2017年3月30日、マスクCEO率いるスペースX社は、回収した一段目のロケット(一段目のロケットが最も高価)を使って衛星の打ち上げに成功するとともに、そのロケットをもう一度海上プラットフォームに回収することに成功した。
これによりロケットの再利用(打ち上げ→回収→再打ち上げ→回収)が完成したことになる。
ウオール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、スペースX社は今後、ロケットの大型化を進めるとともに二段目以降を含むすべてのロケットの回収を計画している。
さらにマスクCEOは、1年以内に、回収したロケットを24時間以内に検査、燃料充填して再び打ち上げることができるようになるだろうと予測している。
再利用によりロケット打ち上げコストは現在の1/100まで安くなるとされているが、それが秒読みに入ってきた感じだ。
ところでこうした革命的な事業にいくらかかったかだが、マスクCEOは、開発に10億ドル(約1100億円:1ドル=110円)かかったと述べている。
ちなみに2隻の豪華客船の建造で三菱重工が背負った赤字は2000億円以上。同じく三菱重工が開発中の小型機MRJは、エンジンを米プラット・アンド・ホイットニーから外部調達するにもかかわらず開発費が5000億円を超えるといわれている。
約一千億円というロケット開発費は、一桁少ないんじゃないのというぐらいの驚きである。
2017年4月3日には、マスク氏がCEOをつとめるもうひとつのテスラ自動車の株の時価総額がフォードを抜いたというニュースもでてきた。
マスクCEOは数年以内に人間を月に送り最終的には火星に人を送ると言っているが、こうした革命的な業績の数々を見ると本当に実現するのではないかと思ってしまう(革命的というのはマスク氏自身がよく使う言葉)。
IMFは、金融危機後、低リスクのものばかりに投資がかたより、ハイリスクなものへの投資が減ったことが、先進国の生産性を以前より低いものにしているとの報告書を先ごろ公表している(FT 2017/4/4)。
金融危機後、誰もが不可能だと考えたハイリスク事業に取り組みそれを成功させたマスク氏が日本だけでなく先進国全体からみても特異な人物であることがわかる。
火星への人類到着までマスク氏の動向に注意していきたい。