アメリカの税制改革に注目が集まっている。
日本でとくに注目されているのは、法人税の35%から20-15%への引き下げ、所得税の最高税率の 39.6%から33%への引き下げである。
しかし財政規律を重視する共和党が、かわりの財源なしに大減税を認める可能性はほとんどない。
かわりの財源と考えられているのが輸入品に20%の課税をおこなう国境調整税である。
アメリカではサッチャー時代の経験をもとに、大減税とインフラ投資の拡大が決まれば短期間(数か月内)に15%程度のドル高が進み、結果として輸入価格はあまり変わらない(消費者は困らない)という見立てもあるようだが、20%の実質関税がはじまれば日本の輸出が大きな影響を受けることは間違いない。
とくに心配されるのが自動車である。
日本の貿易黒字を支える自動車輸出が打撃を受けるだけでなく、日本などからの部品輸入に大きく頼る現地生産もおおきな打撃を受ける可能性が高い。
先日おこなわれたトランプ大統領との会見で、安倍首相は「トヨタ・カムリの現地調達率は75%で、『ビッグ3』よりもたくさん米国の部品を使っている」(毎日新聞2017/2/14)と述べたようだが、もちろんメーカーやモデルによって事情は異なり、全体としてみればビッグ3より日本メーカーの現地工場の方が部品の輸入割合は高いと思われる。
オートモーティブ・ニュースは、国境調整税が導入された場合、メーカー別の一台当たりの平均値上げ額が次のようになると試算している。
テスラ 0ドル
フォード 282ドル(約3万円:1ドル=115円で計算)
GM 995ドル(約12万円)
ホンダ 1312ドル(約15万円)
フィアット・クライスラー 1672ドル(約19万円)
日産 2298ドル(約26万円)
トヨタ 2651ドル(約30万円)
スバル 3656ドル(約42万円)
マツダ 5156ドル(約59万円)
三菱自動車 5938ドル(約68万円)
VW 6779ドル(約78万円)
国境調整税の導入は、日本の自動車メーカーの再編加速を引き起こすかもしれない。