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昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[青春群像]にあんちゃん  ((通夜の席でのことだ。)) (九)

2025-06-29 08:00:33 | 物語り

  翌日のこと。
「きのうのお芋さんは美味しかったろう。
ばあちゃんもね、おじいさんとおいしく食べたんだよ」
 ほのかかキョトンとした顔つきで、
「きのうはよらずにかえったよ」と、こたえた。
 誰かが食べたはずなのだ。
「ツグオちゃんだったかね」
 首をふりながら、つづけてこたえた。
「にあんちゃんは、ほのかといっしょだったよ」
 思いもよらぬ返事がかえってきた。

「それじゃだれだったんだろうね。ツグオでもないんだね。近所のだれかかしらね」
 そうことばにしつつも、だれもいない家にはいりこんで、ましてやなにかを食べていくなどありえない。
“まさかナガオが…。いやいや、あの子は寄りはしない”と、否定してしまった。
「あんちゃんだよ、きっと。
夕食、めずらしくすこししか食べなかったから。
それに、もしにあんちゃんだったら、きっとぜんぶ食べてたよ。
にあんちゃんはね、目のまえのことだけなの」

 愛くるしい目をクルクルと回しながら笑いころげる。
「にあんちゃんがね、永田のおばちゃんからもらったカステラをね、あんちゃんといっしょに食べたんだって。
『ほのかの分はあるんだろうな』ってあんちゃんが聞いたら『いっけねえ』なんだよ。
あんちゃんはさ、はじめにキチンと3とうぶんするんだよ。
ひとりじめにはぜったいしないの。みんなにびょうどうに分けてくれるの」

 嬉しそうに話すほのかに、
「ナガオはね、他人さまの評判を気にする子なんだよ。
でもツグオはそうじゃない。自分に嘘をつかない子なんだね」
 と、次男をかばった。



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