萬文習作帖

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初春、佳雪ふる

2022-01-01 23:53:00 | 文学閑話万葉集
新しき 年の始めの 初春の けふ敷る雪の 伊夜しけ餘事  大伴家持
あたらしき としのはじめの はつはるの けふふるゆきの いやしけよごと

新しい年が始まる初春の今日、ふりつづく雪のように佳い事が続くといい。
新しい雪のよう真っ白な、清浄な佳いものが余るほど残され続いていくように。
【撮影地:栃木県日光市戦場ヶ原2014.1】


元日の歌ですが『万葉集』の最終巻=巻第二十のいちばん最後に載っています。
ラスト締める絶筆歌でありながら「始」「餘事」に歌集を編纂したあたり、籠められる祈りが謳われています。
原文は「新 年乃始乃 波都波流能 家布敷流由伎能 伊夜之家餘其騰」
結句の「餘」という字は「引き続いて後に残る」「余るほどに残る」という意味になります。
この「よごと」を翻刻するとき「吉事」にすることが多いようですが、「餘」に歌意あるようで・字義そのまま現代語訳してあります。

雪が降り続いて、あとまで溶けず残るまま積り敷き詰めていく。
そうした厳寒にくるまれた雪国で初春の希望を祈る歌です、そこには詠み人の心と状況が謳われています。
この歌が詠まれた時、作者の大伴家持は配流された因幡国=現在の鳥取県東部で最初に正月を迎えていました。
西暦759年にあたりますが、この左遷は橘氏と藤原氏の抗争に巻きこまれたトバッチリ処分でした。
この当時の伴氏は軍部の名門で、その一族の長だった家持は文武両道として知られる歌人です。

こうした状況下にあった家持は、凹んでいても不思議ではありませんが「始」「餘」の二文字に希望を感じさせます。
迎える新年の言祝ぎ歌として詠まれたんだろうなあと、明るいカンジに訳してみました。
迎えた2022年、慶事ふりつもる佳き年になりますように。
【撮影地:栃木県日光市戦場ヶ原2014.1】


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