いま世界中がアメリカの減税に注目している。
ところで減税の経済効果は、私を含め多くの人が考えるほどはっきりしたものではないようだ。
このことにかんして先日、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)にひじょうに興味深い記事がでた。
初代ブッシュ大統領とクリントン大統領はそれぞれ1991年と1993年に、所得税の最高税率を引き上げた。
WSJによれば経済が冷え込んだかといえば逆で、それ以降2000年までアメリカ経済は平均4.1%の成長をとげた。
一方、二代目ブッシュ大統領は2001年と2003年に減税をおこなった。
その後10年間の経済成長率は平均1.7%にとどまった。
もちろん、減税のあと強い経済成長が続いたケースもある。
レーガン大統領は1981年に大規模な減税をおこない、その後さらに法人税を引き下げた。
その後10年間の経済成長率は平均3.8%を記録している。
ただレーガン大統領は、大規模な減税と軍備拡張(政府支出の増加)を同時におこなったため財政赤字が拡大し、金利の急上昇が生じた。
そこから急激なドル高が生じ、輸入増加により米製造業は大打撃を受けることになった。
WSJはさらに国の比較もしている。
WSJは、ヨーロッパで税率の高いスウェーデンと税率が低いスイスを比較し、1970年から2012年にかけてスウェーデンの方が経済成長率が高かったなどの例をあげ、税率の低さはかならずしも高い経済成長につなるとはかぎらないとしている。
このブログでも、フィンランドの税率は日本より高いが、日本より高い経済成長をとげている事実を指摘したことがある。
このことについてWSJは、アメリカでは一般的だが日本ではあまり言われないことを書いている。
WSJは、もし減税によって財政赤字が増えるなら金利が上昇し、中・長期的にみると経済への悪影響が懸念されると述べている。
共和党の進める減税がどのようなものになるか、しっかり見ていきたい。
追記
ワシントン・ポスト紙(2017/10/9)によれば、強気で知られるゴールドマン・サックスはトランプ税制改革による経済成長率の上振れを0.1-0.2%程度と予測している。