萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

secret talk80 安穏act.17 ―dead of night

2018-04-11 21:48:12 | dead of night 陽はまた昇る
知らない安閑に、
英二23歳side story追伸@第6話 木洩日


secret talk80 安穏act.17 ―dead of night

ワイシャツの袖まくった腕、自分の臆病がおかしい。

「宮田…どうぞ、」

ことん、

コーヒーカップひとつ、ほろ苦く甘く香る。
くゆらす芳香おだやかなダイニング、素直に笑った。

「ありがとう湯原、いい香だな?」
「…そう、」

短い言葉そっけない。
けれど無視じゃない香に口つけた。

「…うまい、」

こぼれた声ゆるやかに香る。
あまい深い苦み澄んで、やわらかな唇ほころんだ。

「湯原のコーヒーすごく美味いな、淹れ方のコツあるんだろ?」

いちばん美味しいかもしれない?
記憶たどる芳香のテーブルむこう、マグカップひとつ座った。

「いつも淹れてるだけ…だから」

かたん、

ダークブラウン艶やかな椅子に半袖シャツ座ってくれる。
クセっ毛やわらかな黒髪に窓の陽あかるい、そんな差し向かいに声が出た。

「エプロン似合うな、」

水色ストライプ明るいエプロン、半袖シャツ涼やかな腕。
警察学校とは違いすぎる姿で黒目がちの瞳がにらんだ。

「悪い?」
「なんで?」

訊き返しながら楽しくなる。
だって無視じゃない、そんな視線に笑いかけた。

「エプロン似合うから悪いってないだろ、なんでそんなこと言うんだよ?」

つっかかる君、その貌もうすこし見てみたい。
芳香ゆるやかなテーブル、すこし厚い唇ひらいた。

「宮田こそなぜ?」
「質問に質問返しかよ、」

笑いかけて唇、コーヒーが香る。
ほろ苦い甘い香すすりこんで、黒目がちの瞳に笑いかけた。

「エプロン似合うのってさ、やさしい空気でいいなって想ったから、」

もし、自分もそんな空気に生まれていたら?
そんなこと想うほど未知の時間、エプロンの首すじ朱い。

―かわいいな、

すなおな感想が鼓動たたく、ほら?もう手遅れかもしれない。
こんな本音も知られたら?あわい不安に訊かれた。

「あの…宮田こそなぜ、着替えないんだ?」

その質問ちょっと困るな?

※校正中
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