ひととき、世事を離れる。”五月雨”の17日午前、わが夫妻は、孫の運転で奥飛騨・穂高に向かった。高山市を通過して山道をひたすら走る。新穂高ロープェイは雲の中。終点に到着したが、ガスに包まれて何も見えない。北アルプスの山々を眺めるのが楽しみだったのに。昼めしを済ませて浮かぬ気分で山を下る。宿に着くや運転疲れの孫はごろりと横に。貴重な休暇を我々のために。何か済まない気がした。だが、夕食は年寄りには食いきれぬ御馳走を代わって食ってくれた。その元気さにほっとした。
翌18日は”五月晴れ”だった。高山市の散策を始めたが、前日の無念さが消えていない。「一体、何しにきたんやろ」「昨日が今日みたいな天気やったら」。胸の内でぼやいていた。孫がこの気配を察したのだろう。いきなり声を出した。「もう1回、穂高に走ろう!」。私の心ははずんだ。「よっしゃ、行こう!」。再び山道を走る。陽光に映える新緑が快い。展望台から雄大な北アルプスの山々を眺めた。念願達成!老いた年金生活者でも、つつましく暮らしておれば楽しいことに巡り合えるのだ。公金を使って豪勢な日々を過ごす東京の知事らは楽しいのだろうか。