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私的コラム&雑記(&メモ)

今週の興味深かった記事(2018年 第46週)

2018-11-18 | 興味深かった話題

Intel/Movidius Myriad X

Intel、AI開発者向けの小型デバイス「Intel Neural Compute Stick 2」を発表 - @IT

 Intelが買収したMovidiusのMyriad X VPU(MA2485)が販売され始めた。
 VPU(Vison Processing Unit)とはいうがエッジ側のNeural Processing Unitで、CaffeやTensorflowを4TOPSで処理できる。記事にある通りIntel自身がUSB 3.0接続のNeural Compute Stickをリリースするほか、ASUS系のAAEONがMini PCIeおよびM.2接続のボードを展開する。
 もっとも、Mini PCIe/M.2といっても実際の接続はUSB 3.0で、Mini PCIeの場合はFresco Logic FL1100 USB 3.0コントローラー経由、M.2はB+M Keyタイプのインターフェースに含まれるUSB 3.0を使用してホストとUSB 3.0で接続されるので、SSDなどとは違いUSB 3.0接続のIntel NCUだろうがMini PCIe/M.2接続のAAON AI Core Xだろうが性能的な違いはない(FL1100やIntel xHCIといったUSBホストコントローラー性能による違いはあるかもしれない)。

 最近出揃ってきているエッジ側NPUだと、Apple A12が5 TOPS、中国Rockchip RK3399Proの2.4 TOPSといった具合であるが、Myriad Xの性能がいまいち判然としない。ニュースリリースを読むと4 TOPSという記載もあれば「専用のNeural Processing演算で1 TOPS」という記載もあり、どうやら1 TOPSの「Neural Compute Engine」と合計で4 TOPSの16コア「SHAVE」ベクトルプロセッサーが混載されているようだ。ダイ写真を見ると5%ほどを占める制御用RISC CPU・20%ほどを占めるImaging Accelerators・10%ほどを占めるNeural Compute Engine Engine・30%ほどを占めるSHAVEが混載されていることが分かる。

サイバーセキュリティー担当大臣とは何をする職種なのか

Japan's cyber-security minister has 'never used a computer' - BBC

 筆者はアイルランド在住だが、同僚から質問攻めにあった「ちょっと、どういうことなの?」と。それは筆者自身と同僚が米国系企業のサイバーセキュリティのチームに在籍しているせいかもしれない。

 そういう人々には半分冗談でこう回答しておいた「彼の仕事は、良い椅子に座って廻ってきた案件を承認することですよ」と。
 続いて、もう少し真面目にこう補足した
「日本は官僚が強いので、主要なポスト以外は大臣は誰でも良い」
「主要なポストとは財務・外務・防衛で、他は与党内での功績を基に選ばれる」
「彼は7期当選していることが与党にとって功績と認められた」
…もちろん、半分ぐらいは冗談だが…あながち間違ってなさそうなのが恐ろしいが、あくまで政治の問題なのだと思う。

 もっとも、本音を言えば、サイバーセキュリティのトップは先端テクノロジーを理解できて政治力も強い極めて優秀な人物か、さもなくば技術は理解しなくとも口出しせず予算だけ引っ張ってきてくれる人物が良いのではと思う。Googleのような企業であれば当然ながら前者の必要があるが、たとえば日本の銀行のような超文系社会であれば後者で充分かもしれない。
 10年前のサイバーセキュリティのコンセプトを軍事に喩えるなら中世のように城を築いて堀を掘って境界線を防衛するという感じだが、現代のサイバーセキュリティのコンセプトはそれとは大きく異なっている。防衛線が突破されて侵入されることを前提としていたり、それに対応するため選抜チームに適役をやらせて演習を行ったりといった具合で、一般人に理解できるか疑わしい。だから「コンピューターを使ったことが無い」は論外にしても「ぼくは〇〇に詳しいんだ」とか言って知りもしないのに現場に口を出されるのも邪魔で困る。

クラウドでホストされた悪意あるシステムについて、ホスト会社に責任はあるのか

「政商」化するアマゾン、米政府の重要インフラでシェア圧倒 - ASCII / MIT Technology Review

 記事自体は面白いと思ったが、ここでAmazon AWSの責任を強調するのは「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」的な責任転嫁だと思った。その意味ではMIT Technology Reviewらしくない。

 米政府と関連省庁は、例えばNSA Prism・NSA Echelon・FBI Caniverなど様々な監視システムを運用してきたことで知られている。もし政府と関連省庁が運用コスト削減と運用効率化のため多数のサーバーをクラウドを利用するとすれば、その一部や全部がAmazon AWS・Microsoft Azure・Google Cloud Platform等に移されるのは驚くに値しない。

 余談だが、個人的には日本の住基ネットなんかもクラウドに移行すべきだと思う。地方自治体がセキュリティの万全なインフラを設計・運用できるはずがないし、システムが地方自治体で分散していても物理的に分散している必要性が無い(というか、e-Japanだとか言って2000年から高速インターネットインフラを整備したのに、システムが物理的に分散している必要があっては自己矛盾である)。

 そして政府がサーバーをクラウドに移すのであれば、その中に監視システムが含まれるのも当然に思える。

 記事では特別に悪印象を与える表現は用いられていないものの、全体からは不法移民検挙が悪い事のように書かれ(それ自体は別の議論だと思うのだが)、政府が使用しているPalantir社製ICMをホストしているAmazonが片棒を担いでいるかのような印象を受けるが、さすがにAmazonとしては寝耳に水だろう。なにせAmazonはPalantirのシステムやデータに直接アクセスできないはずだし、Palantirだってシステム(≒道具)を開発・提供しているだけで、どう使うかはクライアントである米国政府次第であると思うのだが。

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