大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

低格付け企業の債務増加、懸念高まる

2018年04月20日 | 日記

  

  株式市場が不安定になるたびに繰り返されてきたことではあるが、最近また、欧米の経済メディアで低格付け企業の負債増加を懸念する記事が増えている。

 たとえば2018年4月12日のフィナンシャル・タイムズ(FT)は、レバレッジ・ローン(leveraged loan)と呼ばれる投資適格以下の企業の債務が1兆ドル(110兆円:1ドル=110円)に達するとともに、今年に入ってさらに債務増加が加速しているとしている。

 FT紙は、その背景(債務側の背景)として活発な企業買収をあげている。同紙によれば、今年これまでに1.2兆ドル(130兆円)の企業買収が発表されたが、これは昨年の同時期より45%も多い。

 そしてFT紙は、欧米でEBITDA(税・利払い・減価償却前利益)に対する買収価格の倍率(10倍超)がリーマンショック前のピーク時(10倍弱)を超えているデータを示し、買収価格の高騰に警鐘を発している。

 また2018年4月1日のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、投資適格のなかでは最低グレードであるトリプルBの社債がかつてないほど増加していることを指摘している。

 同紙によれば現在、アメリカにおけるトリプルBの社債は2.5兆ドル(270兆円)で、5年前の1.3兆円(140兆円)、10年前の0.686兆ドル(75兆円)から急増している。

 WSJは、現在、トリプルBの社債は、投資適格の社債の50%を占めるとしたうえで、景気後退がはじまれば、格付けが投資不適格に引き下げられ借り換えが困難になるケースが増加する可能性があるとしている。

 WSJは、トリプルBの社債増加の一因として、企業買収などで負債を増加させた結果、もともとは高かった企業(社債)の格付けが低下するケースがあるとしている。同紙は、そのような例としてCVS、キャンベル、ジェネラル・ミルズなどを挙げている。

 ここからは私の意見だが、いまのところ低格付け企業のデフォルト率は依然低い水準を維持している。したがって、現在のような低金利が続くうちは問題にならないと思うが、金利が大きく上昇するとFT紙やWSJ紙が指摘するように、借り換えや借り換え後の利払いが困難になる企業が増えてくることも考えられる。低格付けの社債は償還までの期間が短いものが多く、とくに2019年以降に償還をむかえるジャンクボンドが急増する。これから金利およびそれを規定するインフレ率の動きには今まで以上の注意が必要である。



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