記憶を慕って、
secret talk82 安穏act.19 ―dead of night
刻まれた時間まどろむ。
「…いい家なんだよな、」
ひとりごと見つめる暖炉の縁、ダークブラウン艶やかな木目に静謐やわらかい。
木彫ふかい光陰が照る、カーテン波うつ天鵞絨おだやかな木洩陽は古いガラスの光。
かすかに甘い深い涼やかな香くゆる、温もり静かな穏やかな、そういう家が君の育った場所。
―似合わないよな、警察官なんて…湯原は、
想いたたずむ空間、窓ふりこむ黄昏やわらかい。
光たどるガラス惹かれてもたれる窓辺、まだ残暑まぶしい夕暮れ夏花ゆらす。
純白きらめく花びら静謐やさしい、あの花にいくど君は水を遣ってきたのだろう。
光る花のむこうベンチが見える、この窓辺に君は育って、それなのになぜ?
―だからあのベンチも好きなんだ湯原、こういう家で育ったから、
静かな穏やかな優しい家、それが君の素顔。
それを自分はもう知っている、だから「似合わない」と想ってしまう。
それでも選んでしまった道で自分と出会って、それは君にとって何だろう?
「宮田くん、」
「はい?」
呼ばれてふりむいた先、やわらかな瞳が笑ってくれる。
黒目がち優しい眼ざしは似ていて、けれど違う声が笑いかけた。
「あのね、宮田くんは料理する男の子ってどう思う?」
やわらかなメゾソプラノが自分を見あげてくれる。
その言葉ゆるやかに甘辛く香って、英二は微笑んだ。
「さっき初めて見ましたけど、湯原くんのエプロン姿はいいなって想いますよ?」
幸せ、ってあんな姿を言うのだろうか?
―なんて想ったこと言えないよな、ちょっと?
正直な告白、もし君の母親にしたらどうなるだろう?
隠しこんだ本音の前、黒目がちの瞳ほがらかに笑った。
「そう?ね、どうして周太のはいいの?」
※校正中
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英二23歳side story追伸@第6話 木洩日
secret talk82 安穏act.19 ―dead of night
刻まれた時間まどろむ。
「…いい家なんだよな、」
ひとりごと見つめる暖炉の縁、ダークブラウン艶やかな木目に静謐やわらかい。
木彫ふかい光陰が照る、カーテン波うつ天鵞絨おだやかな木洩陽は古いガラスの光。
かすかに甘い深い涼やかな香くゆる、温もり静かな穏やかな、そういう家が君の育った場所。
―似合わないよな、警察官なんて…湯原は、
想いたたずむ空間、窓ふりこむ黄昏やわらかい。
光たどるガラス惹かれてもたれる窓辺、まだ残暑まぶしい夕暮れ夏花ゆらす。
純白きらめく花びら静謐やさしい、あの花にいくど君は水を遣ってきたのだろう。
光る花のむこうベンチが見える、この窓辺に君は育って、それなのになぜ?
―だからあのベンチも好きなんだ湯原、こういう家で育ったから、
静かな穏やかな優しい家、それが君の素顔。
それを自分はもう知っている、だから「似合わない」と想ってしまう。
それでも選んでしまった道で自分と出会って、それは君にとって何だろう?
「宮田くん、」
「はい?」
呼ばれてふりむいた先、やわらかな瞳が笑ってくれる。
黒目がち優しい眼ざしは似ていて、けれど違う声が笑いかけた。
「あのね、宮田くんは料理する男の子ってどう思う?」
やわらかなメゾソプラノが自分を見あげてくれる。
その言葉ゆるやかに甘辛く香って、英二は微笑んだ。
「さっき初めて見ましたけど、湯原くんのエプロン姿はいいなって想いますよ?」
幸せ、ってあんな姿を言うのだろうか?
―なんて想ったこと言えないよな、ちょっと?
正直な告白、もし君の母親にしたらどうなるだろう?
隠しこんだ本音の前、黒目がちの瞳ほがらかに笑った。
「そう?ね、どうして周太のはいいの?」
※校正中
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