《1/4読了 講談社 2008年刊 【日本の小説 短編集】 つむら・きくこ(1978~)》
収録作品:カソウスキの行方/Everyday I Write A Book/花婿のハムラビ法典
刊行当時、そもそも「カソウスキ」なる心情が全く共感できん!つまらん!みたいな酷評を紙面(あるいは誌面)で見て、津村記久子未読だったわたしはあまり関心もなく「へえ~」ってかんじだったんですが、
今なら分かる。
あれ書いたの、おじさんだな、きっと。
職場と自宅を往復する毎日を送る主人公は30歳手前の女子・イリエ。
帰宅後は一杯飲んで寝るだけのハリのない生活に潤いが欲しい、活気が欲しい。
そこで“恋愛”みたいなイベントがあればいいんだけど、発熱するためにはエネルギーと相手が必要。
でも今の自分には燃料もないし、周りにはこれ!という人も見当たらない。
そこで、職場唯一の独身男性・森川に目を付けた。
この人を好きになったと想定したらどうだろう、毎日が変わるかな。
というわけで仮想敵ならぬ「カソウスキ」なんです。
「嫌いではないという結論しか出ない。どうして結論を出したいのかもよくわからないけれど。この人が好きだったら幸せなのかなあ、今、とイリエは窓の外を眺める」(32p)
果たして「カソウスキ」は恋愛の起爆装置となりうるのか。
…たしかに大多数のおじさんはこういうの嫌い(というか理解不能)かもしれない。
でも、おばさんならわかるぞ。
恋多き人生も大変だけど、恋愛体質じゃない人間の苦労だってあるさ。
無理矢理そうやって仮想でもしてみないと停滞する一方だよねえ、だけど20代ってのはちょっと早いんじゃないの、と声をかけたい気分です。
イリエの心境の描写が自然なのも手伝って、すんなり併走できる作品でした。
最後の「花婿-」もピリッとしててよかったけど、わたしが一番面白かったのは「Everyday-」。
主人公が失恋相手(彼は既に妻帯者だった)の妻の自己演出臭たっぷりなブログに心をかき乱されてどうにもならなくなるあたりなんて特に。
さらに自分をいじめるようにそのブログを毎日チェックしてしまう愚かさ。
これはいたたまれない。そして、よくわかる。
後半明るくなるのが救いでした。
→「アレグリアとは仕事はできない」津村記久子
→「とにかくうちに帰ります」津村記久子
/「カソウスキの行方」津村記久子
収録作品:カソウスキの行方/Everyday I Write A Book/花婿のハムラビ法典
刊行当時、そもそも「カソウスキ」なる心情が全く共感できん!つまらん!みたいな酷評を紙面(あるいは誌面)で見て、津村記久子未読だったわたしはあまり関心もなく「へえ~」ってかんじだったんですが、
今なら分かる。
あれ書いたの、おじさんだな、きっと。
職場と自宅を往復する毎日を送る主人公は30歳手前の女子・イリエ。
帰宅後は一杯飲んで寝るだけのハリのない生活に潤いが欲しい、活気が欲しい。
そこで“恋愛”みたいなイベントがあればいいんだけど、発熱するためにはエネルギーと相手が必要。
でも今の自分には燃料もないし、周りにはこれ!という人も見当たらない。
そこで、職場唯一の独身男性・森川に目を付けた。
この人を好きになったと想定したらどうだろう、毎日が変わるかな。
というわけで仮想敵ならぬ「カソウスキ」なんです。
「嫌いではないという結論しか出ない。どうして結論を出したいのかもよくわからないけれど。この人が好きだったら幸せなのかなあ、今、とイリエは窓の外を眺める」(32p)
果たして「カソウスキ」は恋愛の起爆装置となりうるのか。
…たしかに大多数のおじさんはこういうの嫌い(というか理解不能)かもしれない。
でも、おばさんならわかるぞ。
恋多き人生も大変だけど、恋愛体質じゃない人間の苦労だってあるさ。
無理矢理そうやって仮想でもしてみないと停滞する一方だよねえ、だけど20代ってのはちょっと早いんじゃないの、と声をかけたい気分です。
イリエの心境の描写が自然なのも手伝って、すんなり併走できる作品でした。
最後の「花婿-」もピリッとしててよかったけど、わたしが一番面白かったのは「Everyday-」。
主人公が失恋相手(彼は既に妻帯者だった)の妻の自己演出臭たっぷりなブログに心をかき乱されてどうにもならなくなるあたりなんて特に。
さらに自分をいじめるようにそのブログを毎日チェックしてしまう愚かさ。
これはいたたまれない。そして、よくわかる。
後半明るくなるのが救いでした。
→「アレグリアとは仕事はできない」津村記久子
→「とにかくうちに帰ります」津村記久子
/「カソウスキの行方」津村記久子