碧空の下で

人生の第四コーナーをまわって

聖母なる月のまねび

2009-10-07 10:49:33 | 詩、漢詩、その他読書感想
月の詩人の窓

月派の詩人ジュール・ラフォルグ(1860~87)の短い人生は月からの使者として
はかない光のなかにありました。月が生物に与える影響はいろいろみられますが、
人間にかかわるものでは、女性の身体の月経の周期や、満月には犯罪が増えるとか、
あるいは、精神病へのかかわりなどがありますが、学者が研究をはじめる以前から
文学者は直感的に、月の影響を知っておりました。ラフォルグが詩を書き始めた頃
同時期のフランスにはアルチュール・ランボー(1854~91)がおりますが、彼のいわば
直接的な、強い表現を太陽的とすると、ラフォルグの詩が月的なものにこ
だわっていたかがよりはっきりと際立ちます。

まずは太陽嫌いの詩ではじまります

「はじめに太陽に一言」

太陽よ!勲章とか綬褒章などをはり付けた粗暴な兵士、

下品な栽培者よ、知るがいいヴェスタに仕える処女たちにとって

いかがわしい猫目石の、月は、

たったひとつの大伽藍の薔薇形窓だが、


知るがいい彼女らも、ピエロたちも、巨石碑の尺取蛾らも

そしてゴモラの町が眠る 湖沼の白い睡蓮らも

また諦めでいつもの春のような

エデンの草をたべるすべての幸福な者たちも

おまえを憎悪していることを


___中略____


さあ 太陽神よ!だが、昂ぶった眼ざめの 神デヴァよ

見るがいい たまにはちょっとは 耽美主義者達のこのポールルワイヤル宗団を

彼らは冷たい 月のデカメロンの中で、

おまえの首にほかでもなく賞金をかける話をしているのだ。


たしかに、おまえはまだ美しい日々を持ってはいる、

だがそれにしては <万事空>の

あいかわらぬ実践者達の種族がふえている、

彼らは芸術と愛を夢見ながら 無機質集合体の遠い戸口へむかうのだ。


____中略____


おお時代のヴィジョンよ!罰せられすぎた者が、

ひえきった月を永遠に自分に接種するため

「おい! バカ言うな、大風呂敷め!」で

おまえの古くさい<生めよ、殖えよ>の説教を、返上するだろうときの!



少し序奏が長くなりましたが次は彼の月についての思い入れです

「上弦の月の連祷」

不眠症たちに
祝福される月、

羊飼いエンディミヨンたちの
白いメダル、

すべてのものがしりぞける
化石の天体、

サラムボーの
嫉妬深い墓、

偉大な神秘たちの
船出する埠頭、

聖母で処女
ディアナ・アルテミス、

ぼくらのいくつかの大酒宴の
聖なる見張り人、

トランプの賭 バカラの
凶兆、

ぼくらの眺望台での
ひどく倦んだ貴婦人、

蛍たちを
かきたてている媚薬、

最後の詩篇の
薔薇形窓 穹隆形、

ぼくらの贖罪の
美しい猫目石、

ぼくらの信仰の
仮繃帯所たれ!

大赦祭の
羽根布団たれ!

月のイメージは、冷たくて、変わりやすく、不合理で、邪悪さえ感じるけど
それでいて、ダンディーさは、太陽の野暮天とは比べようがないのです。
さいごに、人類が二足歩行になった理由について、いろいろ学者の説がありますが
一番説得力があるのは「月が遠ざかったからですよ!」という説です。
つまり地球から月が急に遠ざかったので、わが先祖達は、思わず立ち上がってしまった
という説ですが、いかがお考えでしょうか。みなさん今でも月は1年に4CMづつ遠ざかっております。
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