明日につなぎたい

老いのときめき

夢のまた夢か

2007-11-30 13:50:15 | 日記・エッセイ・コラム

 

 昨29日午前、孫娘の”発表会”があるので小学校に行く。仕事で都合がつかない両親の代役である。演目は音楽劇”オズの魔法使い”。役をあてられた子たちの台詞は一言一句の間違いもなかったようだ。朗読調に聞こえたのはやむをえないだろうと思った。全員が一生懸命、口を大きくあけて歌う。可愛く微笑ましい。稽古を重ねてきた子どもと先生たちの努力をねぎらいたい。退場するときの混雑のなかで、孫の姿を見かけたので大声で名を呼んだ。嬉しそうににっこり、ハイタッチして別れた。とにかく子どもの集まるところに身をおくと自分の気持ちが明るくなる。楽しく平和なひとときの現実であった。カメラを忘れたのが残念。夜、お母さんに謝った。

 

 学校を出たその足で、北区・梅田にある出版社を訪ね、旧知の編集者と話を交わす。用件が早くすんだので時間はたっぷり、もしかしてチャンスがあればと、近くの映画館によってみた。かねてから絶対に見るぞときめこんでいた「ALWAYS続三丁目の夕日」が狙いである。グッドタイミングだった。窓口に立ったのは開演5分前、空席ありという。”敬老パス”のおかげでチケットは千円。映画は前評判通り上出来。涙腺がゆるみっぱなしだった。もちろん悲しいのではない。快い感動で胸がふくらむのである。助け合い、支えあって生きることの素晴らしさが伝わってくる。人情の世界こそ人間の住むところだ。モノやカネに勝るのは人の心だ。よく分かる。政治・カネで汚れ、荒んだ人物には必見を薦めたい。

 

 映画の一こま。”売れない作家”が芥川賞を狙って気力をふりしぼる。慕いよる子どもや恋人の幸せのためだ。近所の人は大人も子どももこぞって応援。候補作品に選考され、三丁目は万歳ムード。だが最終結果は不合格。子どもを奪いにきた大金持ちの父親は「それが才能の限界だ、実力だ」と作家を罵倒する。親友の町工場主が、作品の載った文芸誌を手に立ち上がり「これを読まずにそんなことを言うのか。俺は泣いたぞ」と怒鳴る。並み居る人々が本を取り出し、買って、読んだ、素晴らしい、と賞賛する。この場面が圧巻だった。ブログを続け、それが出版物になるかも、そんな立場の私にとっては羨ましい限りだ。映画というフィクションの世界でのこと、夢のまた夢だとは承知の上である。


現代の”謀叛論”

2007-11-24 17:29:43 | 日記・エッセイ・コラム

 

 なぜか、徳富蘆花の「謀叛論」に惹かれた。昨今の政治の世界の出来事があまりにもひどいので、不快指数が上がる一方。いつもなら不肖、私なりの「論陣」を試みるのだがその気になれない。正直なところ感情が先行し、怒りと抗議をぶっつけたい気分だった。それが「謀叛論」につながったのは、たまたま読み始めていた岩波新書の「芥川龍之介」(関口安義 著)から「『謀叛論』の波紋」という一節を見つけたからである。「謀叛論」とは蘆花が1911(明治44)年2月1日、第一高等学校で行った演説の題目、その草稿のことである。この前年1月の幸徳秋水らが明治天皇の暗殺を企てたという、いわゆる大逆事件判決にたいする批判演説である。演説は幸徳ら12名の処刑から僅か一週間後であった。

 

 「企てた」というだけで、実行されたわけではないのに死刑判決、即座の執行。まさに想像を絶する圧制、暗い時代だった。ものを言うのにどれだけの勇気が要っただろう。関口氏の著書にある、蘆花の演説草稿の一言一句を紹介させてもらう。「強制的の一致は自由を殺す、自由を殺すは即ち生命を殺すのである」「謀叛を恐れてはならぬ。新しいものは常に謀叛である」「我々は生きねばならぬ。生きる為に常に謀叛しなければならぬ」。よくもここまで。感服する他はない。「謀叛」とは物騒な暴力・クーデターではない。人には自由に生きる権利がある、そのために旧体制を変え新時代をめざすということだろう。今それを求めたからといって罰せられることはない。たしかに「謀叛」は恐れることではないのである。

 

 ぶざまに崩壊した安倍内閣のあとを継いだ福田政権のもとでなにが露呈したか。元防衛庁長官、トップ官僚が、軍需専門商社(山田洋行)の接待攻勢の的になっていた軍事利権疑惑である。何百回ものゴルフ、度をこした宴席、それでも利便をはかったことはないとの言い分が通用するだろうか。醜い。テロ特措法は失効し自衛艦は帰国したが、政府はアメリカの要求には従順そのもの、「給油活動」再開のための新テロ特措法成立を狙う。いい加減にしろと言いたくなる。未遂とはなったが、民主党を抱き込む「大連立」の画策も表面化した。政府税調は消費税増税を打ち出す。先般の参院選は、自公政治にたいする国民多数の謀叛だった。日米同盟絶対論は世界の流れに反する。ストレートな謀叛が起こっても当然の時代ではなかろうか。


小沢・民主党の怪

2007-11-07 17:18:21 | インポート

 

 野党第一党の民主党。寄り合い所帯だとはいえ、あまりにもだらしないのではないか。4日、小沢代表がいきなり辞意を表明した。自民党の福田総裁(首相)との党首会談で協議した自・民「大連立」が党内で拒否されたことが理由だそうである。安倍前首相が突如として政権を投げ出したのはつい2カ月余り前。夏の参院選に示された「自・公政治ノー」の民意に抗しえなかったからだろう。こんどは小沢党首の辞意表明である。自・民党首の続けざまの辞任、国民の目にはどう映っただろう。この夏、民主党は「自・公政治ノー」の民意を味方に「政権交代」を掲げて参院選に大勝した。この党の代表が、なぜ「密室」で「大連立」を協議したのか、不可解だ。民意無視の公約違反だといわれても仕方あるまい。

 

 同党の幹部、役員たちの挙動も不可解に見えた。小沢氏の「密室談合」にたいして一言の糾明もなく容認している。小沢氏に「民主党の政権担当能力は疑問」「総選挙での勝利は厳しい」とまで言われたのに反論もない。ただ驚き慌て「もう一度、先頭に立って欲しい」と、ひたすら懇願、慰留につとめる。情けない。こんな姿を見せつけられた国民は当惑するしかない。小沢氏がまた奇怪な態度をとる。4日には「混乱を引き起こしたことのけじめをつける」「協議の結果を役員会で反対されたのは不信任に等しい」とまで言って辞表を出したのに、6日には「たいへんご迷惑をかけた。もう一度頑張る」と辞意を撤回する。けじめをつける決心はどこへいったのか。筋が通らないではないか、そんな声も聞こえてくる。

 

 「大連立」をどちらが持ち出したのか。福田首相は「あうんの呼吸」だと言った。つまり両党の政治路線は、内政、外交ともに根本で共通しているから、呼吸が合うのだということだろう。だが、主権者・国民の世論と運動が、与野党の「密室談合」「連立」の前に立ちはだかっている。「大連立」が未遂に終わったのもこの力が背景にあるからだろう。民主党はこの大切なことが理解できないのだろうか。独断で、密室で、福田首相と呼吸を合わした小沢党首に、なぜ執着するのだろう。この党全体が「小沢路線」に染まっていくことが懸念される。この党の倫理規則を見た。「党員か重要決定に違背する等、党議に背く行為、党の結束を乱す行為を行った場合には処分する」とある。混乱を招いても代表は別なのだろうか。


地下鉄民営化? 敬老パスは?

2007-11-02 18:46:07 | インポート

 

 私は大阪市内を自由に歩きまわっている。70歳以上の市民に交付されている『大阪市 敬老優待乗車証』(敬老パス)を持っているからである。これを使えば、大阪市営の交通機関である地下鉄、ニュートラム(モノレール)、バス、これらの乗車賃はすべて無料である。有難く、頻繁に使わせてもらっている。地下鉄は東西南北、市内を縦横に走り、要所で各路線につながっている。乗り換え、乗り継ぎのために地下構内を歩き,階段を上り下りする。私には適当な運動になっている。ほとんどは私鉄と接続しているから郊外に出るのも便利だ。大阪湾を一望することもできる。まことに、敬老パスは”市民の足”を自在に使わせてくれる立派な制度である。同感の人もさぞ多いだろうと思っている。

 

 だが、これを否定する異論が出たことがある。数年前、与党の一部と市長との間で交わされたやりとりであった。「制度を現状のままで継続させることは問題がある」「本制度のあり方を検討する」というもの。有料化の危機を感じた市民は、素早く大運動を展開する。この結果、有料化は見送りとなった。世論の強さをまじまじと味わった。こうして、この制度は守られ、多くの市民に活用されているのだが、正直なところ不安がこびりついて離れない。なにしろ福祉にはなにかと冷たい大阪市のことである。いつ取りやめを持ち出してくるか、その懸念が拭いきれないのである。こんなときに市長はとんでもないことを言い出した。敬老パスも大事だが、その次元を超えた大問題である。

 

 地下鉄の”民営化”である。211億円もの黒字だというこの公営事業を、財界に売り渡そうというのである。「経営の自由度が増す」「サービスがよくなる」からだとのこと。赤字の市バスは廃止・縮小を狙っていると聞く。”市民の足”、公共交通をなんと心得ているのだろうか。地下鉄を利潤追求第一の私企業に委ねて、安全が保障され、サービスがよくなるなどと思っているのだろうか。考え違いも甚だしい。敬老パスを出している私鉄など私は知らない。住民の安全、福祉優先を任務とする地方自治体が、ここまで財界・大企業の要求に屈してよいものだろうか。ことは敬老パスだけにとどまらない。”市民の足”の根本にかかわる、ひいては自治体本来のあり方が問われる大問題である。4日からの大阪市長選挙が大事だ。