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昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

奇天烈 ~蒼い殺意~ いち日の過ごし方(四)

2025-06-28 08:00:52 | 物語り

実はこの1週間、彼は悩んでいる。
学友との些細な口論のためだった。
さっこん耳にする”フリーセックス”についてだ。

まだ青い我々は、真面目に論じあった。
勉学上の口論はまるでない我らだが、ことセックスに類するものは好んで論じあう。
が、残念ながらお互い言いっ放しで終わってしまう。 

面白いのは、”革新”そして”保守”と、イデオロギーの立場をお互いに押しつける―なすりつけて終わることだ。
革新にしろ保守にしろ、じつの所あまり分かっていないのに。 

『70年安保』の後遺症といっては失礼か。
「アンポ、ハンタイ!」が流行語になっていた頃を、多感な中学時代に我々は過ごした。 

彼はいま窓際でひざを抱いている。
そしてときにそのひざに接吻をしたりして、体のぬくもりを感じている。
生きている実感があるという。

ときおり、バサバサの髪をかき上げては、ため息をつく。
その手で顔を撫でる。
髪の毛にしみついた油のにおいが、時として吐き気をもよおさせる。 
しかしそれが自慢の種でもある、彼だ。

*全学連委員長だった藤本敏夫氏をご存じですか?
その彼と恋に落ちた歌手の加藤登紀子女史が、1969年に獄中からとどいたハガキがヒントになって作られたのが「ひとり寝の子守唄」です。
その中に「ひざっ小僧が寒かろう おなごを抱くように ……」という箇所があり、それに感銘を受けて「膝を抱いて……」を書き入れました。



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