さて、きのうは、パーヴォ&N響の「ツァラトストラはかく語りき/メタモルフォーゼン」の発売を記念してのサイン会が、
定刻通り、東京・銀座の山野楽器のイベントスペースにて行われました。大変盛況な中での開催となりました!
司会・インタビューはソニーミュージックの小沢ディレクター(よくCDの販売でいらっしゃる方ですね!ディレクターさんだったのですね!知りませんでした!!)通訳は井上ゆかこさんでした。
ちょっと私のメモの取り方があまくて、すこし違う部分もあるかもしれませんが、パーヴォがおっしゃったのは以下の通りです。もし正誤ありましたら、ご指摘をお願いいたします。
__パーヴォと銀座の街の関わり合いは?
「銀座は何回か来たことがありますが、山野楽器は初めてですね(笑)」
__「ドン・ジョヴァンニ」を先日大成功させたばかりですが
「モーツァルトでは、東京交響楽団と一緒に、フルートの協奏曲を演奏したのが始まりです。」
__N響との相性について
「N響は、大変すぐれた、すばらしいオーケストラです。ここで、ふたつのジレンマをかかえることになりました。ひとつはロマン派のレパートリーを20世紀以降の偉大なオーケストラは演奏していますが、古典派(ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなど)もあり、実はショスタコーヴィチやシューベルトのほうが難しかったりします。しかしN響はこのふたつのジレンマを見事に解決するすばらしいオーケストラなのです。私にとっても興味深いのは、N響は(演奏していて)反応がどんどん変わっていくことです。室内楽的な精神も芽生えているのが面白いですね」
__2月から3月にかけて、N響とヨーロッパへ演奏旅行し、大成功をおさめましたが、彼らは世界のトップ10に入ったと思われますか?
「音楽はスポーツとは異なるものなので、いわゆるランク付けをすることは、非現実的だと思っています。いわゆるトップ10と言われているオーケストラは、ベルリン、ロンドン、シカゴなどだと思いますが、日本の方は総じて、文化的に謙虚で、西洋文化をあがめているところがありますね。しかし、実際の世界のスーパーパワーを鑑みると、現代はインド、ブラジルなども入ってくるわけで、世界はいままさにこの方向性に向かっていると私は思うのです。ですから、トップ10をいま選ぶのは、非常に構造的にも非現実的だと思います」
__すぐれたオーケストラの条件をN響が兼ね備えている点については
「技術的な点だけでなく、すぐれた個人における人間性をもっていることが大事だとおもいます。オーケストラは、コミュニケーション能力、人間性が求められます。ただ技術的に優れているだけでなく、日々同じ演奏をしても、同じことをただ繰り返すのではなく、さらに進化し、人として反応することが大事だと思います。100人近い人間がオーケストラの中にいますので、昨日と同じことをするのではない、反応のよさとコミュニケーションが大切です。」
__N響との録音プロジェクトで、今回の「ツァラトゥストラはかく語りき/メタモルフォーゼン」がうまくいっていると感じている点は
「『メタモルフォーゼン』は深みがあり、リヒャルト・シュトラウスは哲学的かつ圧倒的な観念を投影しています。シュトラウスは『ばらの騎士』のようなオペラも書き残していますが、このようなストーリーがなくても成立する曲を残しているところに面白さがあると思います。」
__今後N響との録音プロジェクトは、「展覧会の絵/マーラー交響曲第6番『悲劇的』」、そして武満徹が待機中ですが、その他手掛けたい曲はありますか?
「もちろん!いろいろ手がけたい曲はたくさんあります。しかし現実問題として、レコーディングというのは、総じてお金がかかりすぎる点があります。また、自分の録音したい曲とは別に、実際に店頭で売れるのかどうかというビジネス的な要素が加味されてきますので、すべてがすべて録音できるとは限らないですね。しかし、楽曲を録音する意味というのは、私なりにいくつかあると思うのです。ひとつは技術的にうまさを高めること、後世に残す事、海外に自分たちオーケストラを紹介すること、そしてある意味『自分探し』的な要素があると思います。私個人としては、20世紀の偉大な作曲家である、ストラヴィンスキーやバルトーク、ワーグナー、ショスタコーヴィチ、そしてメシアンをとりあげたいと思っていますす。これらは”レガシー(遺産)”として大事にのこすべきだと思います」
非常に密度の濃い内容のトークショーとなりました。
お話をうかがっていて、大変(いまさらですが)頭脳明晰、頭の回転の速さとともに、音楽に対する真摯な姿勢、世界情勢に対する深い観察眼などを感じ、大変感動した次第です。個人的には、もっと伺いたい質問もたくさんあったのですが、いずれ、いい形でマエストロ・パーヴォがお話してくださる機会もあるだろうと期待しております。
このあと、サイン会となりまして、パーヴォは、たのしく集まったファンの方々ひとりひとりと、真摯にあるいはユーモアたっぷりに交流を図られました。かくいう私も一生懸命練習した英語で、パーヴォにご挨拶ができ、とっても幸せでした!
中には、大変素敵な花束を用意された方もいて、パーヴォが思わず破顔一笑、大変喜ばれる場面もありました。パーヴォのお人柄の円満さは本当に、見習うべき点が多々多く、わたしと6歳しか違わないのですが、対応がまったく「オトナの対応」ですばらしいと感じ入りました。
集まられたファンのみなさまとも、その後たのしくいろいろお話でき、あるいはお食事も一緒にでき、本当に実り多い、贅沢な時間が過ぎていきました。
このようなすばらしい機会を設けてくださった、山野楽器さま、ソニーミュージック様、スタッフのみなさま、そして次の定期公演での練習にお忙しいなか、すばらしいお話をしてくださったマエストロ・パーヴォに心からお礼を申し上げます!