tokyoonsen(件の映画と日々のこと)

主に映画鑑賞の記録を書いています。

『アイ・ウェイウェイは謝らない』

2014-07-31 22:19:28 | 映画-あ行
 上映を見逃したので、DVDで観た。

 艾未未(アイ・ウェイウェイ)は、北京出身の芸術家。
 Wikipediaには、現代美術家・キュレーター・建築家・文化評論家・社会評論家、と肩書きがある。

 関係ないけど、Wikipediaに寄付の要請が出て、寄付をしようとすると、いつもクレジット決済でつまづく。どうして。他では使えているカードなので、理由が分からない。「ダメでした。」と最後に言われるたんびに、なんだかがっかりする。そうじゃないんだけど、こっそり盗み使ってるような気にもなるので、どうにかしておくれ。

 
 話は戻って、アイ・ウェイウェイ。
 
 映画の中の彼の「作品」は、それが政治的なものであっても、政治的に第三者である私(他国人なのだから、第三者だろう)も見入ってしまう。メッセージに引きつけられ、シリアスでありつつ、ユーモラスでスマートで、愛しささえ感じる。過激なんだけど、ヒステリックじゃない。

 洗練されつつ、愛される。彼の容貌だけじゃないだろう。 


(想像だけど)本来は、ものすごく政治的ではない人が、政治的な物事にものすごく、コミットしている。中国政府はなぜそんなに、手足や思考を縛るのか。
 現代中国の知識人のうちの、大きな一人、アイ・ウェイウェイのドキュメンタリー。


 アリソン・クレイマン監督、2012年、アメリカ。サンダンス映画祭審査員特別賞、ハーグ映画祭学生観客賞など受賞。

   
     アイ・ウェイウェイは謝らない [DVD]




『エレニの帰郷』

2014-07-29 23:18:13 | 映画-あ行
 劇中劇、母エレニ「役」の俳優さんが、ある瞬間から本物の母になったり、物語が突然現在から過去へ飛んだりする。

 SF的と言えばSF的。
 サイエンス・フィクションではないかもしれないけど、人の心の動きはそういうものかもしれないなと思った。思いは飛ぶと。私たちは昔を思い出している時に、どこかの次元で、もう一度それを演じているのかもしれない。
 SFだって人が考えていることなのだから、同じようなものかもしれない。

 この作品を遺作にして亡くなってしまったテオ・アンゲロプロス監督だけど、素晴らしい遺作だと思う。
 巨匠らしい、堂々たる優雅さ、そして自由さ、と言うんだろうか。俳優さんも素晴らしい。


 原題は、『Trilogia II: I skoni tou hronou』。ギリシャ語が分からないけれど、英語訳だと『The Dust of Time』らしい。

 エレニを思い続けるヤコブが、おどけて言う。「時の埃は降り積もる、大きなものにも、小さなものにも」
 監督がいなくなった今も、時の埃は降っている。テオ・アンゲロプロスの歴史感覚は、大きなものから小さなものまで内包して、ゆったりと切なく流れて行き、物語とは関係なく泣きそうになった。母、母、母。劇なのか、本物なのか。大いなる他人への慕情もしかり。

 字幕は池澤夏樹さん。
 

 テオ・アンゲロプロス監督、2008年、ギリシャ・ドイツ・カナダ・ロシア合作。


    エレニの帰郷 [DVD]

『トランセンデンス』

2014-07-19 20:55:50 | 映画-た行
 単刀直入に言うと、レベッカ・ホール演じる妻に振り回されっぱなし、という話なんじゃないだろうか。
 夫のウィル(ジョニー・デップ)が、「アップロードして欲しい」と言ったわけでもないし。

 二度殺される身にもなったらいかがか。ジョニー・デップはそれでも優しく(何かが欠けた優しい人、というのが定番である)、二度目は妻を看取るわけですが(ネタバレすみません)。

 それはそれで良い話です。

 そこで大作などと言わずに、B級SF=「ある夫婦の話、しかし設定がちょっと奇天烈」という感じだったら、私は楽しめたような気がする。そうだったら多分面白いです。
 


 ところで製作総指揮のクリストファー・ノーランの書いた記事こちら→ WSJ7月9日「映画館は生き残る」
 
 映画館は、スマホとの差別化に汲々とし、デジタル化により公共テレビのような性質を持つ(byクエンティン・タランティーノ、客の入りによってチャンネルをすぐに変えられる、チャンネル権は映画館主か映画配給会社)。
 その後、とびきり大きく、とびきり美しい場所として、人々に壮大なスペクタクルの非日常を提供するようになるだろう。スペクタクルだけではない、人々を何時間も惹きつけておける独創的な作家を生み出す土壌にもなるだろう。

 
 …みたいなことを言っている。

 映画は常に、another storyである。
 製作側が組み換え、組み直し、解釈をし直し、または解釈を創造する、(ここではない)ある物語だ。観客もそれぞれに解釈を創造しているので、隣の人が何を思って観ているのか分からない。
 面白さで言えば、壮大だろうと壮大じゃなかろうと、独創的だろうと独創的じゃなかろうと、私にとってはどちらでもいい気がする。だから映画館も、とびきり大きくもとびきり美しくなくてもいい気がする。
 クリストファー・ノーランが「それが良い」と言ってるわけではないけど。あくまで予測なので。どうでしょう。



 『トランセンデンス』、ウォーリー・フィスター監督、2014年、アメリカ。

    
  
    

『ブルージャスミン』

2014-07-16 22:09:57 | 映画-は行
 ブルージャスミンとは、憂鬱なジャスミンということらしい。

 話の筋とか結構どうでもよくて、主演のケイト・ブランシェットばかりが際立っていた。彼女の表情や立ち居振る舞いを見ているだけで、あっという間に終わってしまった。しかしオシャレな映画だのう、終わり方とか。

 ただ、なんだかしょうもないことばかりが出てくる。
 
 ケイト・ブランシェットが、オーストラリア、メルボルンの出身なことを初めて知った。

 そして、あんまりな筋立てなので、ウディ・アレンが嫌いになりそうになった。ジャスミンの独り言の中に巻き込むのはやめて欲しい。

 それはただただ哀しいのだった。



 ウディ・アレン監督、2013年、アメリカ。第86回アカデミー賞主演女優賞。


    

『フィルス』

2014-07-03 16:47:09 | 映画-は行
 『フィルス』を観ていて白眉だったのは、後半四分の一の、主体がどんどん変わるところ。

 主体というか、視点、主観がどんどん変わって行くのでジェット・コースターに乗ったみたいだった。それで事件は解決するが、人の性は解決しない。

 前半もおとぎ話のようで、作りこまれたブルース・ロバートソン(ジェームス・マカヴォイ演ずる)の脳内に私たちは案内されるんだが、それはそれで、ほぉ、こんなところが、と楽しく観覧していればよい。ただそれではどこへも行けず、舞台のエディンバラに観客的閉塞感が霧のように立ちこめはじめる頃、ぐんぐんとジェット・コースターは加速する。


 ああ、こんななってたんだ。


 その昔AV女優になると言ったAちゃんが、自分の秘部を「こんななってるんだ」と思って観てね、と言った時と同じような感じで脳内が稼働した。

 妄想を刺激するお話である。


 主演のジェームス・マカヴォイは、青年からまったくのおじさんに変身しての熱演だったが、さわやか青年の『つぐない』だって、実は青年たちの妄想のお話である。そういうのが好きなのか。アンジェリーナ・ジョリーに教育されるあの映画も見よう(なんというのか忘れた)。結構好きなのかもしれないな。誰かに似てる。原作は、『トレインスポッティング』(主演ユアン・マクレガー、1996年)のアービン・ウェルシュ。ジョン・S・ベアード監督、2013年、イギリス。


 
   フィルス    つぐない [DVD]    トレインスポッティング 特別編 [DVD]