萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

secret talk10 七夕月act.3―dead of night

2012-10-21 04:36:53 | dead of night 陽はまた昇る
※念のためR18(露骨な表現は有りません)

ことば無くても、



secret talk10 七夕月act.3―dead of night

梔子の花が、甘い。

吐息の唇ふれる香が甘くて、空気すべてが噎せるよう甘い。
艶やかな肩越しの白い花、あの花弁から濃厚な香がくるみこむ。
意識ごと体ほどかれ犯されていく、花の香に蕩かされてしまう熱が、甘すぎる。

―あまい…何もかもが

花の香、ぎこちなく抱きしめる腕の力に心奪われて、感覚ごと攫われる。
肌なめらかな体温、絡みあう繁みのもつれ、熱く甘く撃ちこまれる楔の鼓動。
ひどく甘やかに染められていく全て、この全てを今、自分に与えてくれる人。
この自分を求めて体内に入り繋がり合おうとする、この少年の肢体が狂おしく恋しい。

「…しゅうた、っぁ…きもち、いい?」

呼びかける声が、自分のものと思えないほど甘い。
こんな声を自分が囁く、そんなこと夢か幻のよう?けれど愛しい声は現実に応えてくれる。

「…ん、きもちいい、よ?…えいじ、」

名前を呼んで抱きしめてくれる、その重なる腰がぎこちなく揺らぐ。
不慣れな初々しい動き、けれど深められた肌に声が押し出された。

「あぅっ、」

声に脊髄を感覚が奔りあげる。
あまい責めに髄から支配されて、もっと求めたい望み急きあげる。
もっと抱いてほしい、このまま自分の中で息づいて甘いまま繋がりたい、その鼓動に脚を絡めひきよせる。

「…っ、え、いじ?…あ、んっ…」

かわいい喘ぎが見上げる貌から降ってくる。
間近くから自分を見下ろす貌は、凛々しい眉を潜め見つめてくれる。
黒目がちの瞳に熱を潤ませ、長い睫の陰翳に深く艶をこめ、すこし厚い唇濡れて吐息こぼす。
その貌が前よりも少しだけ大人、羽化する少年の瑞々しい艶麗に見惚れてしまう。

「しゅうた、きれい…だ、ね…」

抱いてくれる少年に微笑んで、繋がれたまま体を少し起こす。
左掌に腰を抱きしめたまま体を添わせ、オレンジ香る吐息に唇ふれる。
そっと重ねた唇に濡れて、くちづけを深く求めてキスを絡め合わす。

―蕩かされる…融けあいたい

体支える右肘に、恋人の律動がふるえて揺らす。
その波が大きく寄せられて、体が大きく逸らされ喘がされる。
この感覚も一週間前の、初めての夜より強く責められて声が溢された。

「うぁ、…ぁ、しゅう、た…あ、」
「えいじ、へんになりそうな、の…あ、ぁ、」

少年の声に、熱ふくれあがる波が体内に生まれだす。
このまま自分の中に融けてくれる?その予兆に腕を伸ばし初々しい体を抱きしめた。

「そのまま、もっと…おいで、し、ゅうた…ぁ、」

悶える自分の背中に、シーツの波がこすれる。
胸に腰に脚に重ねられる肌の、なめらかな熱があまくて惹きこまれてしまう。
交わされる腰の肌、その狭間に揺すられる真芯が波のまま鼓動が熱い。

―周太、初めての時より熱い…この俺がこんなにされて

まだ少年のままでいる心と体に抱かれ、犯され受容れる喜びに全身が熱い。
こんなふうに誰かに抱かれることを自分が喜んでいる、この現実が自分で信じ難いほど溺れている。
この体に誰かの侵略を赦す、そんな女のような立場を自ら望むだなんて思わなかった。
けれど今この瞬間に、肌を火照らせる悦びは血潮を辿り心も体も翻弄されていく。

―熱い、あまくて愛しくて…

最愛の婚約者に「大人の男」の自信を贈りたい、その願いに我が身を差し出した。
それはまだ一週間前が初めてだった、そして二度めの逢瀬にまた体を開いた自分がいる。
そして与えられている感覚に、快楽の喜びと愛され求められる幸福に酔わされて、ただ愛しい。

―離れてほしくないこのまま…抱かれておかされていたい、このひとだけには…

唯ひとり、この体に受容れたい。ずっと護り続け、触れあい傍にいたい。
本当は男としての誇りが強い自分、それなのに女の身代わりを務めてすら永遠に愛されていたい。
その望みのまま体を開き抱かれていく、体深く穿たれる楔ふくれあがる熱、自分自身に籠りだす熱。
ふたつの熱に犯される甘い責めにただ愛しい、恋慕が深奥から充たす意識に愛しい囁きが響く。

「え、いじ…っ、も、へん…?」
「ん、きもちい、い…おいで、しゅうた、もっと俺のこと…っ」

囁きあいに、強く熱の鼓動が脈打たされて波さらわれる。
ひどく甘い香、あまい感覚、肌こぼれだす熱うかされ呼吸が止まる。

「あっ、えいじ…っ、ぅ」

この体の上、あまい喘ぎ愛しく降って少年の肢体がゆるむ。
ゆっくり凭れこむ薄紅の肌は熱い、熱く真芯はくるまれ熱が誘われだす。
すがるよう抱きしめてくれる腕の、ぎこちない甘さに自分の感覚が弾かれ声があげられた。

「っあ、しゅ、た…、…」

重ねられた肌のはざま、熱がほとばしり脊髄を奔らす。
腰から迫上がる熱の甘さに震わされて、体から力が抜かれていく。その頬に甘い香撫でて胸元に熱ふれる。
やわらかに熱い濡れた優しさ、ぎこちない唇の愛撫に肌を委ねて、掌に黒髪のやわらかさを絡ませる。
指ふれる艶やかに優しい髪、それは今夜に摘んだ花のひとひらと似て、あまい香に優しく指ふれさす。

「周太…髪が花びらみたいだね?あまい香がする…」

繋がれたまま抱き寄せて、ゆっくり寝返らせ恋人を見下ろす。
深みに力を籠らせ恋人の花芯を包みこむ、体内から抱きしめて離さないと伝えてしまう。
いま腕に抱きしめる洗練された少年の肢体、この身の奥深く抱きこんだ少年の大切な体。
愛しい肌を全て我が身に納めて恋愛に酔う、いま瞬間に融けあう幸せに黒目がちの瞳が艶めいた。

「あ、…え、いじ…」

呼んでくれる名前が、さっきより甘い。
もう今からは自分が恋人を抱く時間、その始まりに英二は微笑んだ。

「周太、いっぱい気持ち良かったよ?…もっと気持ちよくしてあげる、」

始まりを告げて愛しい唇にキスをする。
重ねる唇に絡ます熱、その遥か向うに体内から熱が抜け落ちる。
いま離れてしまった体深くの熱、けれど唇にうばう言葉の奥へと熱は蘇える。

あまい香、ことばも無くただ梔子の夢ひととき。




(to be continued)

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