を聞きたいんじゃない! お叱りはごもっともです。
それではわたしの経験をお話ししましょうか。
わたしが心臓をやられて、現在ペースメーカーを植えこんでいることはご存じですよね。
心臓移植がひつような拡大型心筋症だと診断されて、正直「ここまでか」と覚悟させられました。
ですがペースメーカー植え込みによって、劇的に回復しました。
肥大していた心臓が通常サイズにまでちぢみました。
ただ、伸びきったゴムのごとくになった心筋は回復しません。
なので現在でも、心臓から送り出される血液量が、常人の半分以下です。
不整脈が起きやすくもあります。
そこでペースメーカーのお仕事です。
送り出す血液量を増やすことはできませんが、心拍だけはリズムよく補ってくれます。
おかげで体の隅々にまで血液が送りとどけられています。ありがたいことです。
――・――・――
(二十九)の2
長口舌はこれくらいにして、本題にはいりましょうか。
「変われる」。でも「変われない」。
大病をされた方なら、克服された方ならば、わたしの言わんとするところがお分かりだと思います。
死地を脱した人間というのは、面白いものですね。
それまでとは違った自分になれるんですよね。
というより、なりたいと思うのでしょうか。
ことし古希を迎えるわたしを、友人たちは口をそろえて「こんなキャラじゃなかった」と言います。
「しかめっ面のクラーイ男だった」。「うつむいてあるく男だった」。「女の話にはいっさい乗ってこなかった」。
まったく失礼な話ですよ。
わたしだって笑うときもありましたし、異性に関心はありましたよ。
ただその機会に恵まれずにいただけの話で。
いやいや、そうじゃない。
わたしだってナンパされたことがありました。
ナンパをしたことだってあるんですから。
その話をしましょうかね、笑い話になるかもしれませんが。
ああ、これからの話は事実ですから。
創り物ではありませんから。
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