「右向け右」の風が吹いている。自民党は4月末に「憲法改正案」を発表した。それによると、戦力不保持を定めた現憲法の9条2項を全文削除、これに代わる新2項で「自衛権の発動」を入れ、新しく9条の「二」を設けて「国防軍」の保持を規定している。草案のQ&Aでは、現行の9条2項の削除によって「自衛権行使の憲法上の制約」はなくなり、集団的自衛権行使が可能になると説明。さらに9条の「二」の3項に「国防軍」の「国際平和活動」への参加を規定し、その際の武力行使も可能だとしているという。
この改憲、どの国に指図されているのか、多くの国民はうすうす感じている。自民党でも他の政党でもそれは分からぬはずはなかろう。集団といっても日本が手を組んでいる同盟者はアメリカだけである。集団的自衛権の行使とは、日本が攻撃されていないのに、アメリカが海外で起こす戦争に、日米同盟の名において戦争に参戦することになるのだ。国防軍なるものは、米軍の指揮下にある自衛隊を、さらに攻撃性・侵略性の濃い軍隊にすることだろう。安倍自民党総裁は「軍事同盟は血の同盟」と言ったそうだが、これで日本が一人前の国、普通の国になるというのか。どこか狂っている。
民主党も公明党も日本維新の会も、集団的自衛権行使を評価し容認している。出来立ての日本未来の党は何も言わない。どの党にも「右向け右」の逆風に逆らう勇気や見識が見えない。日米同盟を絶対化し奉っているからだろうか。自衛とか国防だとかを言うのなら、国民の命と暮らしを考えろと言いたい。震災の復興、放射能被害のこと、雇用不安にさらされる労働者、就職できない学生のこと、危機に面した農業のこと、基地被害、米軍犯罪に苦しむ沖縄のこと。守るべきことが一杯あるではないか。これらの保障は現憲法を守ることだろう。海外で戦争する国など誰も望んではいない。