
スーパー歌舞伎並みに面白い舞台なのに宣伝が足りません! スーパー歌舞伎「ワンピース」は若者に大人気の漫画が原作でしたので、若者や子供も大勢が劇場に押し寄せましたが、この「GOEMON」がこんなに面白い舞台だなんて全然知られてなくて、観客はいつもの年齢層の高い人ばかりで勿体無い! 観客層がぐんと広がるチャンスなのに!
花形歌舞伎なのに題目は横文字の「GOEMON」、舞台は初っ端は十字架の並ぶ教会で、拍子木も三味線もなくて現代音楽、最初に登場するのはすらりとスタイルの良いジャニーズの今井翼クン、観客はびっくりしたのでは? 私も???と思いました。
今井翼クンはスペイン人の神父役、その神父と明智光秀ゆかりの娘の間にできたハーフの子供が五右衛門ということで五右衛門は眠狂四郎バリの赤毛の総髪です。バテレンの父は国外追放になり、豊臣秀吉に召される母親はそれを嫌って自害、孤児になった五右衛門は百地三太夫の下で忍術を学ぶ、その学友が霧隠才蔵(今井翼の二役)
長じて五右衛門は大泥棒に、霧隠才蔵は真田幸村の家来、もう一人明智光秀ゆかりの武将・山三、五右衛門情婦の出雲の阿国、秀吉を仇と狙う4人が捕り方と大捕物を繰り広げるという、どんどんヘンテコな話になっていきます。「絶景かな!絶景かな!」の楼門も極彩色でもなければ桧ハダ葺きでもない、並んだ十字架が移動したメタリックな造りだし、途中にはスペインに戻った父が妻子を思う場面のフラメンコのショーまで入ります。
私の席は2階の花道の上、一番良い席と娘がゲットしたのを回してくれたのです。何故にここ??? 大捕物の最中に、花道に立てられた梯子を登って客席の手すりに手を掛け、五右衛門が目の前にヌーッと顔を出した時には思わず歓声を上げてしまいました。釣り上げられて宙吊りでツヅラ抜けをするのも花道の上のまさに目の前、最後に忍術で霧隠才蔵が化けた鷹に乗って去って行くのも花道の上、花道の上は特等席なのでした。
捕り物には1階2階の客席を全部使って、几帳面にどの通路にも五右衛門が現れ挨拶してゆきますし、愛之助と翼のフラメンコダンスに、三味線とフラメンコギターのセッションまであってサービス満点! 愛之助頑張れ!紀香頑張れ!と応援したくなる舞台でした。
強いて言えば、神父を夫に持つ母親が「仇を討って!」と子供に言い残したり自害したりするのは不自然だし、踊り手として女性が大勢登場して、特に真っ赤な裾を翻したフラメンコの群舞はさすがにやりすぎと思いました。もっとも五右衛門は「狭い島国で敵討ちなんぞ小せい」と世界に飛び立っていってしまうんですけどね、愉快痛快!
今井翼クンは神父役では歌舞伎らしからぬ台詞回しと思いましたが、霧隠才蔵役では声も通って、黒目を寄せて見得を切って見せました。フラメンコが得意なのは知っていたので、いつ踊るいつ踊ると楽しみでしたが、愛之助や中村壱太郎も踊ったのにはびっくりしました。
観客もいつもはお互い話すことなんてないのに「今日は紀香きてないのかしら?」「毎日は来ないのね、会いたかったなぁ!」「綺麗なんでしょうねぇ?」「昨日は大混乱になったそうだから来るなと言われたんでは?」などと”紀香”の話題にも花が咲きました。