大阪の活性化ということがよくいわれる。多くの人が職・住を失い、川岸や公園にブルーテントが並ぶ。商店街ではシャッターを下ろしたままの家が目立つ。子どもの給食代が払えない家庭、学費がなくて中退する高校生の話も聞く。銀行の貸し渋りで中小企業が倒産している。消費の落ち込みが甚だしい。こんな有様を見れば誰でも活性化を望む。その道はどこにあるのだろうか。関西財界のプロジェクトによる湾岸開発,高層ビルや高速道路をどんどん増やすことだろうか。それはないだろう。経済の大半は家計が占めているという。家計が温もり暮らしがよくなれば人々の足は消費に向かう。内需が拡大する。雇用が広がる。経済再生につながる。これが活性化ということだろう。
橋下大阪府知事は逆の道をめざしている。大阪府庁舎のワールドトレードセンター(WTC)への移転、その周辺での都市構想のことである。これが「咲洲・夢洲地区(人工島)開発の起爆剤」となり、人、モノ、カネが動く、最大の内需拡大策だというのである。財界の意図の代弁だろう。工事を請け負うゼネコンは潤うだろうが、広範な市民、中小企業にまで及ぶとまではとても考えられない。大体、大阪府の関西空港関連の巨大開発事業も、大阪市の湾岸開発事業も大失敗しているのである。府・市それぞれ5兆円もの借金を背負う主因はこの開発だったのである。それでも懲りずに前途不明の大開発をなぜやろうとするのか。知事は財政非常事態だといって医療、福祉、教育、文化を削ってきている。活性化とはまったく逆ではないか。
今日の貧困は不可避ではなかったはずである。大企業の横暴を野放しにする派遣労働の規制緩和や社会保障の切り下げなどに象徴される自公政治・構造改革がもたらした政治災害なのである。アメリカ依存型で、国際競争力を煽り、労働者をこき使い、内需を犠牲にして外需だけで稼ぐ、こんな歪んだ経済政策なるが故にアメリカ経済危機の大波に脆かったのではないか。その反省も転換の姿勢も見られない。麻生首相の施政方針演説には「安心と活力」の言葉が出てくるが空しいものだ。「景気回復」の言葉はあっても「外需頼みから内需拡大へ」は語らない。国民の痛みが分かっていないのだろう。この政府には活力はない。大阪と日本の活性化のためには府民、国民が連帯して政治を変えるしかない。