東電福島原発の事故で、役所ごと避難した福島県双葉町の町民約1200人を含め、
2000人ほどが身を寄せている さいたまスーパーアリーナ。
通路に段ボールで仕切りを作って「我が家」のスペースを確保する。
毛布にくるまって、寒さをしのぐ。
ボランティアがフル稼働している。
食事配り、マッサージ、理髪、子供の勉強の手助け・・・。
被災者の「命綱」だ。
ワシントン・ポスト紙の記者が取材していた。
「定員500人のボランティアに3000人が応募してきたという。驚きだ。
避難している人達が不平も言わず、おだやかに語り合っている姿に感動した。」
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漫画やおもちゃなどを無料で配るコーナーに女の子がやってきた。
積んである折り紙がほしいという。
10枚ほどが入った袋を受け取ると、袋を開けて半分ほどを取り出し、袋を返した。
「ほかの人の分だから」という。
係りの人が「たくさんあるから大丈夫」と袋を渡すと、女の子はニコッと笑った。
10枚の折り紙を握りしめて、飛び跳ねるように走って行った。
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善意で寄せられた物を、競って取り合うのではなく、みんなで分け合う。
避難している人々の気持ちが、少女にも伝わっているのだろう。
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未曾有の大災害から、私達は何を学ぶべきだろうか。
危機管理の大切さ、災害に強い街づくりといった行政上の問題に加え、
助け合いや共生の精神がいかに大切か。
折り紙を分けようとした少女が教えてくれていると思う。
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双葉町など福島県の海岸沿いの地域は、10基もの原発を受け入れてきた。
そこで発電された電力は、地元では使用されず、送電されて首都圏の繁栄を支えてきた。
原発事故の不安を抱えて暮らす地元住民と、煌々と電灯がともる東京の高層ビル群。
そのギャップを重く受け止めて、被災者の苦難を分かち合う術を考える時だ。
都会の浪費や行き過ぎた便利さなどを見直す機会でもある。
大震災から2週間。
復旧、復興の動きが本格化する。
その中で、我欲を抑えて、思いやりのあふれる共生の社会を築き上げていく。
日本の政治は重い役割を担えるだろうか。
そんな思いを巡らせながら・アリーナを後にした。
[朝日新聞・記者有論を引用、編集したもの
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