「権利幸福嫌ひな人に、自由湯を飲ましたい、オッペケペーオッペケポーペッポー、固い上下の角取れて、マンテルズボンに人力車、意気な束髪ポンネット、貴女に紳士のいでたちで、うはべの飾りは好いけれど、政治の思想が欠乏だ、天地の真理が分らない、心の自由の種を蒔け、オッペケオッペケペッポーポー」。明治20年代、中江兆民の書生をつとめ、大阪の落語家の弟子でもあった川上音二郎が、自由民権思想と社会風刺をからませて歌ったオッペケペー節、その歌詞の一例である。この俗謡は一世を風靡、明治時代の流行歌だといわれたそうである。私はとくに音二郎を勉強したわけではない。だが、この一事を見て感ずることがあった。社会を見つめ、庶民を思い、真実を語れば喝采をよぶ。その”芸”の伝統は生き続ける。
22日の夕刻「日本共産党街頭トーク」をやるとの知らせがあった。型にはまった演説会ではなさそうだ。ところは京阪電車・京橋駅前。漫才師の経験もある清水ただし大阪市議(参院大阪選挙区予定候補)はハッピ、ハチマキのたたき売り姿。大阪市議,府議を相手に盛んにつっこみ、市政、府政の問題点を聞き出す。市,府議が軽妙に大阪弁でしゃべる。つぎの相方は山下芳生参院議員、青年時代は素人なのに政治漫才のボケ役が抜群にうまかったことを思い出した。後期高齢者医療制度、雇用対策、普天間基地問題などがやりとりされる。笑いと拍手が絶え間ない。それほどの打ち合わせはやってないらしい。だが、人の心を大切に、政治信条に確信し、わが意を伝える、その研鑽・努力の積み重ねがあれば即興も可能なのだろう。
現代社会の矛盾に正面から向き合い、話芸をもって「自由民権の思想と社会風刺」の活躍を続けている集団がある。笑工房という。13日夜「笑って笑って元気もりもり団結寄席」に出かけた。漫談『あこがれの労働三権』。落語『政やんのリストラ』『21世紀は組合だ』『ストップ・ザ・医療破壊』が演じられる。それぞれの演者が憲法や労組法、労基法の条文を暗誦しながら基本的人権を、民主主義を語る。聴衆の爆笑を誘いながらである。原作者の苦労も並大抵ではなかろうが、語り手の政治・社会を見る眼の確かさ、主題への自負、芸への心意気を感じる。民衆の中で培われた文化はどの世界でも新鮮に生きている。そう思うと心強い。