◇◆◇帰って来た嗜好の隠れ家blog◇◆◇

嗜好な事や色々の思った事を再び書き連ねます。

本能寺 池宮彰一郎

2006年02月10日 23時36分55秒 | 読書
 何回か書いて居るが、筆者の自宅は毎日、新聞の定期購読家庭だ。
 新聞には連載小説も有り、それらにはとても面白くて堪能した作品も多く、
毎日の楽しみの一つだった。

 その中から、筆者も好きな歴史小説を紹介しよう。
池宮彰一郎先生の「本能寺」である。
 この小説は、主人公が明智光秀。
 彼が本能寺で主君信長を討つまでの心情の動きや経緯等が、
彼の半生を通じて語られている。

 此処で面白いのが、信長は幕藩体制の様な封建制では無く、
ヨーロッパでもまだ浸透しきって居なかった、中央集権制を企図して居たのではないか?
と言う仮説の元で、物語が進んで行く事である。

 そして、その制度の利点を理解し、賛同して居たのも、
織田家中では光秀ただ1人で、信長からの絶対の信頼を受けていた。
と言う様な物だ。

 しかし、当時の価値観は、土地や配下の将兵は、それぞれに集まっている有力武将の物。
と言う価値観が有り、武将は主君に仕えて活躍する見返りに、
恩賞として土地を貰い受け、それを更に配下の将兵に与えて勢力を拡大させて行く、
と言うのが、当時の常識で有った。

 そんな価値観の中で、今自由にしている土地や城、将兵等も、
主君で在る信長から一時的に預かっているだけで、
動乱が終われば、全て主君の下に返却される(信長が全てを掌握する)。
と言うシステムは、頭の固い古い人間には、到底理解出来ないし、
受け入れる事が出来ない。
 そこで、開明的なシステムを受け入れられない(システムだと気付いた)武将は、
自分の築き上げた勢力を守る為に、信長を亡き者にしようと画策を始める。
 光秀の家中にも、それに気付き、信長を否定し始める者が出て来る。
 信長から事業を継ぐ跡目と目され、自らも信長の壮大な構想を理解するが、
世の中が、その価値観をまだ認める時代では無い。とも悟り、思案する光秀。

 家中から突き上げられ、また同輩の秀吉も、信長の構想に気付き、
旧弊な価値観で見れば、自らの勢力を消滅させられると考えて居た。
有能では有るが、価値観が旧態然とした見方しか出来なかった秀吉も
謀反を企てている事を知り、思案の時間も残されていないと感じた光秀は、
遂に行動を起こす。その結果は…

 と言う様な内容。
(主人公は、筆者は光秀だと思って見て居ましたが、他レビューを見ると信長みたいですね。
後、秀吉が行動を起こそうとしていた。と言うのは、定かでは有りません。
他の作品や、書物からの情報と、記憶が錯綜して居る可能性有り。)

 信長が中央集権制を企図していた。と言う説は、当時の筆者には衝撃でした。
しかし、直ぐにそれは理解出来、有り得ない事では無いな?とも思いました。
 1570年代後半頃から、列島中央をほぼ制圧した信長は、
東西に軍を派遣するべく、軍団制を布きます。

北陸軍は柴田勝家。
東海は他の部下と違い、同盟者で在るが徳川家康。
中国には羽柴秀吉。
武田を滅ぼした後には、関東軍として滝川一益。
四国軍の候補として丹羽長秀。
等を配置しました。

 これを見て、北陸軍の柴田勝家や、中国軍の羽柴秀吉は、
配下は、臣下では無く、与力や目付けとしてだったので、
支配従属関係には無いとされるが、
実質的には上司と部下では有った為に、実質支配地は、
非常に広大で、地方に割拠する有力大名並の勢力を誇っていた。

 この状態に、昔から筆者は非常に違和感を感じて居た。
実際、彼ら軍団長の勢力と言うのが、既に信長の直轄地を凌駕しそうな位に
巨大化して居たからだ。
 もし旧来通りの封建制を意図するならば、
この様な大勢力を配下に握らせるのは不自然で、
中央集権制度上での、総督的な意味で委任していた。
とする方が、自然だと思ったからだ。
 しかし、旧態然とした価値観しか持たない秀吉等は、
中国東部は、自らの実力一本で獲得した。と言う自負が有るだけに、
 それを命令一つで取り上げられそうな信長の構想は、
到底受け入れられず、謀反を企図した。
と考える事も出来る。

 また、本能寺の変直後の、秀吉の中国大返しも、
そう考えると手際が良すぎる様にも感じる。
 自分が起こそうとした謀反を、同輩の光秀に先を越されたのを逆に利用して、
大返しの計画を、謀反では無く、信長の弔い合戦の為に、
と言う事で名分に変更した可能性も有る。

 この信長中央集権説は、この様に有り得るかも?と思わせる目から鱗な説で、
筆者は非常に感心して、面白く読めた記憶が有ります。

 そんな、今日紹介の「本能寺」  お勧めです。

追記:ちなみに、最近は、秀吉謀反意図説や、秀吉本能寺黒幕説等、
秀吉悪玉説も、普通に見受けられる様に成りましたね。
光秀の謀反が単独なのか、秀吉との共謀→裏切りなのか?
の真実は、藪の中ですが、
 その後の織田家簒奪の手際の良さや、同輩を滅ぼして行く様を見ると、
やはり秀吉は、天下を盗る野心を織田家臣時代から狙っていた、
癖の有る人物だったのでは無いか?と言うのが、筆者の個人的見解です。

秀吉 朝鮮の乱(お勧め小説)

2006年01月13日 21時53分31秒 | 読書
筆者の蔵書で、お勧めの小説を書いて見ましょう。と言う企画第一弾。

 と言っても、この小説はネット書店等で検索しても、皆”品切れ”と表示されるので、
もしかしたら既に絶版なのかも…(汗)
なので、記事を読んで欲しく成った方が居ても、手に入り辛い可能性が有るのであしからず。

 この小説は、韓国の作家さんが執筆された、上下二巻に渡る長編です。
韓国の作家と言うと、某所では捏造とか、自国に都合が良い記述ばかり。とか、
日本人が必要以上に悪人の扱いを受けているのでは?と言うイメージが湧いてしまうと思われますが、
この作家は海外留学も経験されて居る様で、歴史資料等も綿密に調べられていて、
日本・朝鮮・明と、それぞれの立場を中立な視点で見詰め、
それぞれの良い所、悪い所もしっかりと書かれて居るので、日本の悪い記述が有っても不快には感じません。

 筆者は、別HPでも、この時代を題材にしたコンテンツを開設(殆ど工事中だけど(汗))
してますが、筆者がこの時代(この戦争)に興味が湧いたのは、他国を侵略した日本が強くて好き。
とか、半島の人が嫌いで懲らしめる戦争だから好き。とか、
そんな卑下た感情で好きなのでは無く、
単純に、三国志等の京劇での格好をした、中国の兵隊と、武士はどっちが強いの?
と言う様な、所謂格闘技好きな人が、異種格闘技で、空手家とボクサーはどっちが強いの?
と言う事に興味が湧くのと似ている感情かも知れません。

 日本は、島国でしたので、余り外国と戦争を行いませんでしたので、
その中で、数少ない外征の一つなので、興味が湧いて居ました。

 内容は、上巻が、秀吉が大陸制覇の野望を発露する所から、
始まるまでの経緯を、日本と朝鮮(間の対馬)を中心に詳細に語られ、
戦争が勃発して半島をほぼ制圧して、朝鮮の人々が反撃の動きを見せるまで。
です。

 下巻が、朝鮮の宗主国、明王朝も救援に動き出し、朝鮮も義勇軍や水軍の反撃が始まり、
日本軍が苦戦し講和、そして外交の失敗から講和が破れ、二度目の出兵とその詳細が描かれています。

 見所は、初めの、興味の湧いた理由で書いた、異種格闘技戦の様な面白さです。
日本軍の動きや台詞。人間関係等は、本当に戦国時代小説を読んで居る様だし、
朝鮮や明側の宮廷でのやり取りや権謀術数、軍隊の動かし方等は、
さながら三国志等の演義物小説を読んで居る様です。
 その二つが絡み合う面白さと言うのは、筆者はそれまで体験した事が無い面白さだったので、
ワクワクしました。
 また文章に変な癖も感じず、嫌味無く読めたのも、好印象の原因だと思います。

毎日新聞夕刊連載小説 女信長 大詰め

2005年12月22日 23時49分51秒 | 読書
毎日新聞の、夕刊で連載されている小説、「女信長」がいよいよ大詰めだ。
しかし筆者はマズイ事に、本能寺の変の話の最後の回に限って、
見逃してしまった…
新聞は、せっかちな父親が、翌日には既に廃棄してしまったので、
もう読む事が出来ない。

 翌日(翌週)の、次の回に成ったら、いきなり徳川家康が天下を取った後の話まで飛んでいて、
話がチンプンカンプンで参った。

 どなたか、最後をちゃんと見た方、本能寺の変のラストの回を教えて下さい。
その一つ前の回で、光秀(女の信長といい仲)が「女は罪は無いので逃してやれ!」
と言う、信長が生き残った含みを感じる触れを出して居るから、
多分女に戻って難を逃れたのだろう。と言う事は推測できるけど、
肝心要の最後が抜けて居るので、気に成って仕方が有りません!!

 でも、今の状況が、天海和尚が光秀正体説で展開して居るみたいなので、
多分信長(御長の方)もまだ生き残って居るんでしょう。

 とにかく、この小説も面白いので、読了したら感想を纏めて書きたいと思います。

高校時代に書いた小説

2005年11月02日 22時43分23秒 | 読書
 ってまだ途中なんですけどね…
と言うか、全然完成じゃ無いんですが、(予定全十章中一章のみ(汗))
でも一章だけと言っても、その文章の量は微妙に多かったりしるんですよね…
その量からして、全部完成したら超長編大作に成っちゃう恐れが有り、
どうした物かと悩んで居るうちにズルズルと社会人に成り、色々有る内に書けずに今に至ってます。

 それで、パソコンやブログ等の文明の利器が有る現在、ちょうど良いと思い。
それを外部にも何かの形に残すって言う意味で、その当時の文章そのままを、新聞の連載程度の分量で、不定期連載でもしようかな?
なんて事を最近考えています。

ストーリーの構想は、ラストまで全部有るので、もし好評だったら、未完成の部分も書いて行きたいです。

 まぁまだ思い付きの段階なので、書くかどうかは保障出来ませんが、突然連載が始まる可能性も有るので、
期待しないでお待ち下さい。

ちなみに題名は、『北蛮征討府』
日本歴史風架空戦記小説です。

女信長

2005年09月24日 23時59分59秒 | 読書
 カテゴリー登録して置きながら、まだ一つも投稿していないカテゴリーが有るので、
今回はこのカテゴリーの話題を提供したい。

 筆者の実家は毎日新聞を定期購読している。
この新聞の夕刊では、度々筆者の好きな歴史小説が連載されるのだが、
今現在連載しているのが、佐藤賢一先生の、「女信長」で有る。

 この内容は、題名で凡そ検討は付くかも知れないが、
あの織田信長が、実は女性だった。と言う仮定で構成されるストーリーです。

 歴史の流れ自体は、既存の歴史小説そのままで展開して行くのだが、
唯一違うのが、織田信長が女だった。と言う事実だけ。
 ただ、この小説で語られる仮説と言うのが、歴史を知っている人程、
なんとも説得力が有る内容なのだ。
 例えば、信長が考案した諸戦術(長槍集団戦法・鉄砲の使用等)は、
男は個人の武勇を誇るので、集団戦法は思いつかない。
や、体力の弱い女だからこそ、体力に差が有っても同様に扱える鉄砲の使用を考え付いた。
や、男は土地に執着するが、女はあまり土地に執着しない。
(実際信長は、領地を与えてやる。と言うよりも、兵力を預けて部下を使う
中央集権的軍隊を目指した形跡が有る。)等、
 他にも解りやすい所では、信長が甲高い声だったと言う事実や、
癇癪持ちだった。と言う様な、女性に比較的多い性格をして居た。
と言う物等が有り、非常に興味深い内容なのだ。

 そんなちょっと奇を衒った内容ながら、大筋では正統派なこの小説を、
筆者は毎日今楽しみに読みふけって居ます。
もし毎日新聞を購読の方で、この小説の存在を未確認の方は、
是非面白いので読んで見て下さい。