大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米中貿易協議、来週、北京で高官協議: 2つの課題

2019年03月20日 | 日記

 ウォールストリートジャーナル(2019/3/20)によれば、米中政府は4月下旬までに貿易交渉をまとめることをめざし、来週、北京で新たな高官協議を開催することになった。

 大詰めを迎えつつある米中貿易協議であるが、現在、2つの問題が未解決のまま残されている。

 1つは、合意の違反や不履行があった場合、両国でそれをどのように解決するかという問題である。

 アメリカ側は、両国の担当者でまず話し合いを行い、解決できなければ交渉責任者のライトハイザー氏と劉鶴(リュウ・ホー)氏で話し合いをおこない、それで解決できなければアメリカが関税を引き上げる仕組みを提案している。

 問題は、アメリカが中国に対し対抗的に関税を上げないことを求めているのに対し、中国がそれを強く拒否していること。中国では、この仕組みはアメリカだけに一方的な関税権を認めるもので、不平等条約に等しいものだと強い反発が生じている。

 もうひとつの問題は、関税の撤廃ペース

 中国は、トランプ大統領が昨年導入した対中関税すべてをすみやかに撤廃することを求めているが、アメリカは合意内容の履行状況をみながら徐々に関税を撤廃していくことを主張している。

 またアメリカは2008年7月と8月に導入した500億ドル分(5.5兆円:1ドル=110円)、25%の関税については撤廃の対象外にすることを主張し、中国とするどく対立している(アメリカは2018年9月に導入した2千億ドル分-22兆円-、10%の関税撤廃については肯定的)。

 とくに解決が難しいのが最初の問題である。これがどのように解決されるのか、両国指導者の対応に注目したい。


トヨタ、中国、欧州で電気自動車を発売へ

2019年03月19日 | 日記

 トヨタのエコカー戦略はこれまで、ハイブリッド自動車が中心電気自動車の販売では他社に出遅れていた。

 しかしオートモーティブニュースは、トヨタが来年以降、中国と欧州であいついで電気自動車を発売すると報じた。

 同紙によると、トヨタは来年、中国で同社としてははじめての電気自動車(C-HRの電気自動車バージョン)を発売する。

 トヨタはまた、これまでハイブリッド車の比率が高かった欧州でも、2021年までに電気自動車を発売する(2019年、欧州におけるトヨタの自動車販売の50%はハイブリッド車の見込み)。

 オートモーティブニュースは、高価格が見込めるSUVやバンが電気自動車の候補にあがっているとしている。

 ちなみに、トヨタは現在、欧州ではプジョー(PSA)から中型商用車(バン)の供給を受けて自社ブランドとして販売しているが、PSAはオペルと共同して来年、電気自動車(商用バン)を発売する予定となっている。

 ここから、オートモーティブニュースは、商用の電気自動車はPSAから供給を受ける可能性が高いとしている。

 トヨタは、2020年代初頭、全世界で10車種の電気自動車を販売する予定となっている。


ボルボ、航続440キロの電気自動車を発表

2019年03月18日 | 日記

 先日、ボルボは航続距離が440キロを超える電気自動車ポールスター2(Polestar 2)を発表した。

 オートモーティブニュースによれば、同車は4輪駆動でボルボXC40のプラットフォームを利用し、グーグル・アンドロイドのオペレーティング・システムを採用している。

 価格は4.4万ドル(480万円:1ドル=110円)からでテスラのモデル3をライバルとして意識している。

 中国の工場で生産され、北米での納車は2020年夏からになりそう。

 なお現在、ジーリー(吉利)自動車の親会社である吉利集団がボルボを所有している。 

 ボルボはこれから10年以内に6車種以上の電気自動車を発売する予定になっている。


プジョーに買収された独オペル、2018年に大幅増益を記録

2019年03月17日 | 日記

 ドイツの高級車メーカー・オペルは、2018年の純利益が8.59億ユーロ(1,100億円:1ユーロ=130円)と大幅増益となった。

 オペルはもともとは米GMの子会社だが、業績は長年低迷を続けていた。

 しかし2017年、フランスのプジョーグループ(PSA)がオペル(とその英子会社ボクソホール)を買収

 オートモーティヴニュースによれば、その後、PSAのカルロス・タバレスCEOは、ドイツ工場で3,700人の人員削減をおこなうほか、ドイツの研究開発センターで働いていた2,000人をフランスの大手エンジニアリング会社Segulaに移転

 また、値引き販売を中止しブランド価値の向上をはかるとともに、在庫の削減に積極的に取り組んだ。

 この結果、2018年のオペルの決算は、売上高183.1億ユーロ(2.3兆円)、純利益8.59億ユーロ(1,100億円)、売上高利益率は4.7%となった。

 ちなみに2017年のVWの売上高利益率は4.1%。オペルの好調さが目立つ。 

 世界的な金融緩和(金余り)という特殊な経済環境のもとにあるとはいえ、世界では高級車や大型SUVといった高価格帯の車が自動車メーカーの利益を大きく押し上げるとともに、自動運転や電気自動車といった最先端技術を普及させる役割を果たしている。

 景気後退が生じたとき、こうしたトレンドにどのような変化が生じるのか気になるところである。


マウントゴックスの仮想通貨流出事件、カルプレス氏に執行猶予: 長期勾留を見直すきっかけに

2019年03月16日 | 日記

 2019年3月15日(金)、東京地裁は、仮想通貨交換会社マウントゴックス事件で起訴されていたカルプレス氏に対し、業務上横領罪などを無罪としたうえで執行猶予4年(懲役2年6月)を言い渡した。検察は懲役10年を求めており、判決は事実上のカルプレス氏の勝利を意味する。

 2014年2月、当時、世界最大級だった仮想通貨交換会社マウントゴックスから500億円近い仮想通貨が流出。同年4月、東京地裁は同社の破産手続きをはじめた。

 そして2015年8月、カルプレス氏は、データの改ざん、顧客から預かった資金の着服(業務上横領)などの容疑で逮捕され、裁判がはじまる2016年7月までおよそ1年間、勾留されることになった(資金流出についての罪には問われていない)。

 ところが、ウォールストリートジャーナルによると、2017年7月、マウントゴックスから仮想通貨を流出させ、それをマネーロンダリングした容疑でロシア国籍のアレキサンダー・ビニク容疑者がギリシャで逮捕されることになった(現在、同容疑者のアメリカへの引き渡しをめぐってギリシャで裁判がおこなわれている最中)。

 また仮想通貨の値上がりにより、2018年9月までにハッキングを逃れた資産の1/3を売却することで700億円の売却益を確保できており、顧客の資産回復も順調に進む見込みになっている。

 こうしたなか、東京地裁は今回、データの書き換えについてはその罪を認めたものの、より重い顧客から預かった資金の着服についてはこれを否定し、執行猶予4年の判決をくだした。

 これがゴーン氏の件とあわせ、欧米でみられなくなって久しい長期勾留を見直すきっかけとなればなあと思う。