快読日記

日々の読書記録

読了『幻想夜話』『よろず幻夜館1・2巻』高階良子

2016年03月11日 | 漫画とそれに関するもの
3月10日(木)

子供のころから双子に憧れている。
自分に双子の姉か妹がいたらいいのに!と母に訴えたら「お前なんか一人でたくさんだ。二人もいたら気が狂う」と真顔で言われたことも今となってはいい思い出だ。
他人には理解してもらえない心情も双子ならわかってくれるかもしれないし、自分と自分だったらさぞかし気が合うだろう、と思っていた。
ダメな自分、しっかりした自分、冷静な自分、明るい自分、暗い自分、そんなのが大集合したらそりゃあ心強いに違いない。
双子、というより、もう一人自分が欲しいということだ。

そういう使い慣れた毛布の中で自分自身の体臭にくるまれるような“安定感”を求める気持ちを『幻想夜話』『よろず幻夜館1・2巻』(高階良子/秋田書店)を読みながら思い出した。

これは「多重人格モノ」ではあるんだけど、他と違うのは、いろんな人格が実体化して(本人を入れると4人)一緒に暮らし、探偵のような便利屋のような商売を始めるというところ。

高階良子はもう70歳くらいになるのかな。
萩尾望都あたりと並び称されても全然不思議じゃない作家なのに、なんだかいまいち正当に評価されていない気がする。
一時期、昔の自作の焼き直しみたいな作品が続いて「あれ?」と思ったことが、ほんの一時期だけあったけど、近年はコメディや児童虐待みたいな社会性のあるテーマなんかにも取り組んで、何がすごいって新しいテーマであってもその高濃度で独特な高階良子ワールドをキープし、何なら進化させているタフさ。

戦後の日本漫画史や少女漫画史的な本でもほぼ無視されている(被害妄想か)高階良子だけど、じゃあここらで大注目されちゃったりしたらうれしいかと問われれば、それはそれで複雑なファン心理でモヤモヤするなあ…と妄想しながら就寝。