快読日記

日々の読書記録

「ふたり狂い」真梨幸子

2012年03月01日 | 日本の小説
《2/26読了 ハヤカワ文庫 2011年刊(2009年に早川書房から刊行された単行本を文庫化) 【日本の小説 短編連作集】 まり・ゆきこ(1964~)》

解説の言葉を借りると、
「皮肉なプロットの短編で楽しみ、それらが繋がる構成に驚き、繋がって見えてくる物語に再度ぞくりとする」短編連作集。

ある小説の主人公と同姓同名の男が、自分のことが書かれていると思い込み、女性作家を刺してしまう、というところから話が始まり、各短編に出てくる人物や事件が複雑にリンクします。
さらに時間も前後するので余計に込み入っています。
ぼんやり読んでたら何が何やら、となりそうですが、その点は圧倒的な引力とスピード感でグイグイ読まされるので大丈夫。

タイトルの「ふたり狂い」というのは「妄想を持った人と親密になったり共同生活をしたりしているうちに、正常な人まで妄想を共有することになる(329p)」感応精神病のことだそうで、ひゃ~!春日武彦の本みたい!と思ったら、参考文献に春日本があがっていました(笑)。

真梨幸子作品(まだ3冊しか読んでませんが)には必ず“そこらへんに普通にいるおかしい人”が登場し、それがモンスター(例えば貴志祐介「黒い家」の犯人)的“恐怖”の方向ではなく、なんか悲しくて惨めで切なくて心細いかんじがします。
この作品にはそこに“本当に狂っているのは誰?”というゾクッとする謎も加わって、期待を裏切らないおもしろさでした。

→「殺人鬼フジコの衝動」真梨幸子
→「更年期少女」真梨幸子

/「ふたり狂い」真梨幸子
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