大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

日系自動車部品メーカー、アメリカの独禁法違反が止まらない

2016年08月12日 | 日記

 日本では関心が薄れているが、アメリカでは独占禁止法違反で日本の自動車部品メーカーの有罪、賠償支払いが続いている。

 ことの始まりは2010年にさかのぼる。この年、米政府は日系自動車部品メーカーの価格操作(price fixing)について調査を開始。そして2011年9月、古河電工が2003年から2009年にかけて他社と価格操作をおこなっていたこと(罪)を認め2億ドルの罰金の支払いに合意して以降これまで、40社以上、60人以上の役員が独占禁止法違反で有罪を宣告されている。罰金総額は27億ドル(2700億円:1ドル=100円で計算)に達し、独禁法違反の罰金としては米史上最高のケースとなっている。有罪となった役員の多くは1~2年の懲役刑を宣告されている。

 日本での報道は減っているが、現在も刑事裁判、民事裁判が続いている。この1か月だけでも、次のようなことがおこっている。日本の報道が少ないので、ここに記しておく。

 2016年8月9日(火)、米司法省は、日立オートモーティブシステムズが1990年代半ばから2011年の間、他社との話し合いでどの社が納入するか(落札するか)決めていたこと(罪)を認め5.548千万ドル(55億円)の罰金の支払いに合意したと発表した(NYT 2016年8月9日)。
 
 2016年7月20日(水)、米司法省は、西川ゴム工業が、2000年から少なくとも2012年9月まで他社と共謀して価格操作をおこなっていたこと(罪)を認め、1.3億ドル(130億円)の罰金の支払いに合意したと発表した。また元役員のキョーモト氏は懲役18か月、罰金2万ドル(200万円)となった。(Automotive News 2016年7月20日

 2016年7月15日(金)、デンソーは、過去に有罪を認めた価格操作についておこされた2つの集団訴訟(民事訴訟)で和解した。オートモーティブ・ニュース(7月15日)によれば、デンソーは消費者代表に1.938億ドル(約190億円)、ディーラー代表に6.12千万ドル(約60億円)、合わせて2.55億ドル(255億円)を支払うことで合意した。デンソーは、2012年1月、価格操作について罪を認め、7.8千万ドルの罰金の支払いに合意している。

 こうした出来事に対して、日本では商慣行の違い(米の誤解)と受け止める人が少なくない。またこうした慣行があるからこそ日本では各分野で他国より多くの企業が「共存」できているということがあるかもしれないが、どちらも欧米では受け入れられる考えではない。
 企業レベルでは「誤解」を受けない対策が進められているようであるが、今回の出来事に対する社会の反応の薄さをみると、今回の出来事が真剣な反省のうえに将来に生かされるかどうか心配してしまう。