快読日記

日々の読書記録

「第五の季節 昭和世代女流短編集3」吉田知子

2008年10月18日 | 日本の小説
《10/17読了 読売新聞社 1980年刊 【日本の小説 短編集】 よしだ・ともこ(1934~)》


9編中8編が40代に書かれたもので、やっぱり若い、生々しさがあります。
巻末の「五番目」の中に「女のモヤモヤが見える。首まで詰まっている」というセリフがありますが、それはおそらく人間の中にも外にもある。
前者は命が孕むモヤモヤ、後者は関係というモヤモヤでしょうか。
その辺りをときには意地悪なくらいあっさり、ときには気持ち悪いほどねっとり書いた小説集です。

ふと気がつくと、数年前から女性作家の、しかもだいぶ年上の、作品を読むようになりました。
中でもこの吉田知子は今年出会った大ヒット。

「彼岸窯」は千利休が愛した茶碗の話を歴史の裏側から描いたような傑作です。
読みながら「この人はなぜこの景色を知っているんだろう?」と不思議な感覚に襲われます。
「オートバイ」では裸でオートバイに乗りたいと願う恵津子の"中年のモヤモヤ"もじんわり見えて、切なかったり滑稽だったり。

リアリティと言ってしまうとそれまでですが、この生々しさは癖になる。

なかなか書店に並んでいるところをみない作家ですが、これからも図書館でおっかける予定です。