碧空の下で

人生の第四コーナーをまわって

再ネパール紀行6

2010-04-03 20:46:53 | 再ネパール紀行

500m登って300m下るという、せっかく稼いだ高度を落としてまた登る。これがヒマラヤの歩き方です。高度順応のためには、それが近道なんですね。今日はいよいよ、マチェルモ4410m以上へ行きます。地元の者によると、4200mぐらいが死の境界線だということらしい。つまり、4040mのドーレでは高山病で死んだ人はいないが、マチェルモ以上では死者が出るので、その中間の4200mあたりがその境界線だろうと経験的に思われている。まさに42シニ線なのです。いよいよ本番なのです。9時にポルセテテンガを出発する。昨日谷底まで下った道をまた登るのは疲れる。谷間の日陰には雪が残っていて、気温が低いことを示している。登りにはちょうどよい気温なので、そんなに汗は出ないのだが、休憩が長いと身体が冷えてくる。

 

渓谷を挟んで向側の斜面に立つ水力発電所

ポルテセ村に電気を供給している

 

11:00にドーレに着いた。食欲は相変わらず無いので、ミルクティーを2杯飲む。昔30年前にプーンヒルへトレッキングに行った時も、体調を崩し3~4日間はミルクティーだけで歩いたことを思い出した。あの時のことを教訓として、今回は絶対生水を飲まないよう注意してきたが、今回は高山病の初期症状だろうか。それとも身体が山行になれていく過程であろうか。どちらにせよ、先のことは考えてもしょうがないので、ただひたすら歩くだけ、これが与えられた道だと覚悟は決めていた。あたり一面雪が残っている。この時期の天候は基本的には乾季ですので、晴れる日が続くのですが、高度が上がると、午後から雲やガスが出て、それが夕方には雪に変わったりします。しかし夜になるとまた晴れてくる。その繰り返しが今の季節の天候です。日本ですと、毎日天気図をつけて、明日の天気を予想しながら行動するのですが、ここでは、そんなことは必要ない。ガイドに言わすと天気予報なんてあってないようなもので、正確さにかけるらしい。雨は4月か5月にならないと降らないのだ。それだけで充分だ。土の道から岩の道になって、階段を登るようにして高度を上げていく。すでに森林限界をこえているので、岩と雪の風景に変わっている。思えばこんな風景の中に立つのは何年ぶりであろうか、晩秋の北アルプスや白くなった白山の室堂に行ったのはいつの日かもう思い出せないくらい昔のような気がする。こうして登っていると、あの頃に戻ったような懐かしい気持ちもわいてくる。緊張が疲労感の中に溶けていく自分を忘れ無心にただ歩く、登る、呼吸をする、それが、山へ来た理由だ。大自然のなかで、ちっぽけな命が生きている事を実感する。それが、山へ来た目的だ。2:40にマチェルモに着く。気温が低い0度近い。ロッジに入るとストーブに火が入っていて助かった。人数が少ないと、夜しかストーブの火を焚かないロッジが多いのです。それは燃料の節約なんでしょう。薪がここでは食料より高価なのです。ヤクの糞が燃料になっております。カラカラに乾かしたヤクの糞はよく燃えるのです。だから寒いロッジでストーブを囲んでいると、ヤクの糞がありがたい。炎に変わるヤクの糞は黄金に見えます。ヤクの糞こそ、暖房こそ最良のご馳走です。夕方になるとガスが立ち込めてきた。寒々とした外を見ながら、夕食はニンニクスープに浸したチャパチィーを半分だけ口に押し込んだ。それがやっとの食欲であった。

 


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