翌日のこと。
「きのうのお芋さんは美味しかったろう。
ばあちゃんもね、おじいさんとおいしく食べたんだよ」
ほのかかキョトンとした顔つきで、
「きのうはよらずにかえったよ」と、こたえた。
誰かが食べたはずなのだ。
「ツグオちゃんだったかね」
首をふりながら、つづけてこたえた。
「にあんちゃんは、ほのかといっしょだったよ」
思いもよらぬ返事がかえってきた。
「それじゃだれだったんだろうね。ツグオでもないんだね。近所のだれかかしらね」
そうことばにしつつも、だれもいない家にはいりこんで、ましてやなにかを食べていくなどありえない。
“まさかナガオが…。いやいや、あの子は寄りはしない”と、否定してしまった。
「あんちゃんだよ、きっと。
夕食、めずらしくすこししか食べなかったから。
それに、もしにあんちゃんだったら、きっとぜんぶ食べてたよ。
にあんちゃんはね、目のまえのことだけなの」
愛くるしい目をクルクルと回しながら笑いころげる。
「にあんちゃんがね、永田のおばちゃんからもらったカステラをね、あんちゃんといっしょに食べたんだって。
『ほのかの分はあるんだろうな』ってあんちゃんが聞いたら『いっけねえ』なんだよ。
あんちゃんはさ、はじめにキチンと3とうぶんするんだよ。
ひとりじめにはぜったいしないの。みんなにびょうどうに分けてくれるの」
嬉しそうに話すほのかに、
「ナガオはね、他人さまの評判を気にする子なんだよ。
でもツグオはそうじゃない。自分に嘘をつかない子なんだね」
と、次男をかばった。
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