明日の都知事選を気にしながら話そう。30年前は大阪市役所も闇の中にあった。覚えている人はどれほどだろうか。市財政局の課長代理が514万円の公金を、架空のナイトクラブの口座に振り込ませ、競馬、株、ホステスへの贈り物、自分のマンション代に使っていた。この事件には市会事務局、市長室、環境保健局も関与していたといわれる。建設局の元課長は、高級料亭に与党市会議員らを接待、店に出させた商品券、ビ―ル券を現金に換え、自分の口座に振り込んでいた(400万円)。ツケは市土木技術協会という外郭団体にまわしていたという。
市の各局理事者は与党市議を、座るだけで2万円、一晩で20~30万円もするキタ、ミナミの高級料亭、クラブに接待する。「夜の勉強会」と呼ばれていた。議員だけの豪勢な飲み代も必要経費で落とされた。懇親会の名で労組幹部の接待にもまわされている。腐敗は悪臭を放つ。市民は怒った。マスコミも動く。「市民オンブズマン」「市役所見張り番」の人たちが監査請求、損害賠償を求めた。「大阪市公金詐取・不正事件 黙ってへんで市民の会」が幅広く結集された。市役所の中にも市政刷新をめざす新しい労働組合が結成される。昇格、昇任などでの差別に屈しない勇気と良心の発露だった。
しかし、市幹部と自、公など与党、労組との癒着、馴れ合い、この構造的体質は根強い。職員36人の処分だけで幕引きが図られたと聞く。だが、闇の市役所にも光が射し込んだ。浄化能力を発揮したのは、市民と心ある職員であった。この間の経緯は『大阪市役所のナカは闇(初村尤而・日本機関紙出版センタ―)』が詳しい。あの時期、大阪市は「行革大綱」を策定し、保育所、保健所、病院などを見直すとしていた。市民サ―ビスの切り捨てにつながる。闇も晴れた2011年に登場した橋下市長は、これに輪をかけたような「保守的改革」を強行した。自民党も舌を巻く維新政治の出現だった。