碧空の下で

人生の第四コーナーをまわって

映画「キャタピラー」を観た

2010-08-22 19:25:52 | 映画の感想
この監督の名前を聞くと、エロスと暴力の匂いがプーンとしてくるような感覚になります。そして反権力の旗印はいまだに鮮明です。ソ連が崩壊した後左翼がだらしなく方向性を失ってしまった中にあって、一貫して反体制の旗を振り続けているのは、彼の思想性が既成の左翼の政治性とは別の回路を持っているが故の強靭さであると思うのです。一時は連合赤軍のスポークスマン的な役割を果たしていたのではないかと思うくらい政治性を強く意識しているのは、彼の表現の一つの方法であり、映画を作ることと同じ同等の行為なのではないでしょうか。この映画に関していえば、彼の反権力、反戦の意志は表現されているのですが、そのモチーフが四肢を切断され聴力も失った男とその妻の人間関係、なかんずくエロスに焦点を当てているので、個人の内面を描きたかったのか、反戦を描きたかったのか、見終わってから考えてしまうような、作品の荒っぽさが感じられたのです。これが若松作品の特徴だといえばそれまでですが、ベルリン映画祭での金熊賞がもらえない理由かもしれません。主演の寺島しのぶの演技が銀熊賞を受賞したのですから、余計におしいなあと思うしだいです。もうすこしきめの細かい表現をすれば、納得する人は多いはずです。
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