今年は何年ぶりかで雪の正月ですが、外は寒いので窓から覗く風景はなんと言っていいか、白い雪景色は見た目は寒々としていますが、その実、暖かい気分というか子供のころを思い出すこともあって、やはり四季の変化というのは心の年輪というか、思い出の積み重ねになっていまして、言ってみりゃ記憶のバウムクーヘンですな。特にこの齢になると真ん中がすっぽり抜けておりまして、顔を覚えているが名前が出てこないようになって、やがて名前を聞いたことがあるが、誰だったか分からないそのうち自分の齢も数えられないということになる。そんなこんなで、あたしゃ何をネタにするか浮かんでこない、コーヒーでも飲んで頭をすっきりさせて、と思うがなかなかどうして、最初の一発が出てこない、出るのはオナラばかりで、こういう時は体を動かして、頭の中をリフレッシュするのがいいと思いつきまして、雪どかし、をやってみることにした。身体は温まるしストーブの油代もいらない一石二鳥だ、これで頭が回れば一石三鳥だ。
八五郎 いやあ 寒いねこりゃ雪だよ、真っ白だね、ご隠居さん生きてるかい。
ご隠居 ああ、おかげさまで、くたばってはいないよ。おまえさんも相変わらずだね。
八 正月早々雪どかしかい。精が出るね。年寄りの冷や水とかいうけど
身体と相談してやんなよ、あとで腰が痛い腕がこるなんてことになるからね
隠 自分の家の前だけはね空けておかないと、出入りができないからね、まして
怠け者と思われたくないからね、しかしこの頃は雪どかしの作法も廃れたね
八 そんなことに作法なんかあるんですかい。
隠 知らないのかい、この頃の若いやつは常識がないね
いいかい、よくお聞き物事にはすべて作法がある。
その道の名人上手と言われる人の動きをよく見てみなよ
必ず作法にのっとってやっている。茶道しかり、書道しかり
剣道しかりすべてそうだ
八 へぇー雪どかしは何道ですかい
隠 決まってんじゃないか、雪道だ。
八 なるほど?・・
隠 そう思ったら、ちょいと手伝ってくれ、雪が固まって重いんだよ
こりゃ若いもんじゃないと・・あがらない・・
八 へい、作法に従いますとあげるのはは右からですか左からですか
隠 決まってるさ、相撲取りが四股を踏むときと同じで右からあげる
右が上がったら左だ。それをかかえてすり足で運ぶこれが作法だ
八 なるほどね。
隠 ご苦労さんでしたね。重いものを持つと汗をかくだろ、冷えないうちに
湯に入りなよ、初風呂の用意ができているからね。
そのあとは一杯やってくれ
八 ありがたいね、さすがご隠居、作法どうりだ。
隠 ああ、伊達に齢はとってないよ
そういうことで、二人風呂場へ行きます。
隠 風呂を使うのも作法があるのを知ってるかい
茶道の要領でな着物はこういう風にたたんでおく
手ぬぐいはこうして袱紗のように・・
風呂場の中では桶はこう持って三回まわして・・
どうだい、少しは分かったかい
こうして二人は風呂から上がってまいります。
八 それではご隠居さん、お道具拝見。
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