十勝の活性化を考える会

     
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“閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済“

2021-05-17 05:00:00 | 投稿

 

先日、法政大学教授 水野和和夫氏“閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済“の本を読んだ。 この本は、新型コロナウイルスによって一層明らかになった資本主義の限界についての問題点を明らかにして、グローバル経済に対して疑問符を突き付けたものである。

一般的にグローバリゼーションとは、ヒト、モノ、カネが自由に国境を超える移動を言うが、これはつまり、世界経済に対して「閉じる」という選択を提案しているのである。 成長を持続させる世界経済の前提としての「グローバリゼーション」が、世界の“常識”だと考えられてきたが、それは幻想だったというのである。分かりやすく言えば、国民の幸せを求めた資本主義が“新型コロナ禍”などによって貧富の拡大を生み、99%の国民が貧困になりかけているというのである。利潤を追求する資本主義が利潤を生まず、幸せを生む“福祉”にお金を回せないのである。

戦後の経済成長を振り返ると、生産力が高い国家ほど国民に対して、無限の欲求に応えることができた。作れば売れた時代であり、生産力が全てであるという神話が、近代経済を特徴づける重要な要素だったと言える。それは、戦後の日本の高度経済成長を見れば分かるであろう。

そして今、東芝、日産、フォルクスワーゲンの実態でも分かるとおり、利潤を追求する世界的企業が社会秩序を乱し始めているのである。共産主義は、ソ連の崩壊でも分かるように競争原理が働かずに、生産性が低く資本主義に敗れている。

一方、資本主義は利潤を求めすぎて人間搾取・競争原理などによりおかしくなったのである。そのためにリモートワークなどの働き改革が叫ばれだし、新型コロナ禍で一段と進んでいるのである。これからの世界はガルブレイス氏とメンシコフ氏の共著“資本主義、共産主義、そして共存”の対談集にも書いているように、この二つの世界は「良いところ」を取り入れて共存する時代が来るであろう。

しかし、この本を書いた水野和夫氏は、「どんな時代がやってくるのか自分には分からない」と書いているのは、本音かも分からない。なぜなら、国民に有無を言わせない言論が自由でない中国が、いち早く新型コロナ禍から脱出し経済活動が復活したからである。ただ、中国も早かれ遅かれ人口減少の時代がくるので、生産力はそれほど伸びないだろうし、一方、日本は少子高齢化ですでに人口が減り始めている。これからの日本は、一体どうしたら良いのだろうか・・・。

ご承知のとおり経済は、消費と投資の有効需要で回っている。この消費と投資がうまく循環していけば良いのであるが、この有効需要が新型コロナ禍で落ち込み、世界経済が大変なことになっているので、今が日本の社会を変える絶好の機会だと思っている。すなわち、「閉じる」というゼロ成長経済である。もっとも、ゼロ金利が20年間も続いて、日本経済はすでに投資を生まない経済に入っているのである。

ところで、気候変動サミットが4月22日にオンライン形式で22日に開催されたが、菅義偉首相は2013年の数値に対して2030年までに、約50%の温室効果ガスの削減を目指すことを表明した。このハードルはとても高いが、粛々と取り組んでいくことしか方法はないだろう。 私は経済学者ではないが、日本経済の復活を以下のように考えている。

それはまず、コロナ禍にあって国債残高が増加の一途をたどっているので、財政の立て直しが優先である。日本の財政が破綻しないのは、民間資産や国民の金融資産が国債残高を大きく上回っており、市場からの信頼を失わずに国債が買われているからである。それがいつまでも続くとは限らないし、国債市場が暴落すれば日本経済のみならず世界経済が大変なことになるであろう。

次に、人類の将来が危ぶまれる地球温暖化への対応である。即ち、再生可能エネルギーを利用し、中国よりも早く安価な電気自動車を開発してもらいたいと思っている。ただ、世界の論文数でもわかるとおり、中国人は頭脳明晰で人口も多いので、電気自動車の開発競争に日本は負けるかも知れない。従って、最後は“教育”だと思っている。なぜなら、日本の将来を担っていくのは、子供たちであるからである。教育費にお金が回らず日本の教育水準は低いが、最後の砦は教育しかないと思っている。                      「十勝の活性化を考える会」会員T

注) 教育予算

(情報元:2018年度国税庁ホームページより)

  • 諸外国と比較した我が国の教育投資
  • 公財政教育支出の対GDP比 2011年)

 我が国の公財政教育支出の対GDP比は、機関補助と個人補助を合わせて3.8%であり、データの存在 するOECD加盟国の中で最下位である。

我が国の教育支出の対GDP費を教育段階別で比較しても、全ての教育段階でOECD平均を下回る。特に、就学前教育段階と高等教育段階では、OECD加盟国の中で最下位である。  

(出典:2018年文部科学省ホームページより抜粋)