60年以上も前か「黒い花びら」という歌謡曲が流行ったことを思い出している。歌手は水原 弘。1959年度のレコード大賞受賞曲だそうだ。何でこんなことを思い出したのか。最近、発覚した安倍晋三前首相らがかかわった「桜を見る会」(2019年)の黒い疑惑が念頭にあったから、つい「黒い花びら」が浮かんできただけである。この歌曲が「桜を見る会」なとど全く無縁であることはいうまでもない。「黒い」のは「桜を見る会」、とくにその前夜祭(主催、安倍晋三後援会)に関する資金をめぐってであった。会場は東京都内のホテルニュ―オ―タニ、地元支援者800人の規模、会費1人5000円だった。だが、実際の飲食費は1万1000円、この差額はどうしたのか。これが黒いのだ。安倍氏側が補償した場合は政治資金規正法違反(不記載)の罪に問われることになるのだ。
安倍氏の国会答弁は「(前夜祭)について、すべての費用は参加者の自己負担で支払われており、安倍事務所や安倍晋三後援会としての収入や支出は一切ない」「収支報告書に記載する必要はない」との説明であった。規正法違反などの疑いで安倍氏を刑事告発した法律家は「前夜祭の疑惑が大問題になっていたにもかかわらず、安倍氏側が虚偽の収支報告を提出したとすれば極めて悪質だ」と述べ、さらに「官房長官として安倍氏の主張を追認してきた菅首相の問題でもある。補填した資金をどこから拠出したのか解明すべきだ」と述べている。つまり、補填の原資の出所はどこだ、それを聴いているのに安倍氏側は口を閉じている。そこが黒いのだ。
桜の花が黒いはずはない。シーズンになれば、あるときは爛漫と、あるときは楚々と、世の人の目を楽しませてくれる。私どもの近くには淀川(旧)を挟んだ桜ノ宮という地域がある。読んで字のごとく、桜が咲き競う。大阪城公園もだ。わがマンションの傍にある城北運河に沿う遊歩道にも桜並木が続いている。「見る会」など、近所の人たちが勝手にやっている。にぎやか酒宴の場に出くわすことしばしば。総理大臣や政治家が何もしなくても、季節がくれば花は咲き、人は見て楽しむのだ。黒い野心を持った政治家の出る幕ではない。