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昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

ドール [お取り扱い注意!] (七)「お父さん、起きてよ。

2025-05-07 08:00:46 | 物語り

「お父さん、起きてよ。こたつのうたた寝は、風邪ひきのいちばんの元だよ」
「ああ…なんだ、明美か。えっ? いつ来たんだ。

というよりはじめてだな、アパートに来てくれたのは。
どうだ、元気しているのか。仕事は、うまくいってるのか? 

教師だなんて、厳しいだろう、いまの学校は。
お父さんたちのころの先生は、ほんとに尊敬されていたけれどもな。

いまは、たじたじらしいな。ちょっと待てよ。
えっと…さよ、いやだれか居なかったか?」

饒舌なわたしに、目をまるくしている娘だ。
以前のわたしは、たしかに寡黙な父親だった。

どうしても妻の前では、口が重くなっていた。
というより、わたしが話をしはじめると、すぐにかぶせられてしまう。

ひがみかもしれないが、子どもたちを隔離しているような…。
そういえば世のお父さんたちは、嬉々としてむすめを風呂に入れているとか?

「なによ、だれかと暮らしてるの? 
ひとり暮らしだだっていうから、ちょっと心配になって来てみたのに」

 娘のなじる声に、あわてて答えた。
「いやいや、ひとりさ。お客さんがな、来てたような…夢だったかな」

 たしかに考えてみれば、変なことばかりだった、ありえないことばかりだった。
夢だとしたら、納得がいく。

それにしても、なんて夢だ。あれが、わたしの本性なのだろうか。
“もう女はこりごりだから”などと、職場では言っているくせに。

“もう、ひとり住まいにも慣れたし”といきがってみたりもして。
“勝手気ままに暮らしたいから”と言いつつも、やはり淋しさには勝てないものか。

「お父さん、聞いてる? すこしは、反省してるの? 
お母さんが怒るのも、無理ないわよ。

いちどならまだしも、なんとまあ、3度もでしょ。
それも、社内不倫だなんて。

降格はまだしも、部署も物流なんかにまわされて。
きついんじゃない? 仕事。肩なんか、バキバキじやないの。



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