tokyoonsen(件の映画と日々のこと)

主に映画鑑賞の記録を書いています。

『アウトレイジ ビヨンド』

2013-07-29 21:53:00 | 映画-あ行
 前作よりこちらの方が面白かった。

 セリフを増やしたということだけど、その方が楽しい。

 
 大友のキャラクターは、やはり監督の分身なんだろうな。惹かれる。繰り返し繰り返し、今後も描いて欲しい。

 言ってみれば、守るものはなく、計画性もなく、欲という欲もない。策略というものがなくて、直観と感覚で行動する。頭は切れるが、そこには明らかに欠陥がある。恐怖がない。
 遺伝子レベルで(いわゆる恐怖遺伝子が)ないのか、それとも自ら穴をうがったか。その内幕は描かれないのである。

 愛嬌というのは、持って生まれるものなのかな。愛嬌は、わりあい大切だと思った。

 北野武監督、2012年、日本。


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『第七の封印』、『野いちご』、『処女の泉』

2013-07-28 21:02:51 | 映画-た行
 ユーロスペースにて。イングマール・ベルイマン3大傑作選。

 白と黒のコントラスト。『野いちご』の冒頭、夢の街のシーンと、『第七の封印』の最後、「死の舞踏」のシーンが好きだ。曇天で撮ったというこのシーンで、人物は空と丘の間でひたすら小さくて、踊っているのか踊ってないのか良く分からない。引っ張られているようにも見える。誰が誰だか見分けもつかない。絶え間なく引っ張られて、誰も彼も一緒だ。『野いちご』の夢の街では、光と影が一層つよい。『処女の泉』では光と影だけ見ていれば、抑揚が話を教えてくれる。柔らかい光が気持ちいい。

 そして、筋が分かりやすいこと。ラストがどれも、微笑ましいこと。この人はきっと、親切な人だ。
 そう思って、良かったと思った。


                


    


『風立ちぬ』

2013-07-27 21:37:36 | 映画-か行
 夏休みの子供たちで、映画館もわりと混雑。

 すごく久しぶりに、ジブリの作品を大画面で観た。
 『もののけ姫』以来だ。予告を観たら、観たくなった。ノンフィクションを下敷きにしていること、あと、主人公が女の子じゃないのも観たくなった理由の一つだ。女の子の話はもういいかなと。お、女の子じゃない!と楽しみにしていた。

 主人公の声(キャスト)がよくないっていう声が結構あるみたいだけれど、私は別に問題なかったな。庵野監督のことをあまり知らないので、顔が浮かんでくることもなかったし、そういえばそうだったなと、観終わってから思い出したくらい。むしろ、とつとつとした感じが主人公のキャラクターと合ってるなと、いたって満足していた。

 主人公のキャラクターと言えば、もちろん零戦の設計者なんだけれど、自分の世界に没頭して行く多少現実離れしたエゴイストぶりを、あれだけさわやかに描けるのは、やっぱり手腕でしょうね。まったく良い人です。いつもの女の子もそうだけれど、そういうキャラクターを描いてくれて、さらに観ていて面白いのだから、ありがたいものです。これは才能と特権と言える気がする。

 ただ一つ疑問もある。
 大正生まれの人たちが、あんなにチュッチュ、チュッチュ、キスするもんだろうか。何かと言えば、キスをする。主人公はドイツに研修に行ったりしていて、ハイカラで外国文化に慣れていると言えばそうだけれど、それでもちょっと他の場面にそぐわない感じもした。二人の情感を描かなくてはいけなくて、たとえばそういう風にしか描けなかったんだとすれば、そこにこの作品の限界を感じてしまう。なんてね。子供が見るには、しすぎだし(笑)。

 宮崎駿監督、2013年、日本。

     
     

『ベルベット・ゴールドマイン』

2013-07-26 09:43:17 | 映画-は行
 70年代にグラム・ロックなるものが世の一角を席捲したことは知っている。そのきらびやかなタイフーンにちょっと遅れてきた世代の私は、デヴィット・ボウイを、『ラビリンス/魔王の迷宮』(ジム・ヘンソン監督、ジョージ・ルーカス製作、1986年、米)で知った。その後、『戦場のメリークリスマス』(大島渚監督、ジェレミー・トーマス製作、1983年、日英豪ニュージーランド)かな。これはビデオかテレビで観たんだったかなあ。

 いつの世もいつの年代もいつの歳も、イメージに支配される一角があることは大体知っている。支配されてるのか支配しているのか分からないけど、頭の先からつま先まで、お湯につかってみれば普通の人間なら溺れるわけである。でも宇宙人は溺れない。そういう映画だった。それで私は結構好きだ。

 トッド・へインズ監督、1998年、英米。第51回カンヌ国際映画祭芸術貢献賞受賞、英国アカデミー賞衣装デザイン賞受賞。

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『キートンの大列車追跡』と『パームビーチ・ストーリー』

2013-07-24 20:15:51 | 映画-か行
 シネマヴェーラで二本立てで観た。

 面白かった!いやいや!本当に両方とも面白かった。割と混雑していたけど、お客さんは皆(多分)声に出して笑ってたね。どうしてこーんなに面白いんだろ。やっぱり一人で観るより、大勢で観た方が面白いね。ついつい一人で観がちだけどね。一緒に行く人がいなかったりでね。今回は、私は旦那と一緒だったので、良かった良かった。でないと興奮の行き場に困るね。隣の人と握手しちゃうかもね。

 『キートンの大列車追跡』は、バスター・キートン監督、1926年、アメリカ。

 『パームビーチ・ストーリー』(『結婚5年目』)は、プレストン・スタージェス監督、1942年、アメリカ。ほんと洒落てる。出てくるのは変な人ばっかりで、だけど楽しい。役者さんが面白いなあ。

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『ルルドの泉で』

2013-07-22 20:24:28 | 映画-ら行
 ジェシカ・ハウスナー監督、2009年、オーストリア・フランス・ドイツ。

 奇蹟の地ルルドを訪れる観光ツアー。
 平凡で、この上なく日常的なその進行具合を見ていたら、中学の修学旅行の夜、宿の玄関口に脱ぎ捨てられていた一面のスリッパを思い出した。
 大量の青いビニール・スリッパ。わくわく感の前に立ちはだかる、偽物の海の光景。

 登場人物たちの、距離感や、口に出す言葉や、いちいちの動作が浮き上がってくる。ラストまで観れば、鰯の群れみたいに一斉に浮かび上がってくる。美しい田舎の風景。距離感は、物理的距離でもあった。

 この映画のように、出来れば品良くありたいと思う。無理だろうけど。

 この世に奇跡はあるんだろうか。
 あってもいいと思うけど、彼女にとってはめでたしめでたしでは終わらない、ただ一瞬の曲がり角。その描き方は、無駄がなくて衝撃的。そして常に人の裏や真意を探ろうとしている私たちを描いているみたいだ。基本的に見るということはそういうことだと、言われてるみたいだ。私がこの映画を見ているみたいに。 

 主演の、クリスティーヌ役のシルビー・テステューが、すばらしかった。

 第66回ベネチア国際映画祭で国際批評家連盟賞ほか5部門受賞。ワルシャワ国際映画祭グランプリ。ヨーロピアン・フィルムアワード最優秀女優賞受賞。

 
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『映画 立候補』

2013-07-21 21:02:52 | 映画-あ行
 今日は、参院選投票日。おととい期日前投票をし、だからという分けではないけど、その後この映画を観る。

 泡沫候補と言われる、選挙の色物候補者たち。2012年大阪市長選挙時のマック赤坂に密着しつつ、他の立候補者たちを追いかけ、手術のため立候補を断念した落選15回経験者の羽柴秀吉、活動家外山恒一などにインタヴュー。

 300万円の供託金を出し、没収されるというのに(一定数の票が入らなければ没収される)、それでもなぜ立候補するのか。

 結局よく分からなかった。説明できるのなら、彼らはとっくにしているのかも。世界の見え方が、世界のとらえ方が、私や大多数の人とは違うんだろうなという気がうっすらとした。彼らは堂々としてるし、なにより正攻法だ、とは言える。やり過ぎな感は否めないにしても。
 テレビの特番のような形で、特番では出来なそうなことを、特番のようなものとして作った映画、という感じだった。面白かった。

 ひとり、外山恒一氏が論理的で、常識人なのだった。

 藤岡利充監督、2012年、日本。


     

『台湾アイデンティティー』

2013-07-20 08:23:50 | 映画-た行
 台湾における日本統治は、1895年(明治28年)から1945年(昭和20年)までの50年間続いた。日清戦争の終戦から、第二次世界大戦終戦までだ。その間に生まれ育った人たちは、日本語教育を受け、日本人として育てられた。「日本語世代」と呼ばれる。例えば1895年生まれの人は、50歳になるまで日本人だったわけである。
 その「日本語世代」の6人を追った、ドキュメンタリー。

 台湾と日本の歴史を、知らないか失念している私たちに、知らしめてくれる。そしてそれ以上に、国家とは何だろう?という疑問が湧く。今さら素朴すぎるかもしれないけど。

 誰か運命について説明してくれる人はいるんだろうか。「かつての場所」に長く居たがる人はいない。すでに年老いた人たちの、目に浮かぶ涙と、厳しい横顔と、笑顔の記録。

 酒井充子監督、2013年、日本。

 
     

『ワイルド・スピード EURO MISSION』

2013-07-17 20:00:42 | 映画-わ行
 面白かった。スカっとした。最近ヒーローものも、アクションものも、ちょっと暗いのが多いけど、全然そんなことなし。

 カーアクションは、いつ見ても凄い。ほんとに??まじで?ギア・チェンジ、バン!バン!ってめっちゃ速い!!あ、車が飛んだ!人間も180キロ位のスピードの車から、180キロ位のスピードの車に飛び移ってる!!轢きそうで轢かない!!!あっ戦車が!戦車すごい!!!戦車!すごい!!!!!でももっとこっちすごい事に!

 という合間に、人間対人間の格闘シーンも、凄い。

 ギアの音と、エンジンの音、そして拳の音が耳の中でがなる。
 IMAXで観て良かったです。私は(ケチって)「普通でいい」と言っていたんだけど、旦那の熱意のIMAX。本当に良かったと思う。ありがとう、旦那。

 ストーリーは、これまで(第1作から第5作まで)何となく足元おぼつかない感じがしていたのが、集大成。ここへ来てようやく一つにまとまった感じが。主題が決まって見やすい。登場人物青少年限定の映画だったのが、これからは幅広い年齢層へ広がる大きな土台が見えてきた!ということは、先が見える。光が見えます。
 そして今回はアメリカ合衆国の国家権力をバックにする。もうやりたい放題、怖いものなし。街の走り屋から、集団強盗、追われる犯罪者、そしてとうとう、国家権力。スケールががくんと大きくなった。敵も大きくなってるけどね。
 けれども登場人物たちの類まれなる才能と、類まれなる純朴さは、どこまでも裸一貫の拳と、車一台のアクロバットに集約される。

 ご都合主義も、どうでもいい。笑いとばせます。めっちゃいい笑顔で親指を立ててウィンクするほど。

 あと、最初から最後まで、ビン・ディーゼル演じるドミニク・トレットがガレッジセールのゴリにしか見えませんでした。

 
 ジャスティン・リン監督、2013年、アメリカ。
 
   

『ハッシュパピー バスタブ島の少女』

2013-07-13 19:55:11 | 映画-は行
 2週間ほど前に観てから、ずいぶん日が経ってしまった。

 面白い、と、面白くない、の間くらいだった。

 アメリカ、ルイジアナ州の南端で撮影されたという。
 低地で温暖化の影響を受けやすく、またハリケーンの来襲や経済格差など、当地の現実の問題を根っこに置き、そして現実の土地を舞台にして、神話的な物語が語られる。
 数々の賞を受賞した、ハッシュパピー役の女の子がほんとうに力強くかわいらしいので、まるでジブリのヒロインを見ているようでもあり、まさに神話的な強度のかわいらしさと言った感じ。
 
 面白かったのは、このバスタブ島の住人は「壁の向こう側」と完全に切り離されている訳ではなく、独自の生活をしつつも、何かしらの経済活動をし、住民登録され、「壁の向こう側」と同様、流通の一部にいるということだ。ハッシュパピーのぶかぶかの長靴を見ながら、そんなことを思っていた。バスタブ島の祝祭性と生命力は、切れ切れに表されているので、ドキュメンタリー風でもあり、幼い少女の記憶の中とはこうゆうものかもしれないな、と思う。
 くっきりと登場するのは、巨大イノシシのような有史以前の動物、「オーロック」。もちろん「架空」で、でも細部まで本当に存在するような存在感だ。

 オーロックに象徴される、はっきりとした輪郭を持つ想像力の世界と、一つに繋ぎ切れない現実の世界を行き来しながら成長して行く、少女の物語という感じだった。

 監督、共同脚本、音楽、ベン・ザイトリン。2012年、アメリカ。第65回カンヌ国際映画祭カメラ・ドール受賞、第28回サンダンス国際映画祭グランプリ(審査員大賞)受賞、などなど。