快読日記

日々の読書記録

「捨てる女」内澤旬子

2014年01月07日 | エッセイ・自叙伝・手記・紀行
《1/4読了 本の雑誌社 2013年刊 【日本のエッセイ】 うちざわ・じゅんこ(1967~)》

“捨てる快感”に取り憑かれた中崎タツヤ「もたない男」にはほとんど共感できなかった(けど、すごくおもしろかった)わたしですが、内澤旬子の気持ちはよくわかる気がします。
ド●・キホーテのようにぎっしりモノが詰め込まれた場所が嫌で、あー!気持ち悪い!とか言うクセに、自分の部屋はまさにそれ、という事実から目をそらし続けた長い年月よ。
たしかにビジネスホテルみたいな部屋で暮らせたらどんなにいいでしょう。うっとり。

それはともかく、本書は乳がん・離婚といった人生の一大事との格闘と同時進行で、あふれるモノとの決別を果たした顛末。
旧作「身体のいいなり」「飼い喰い」の裏ばなしとしても読めて、「ああ、あのときはこうだったのか」という感慨もひとしおです。

筆者を圧迫する膨大なモノ(のメインは書籍と溜まったイラスト原画と製本材料)とすっぱり別れ、さっぱりした部屋を手に入れたあと、彼女が生き物を求めるという終盤には不思議な感動がありました。
何かを手放せば、何かを得る。
では、わたしもここで断捨離じゃ!
…と宣言したいところですが、後悔するだろうなあ。
しかもそれを後々まで引きずるだろうなあ。
想像しただけで目がうるんでくるよ。
だめだ俺。

そういえば、テレビで“片付け名人”みたいな人が、モノを捨てるってことは、過去・現在・未来の自分との対話だ!って言ってるのを見て、何を大げさな、と笑ったけど、あのセリフは正しい。
決断して動く。
簡単なようでなかなかできない、踏ん切りがつきません。

あ、自分の話で終わっちゃった。


→「もたない男」中崎タツヤ


→「身体のいいなり」内澤旬子

→「飼い喰い」内澤旬子

→「世界屠畜紀行」内澤旬子

→「おやじがき」内澤旬子

/「捨てる女」内澤旬子