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昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (二十一)

2025-02-08 08:00:40 | 物語り

 外に出てみると、ポカポカとした暖かい日差しがあった。
ときおり吹いてくる風にはすこしの冷たさを感じたけれども、身をちぢこませる程でもない。
うち沈んでいた気持ちが、すこし収まってきた。
団地内の小さな公園に、なん本かの樹木が植えられている。
そういえば春先に、桜の花びらが部屋のベランダに舞いこんでくる。

といって、すべてがおなじ樹木のようには見えない。
だいいち、高さがちがう。1本の木など、とびぬけている。
中学高校において理科の授業がきらいだったわたしには、植物はさっぱりだ。
草花にしても、せいぜいがチューリップと大輪の菊と、あとはバラぐらいだろうか答えられるのは。
ああ、もうひとつあった。トイレの芳香剤によく使われている、紫色のラベンダーを知っている。

 頭にうかぶ花の名前といえば、ホウセンカ――これは島倉千代子さんだったかの、歌のタイトルじゃなかったか――に、ひまわり――これは、イタリアだったかグラマーな女優さんがマルチェロ・マストロヤンニだったかの男優と共演した映画のタイトルだった――それぐらいだろうか。
そう、ソフィア・ローレンだ。目が大きく、鼻がツンと伸びている――わたしの好みとしては、ブリジッド・バルドーかな――とにかく大柄な女優さんだ。
なんにしてもまったく情けない。
強烈なイメージをともなうヒントがなければ、あたまの片隅にのこっていないのだから。

 みどり色に塗られた高さ1mほどのフェンスに沿ってあるくと、洋菓子屋さんがある。
車3台がとめられる駐車場は、いつも車でいっぱいだ。
路上駐車をする、剛の者もいる。
苦情がはいったらしいわよ、という噂話がきこえてきた。
〝長時間でもあるまいし〟。わたしなどは思うけれども、フェンス越しにのぞき込まれているかもしれないと思うと、やはりいやなものだろう。

 むかし、そう昭和の御代ならば、庭に植えられている花などで話が咲いたものだろうに。
いやいや、となりの洋菓子店にくる客なのだ、そんな声かけなどするはずもないか。
というよりも、そもそも車で買い物ということがすくなかった。
たいていが歩きか、自転車ぐらいのものだった。
モータリゼーションの発達というやつは、あっという間だった気がする。
団地から脱出してマイホームを建て、そして車をもつ。
わたしの父も、夕飯時になるとカップ酒を飲みながら、家族相手に宣言していた。



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