有松は 東海道の宿場町。古い町並みと民家が残されていて「重要伝統的建造物群保存地区」に国から指定されている。そして絞り染めでも有名で、愛知県の観光対象となっている。
国際芸術祭「あいち2022」の有松会場では、その街並みおよび民家の佇まい、そして布を活用するような展示がなされている。
1.街並み
有松駅から南に少し下ると、古い街並みが現れる。そこで芸術祭が開催されている。
いたるところに美術祭のポスターが貼られ、「ありまつ」と染められた暖簾、また絞りにちなんだ門飾りがある。
街はもちろん生きていて、芸術祭の観賞者以外に、その土地の人も歩いている。街の情報発信もしているようだ。浴衣の女性が途中の入口で書付を掲示している。それが下記の蔵で開催のコンサートと落語の連絡。蔵は江戸時代に作られた市の指定文化財。
2.街中 ミット・ジャイインの展示
《ピープルズ・ウォール(人々の壁)2022》・《1000回のカレンダー》
街のあちこちに、暖簾のようにやや銀色の幅広い布がぶら下がっている。厚く塗ったキャンバスを切ることで、空間の分断や境界をあいまいにしようという作者の意図があるとのことだが、みんながそれを見つけてなんだろうと集ってくる効果がある。
このテープ状のものを1日に一本ずつ観賞者に配布して、ネットに挙げてもらうプロジェクトも進んでいる。
3.竹田家住宅
絞りの商家の繁栄を示す豪華な造りの家。この中に2人の作品が展示されている。
(1)プリンツ・ゴラーム
《見られている》
母屋の展示。いろいろなところに紙の面が掲示されている。そして座敷で仮面をつけた製作者2人がいろいろなポーズをとっているビデオが流されている。
仮面は着用する人物の人格を変容させたり、匿名的な存在に変化させたりするが、特にコロナ禍で、その意味が問われている。
(2)ガブリエル・オロスコ
ロト・シャク(回転する尺) 掛け軸《オビ・スクロール》
離れの茶室に、掛け軸状の作品、そして尺にインスピレーションを受けた棒が並んでいる。
掛け軸状の作品は布の一部を円状に切り反転させたというものだが、立派でシックな茶室にマッチして違和感がない。
掛け軸の円の意匠は曼荼羅とか日輪それに結びつく永遠を連想させ、棒のほうは、それを守る結界を示すように感じられた。
4.岡家住宅
この住居も江戸末期の豪壮な町屋で、道路への間口が大きい。ここにも2点の展示がある。中の明り取りの天窓が歴史を感じさせた。
(1)ユキ・キハラ
第2章《サーモアのうた- Fanua(大地)》
日本人の父とサモア人の母をもつユキ・キハラのアイデンティティを示す作品。意匠は振袖だが、素地はサモアの伝統の樹皮から作ったシアポ(樹皮を一生懸命たたいて薄く広げる)。それに手書きで自然由来の染料で描く。 描かれているのはサモアの現在。振袖5着が並べられ、本来の美しい自然や生活、グローバリゼーションによってもたらされたもの、特に弊害が描かれている。
表面が日本のシルクの柔らかな感じではなく、皮にプリントしたかのような艶やかな輝き方をする。物凄く手が込み、時間のかかる作品。
振袖の形にに親しみを感じて近付くと、その迫力に吹っ飛ばされた。
人が作品を背にしているのは作者が製作意図をビデオ放映しているため。
(2)AKI INOMATA
「彼女に布をわたしてみる」
この作者は人間以外の生き物と共同制作をするということで、有名とのこと。画像がきれい。
強制的に、人間の感覚で綺麗な布を与えて、身にまとわせた。
その虫の生存に合致した素材特性ではないし、目立つと天敵に襲われる。
5.旧加藤呉服店
2つの作品がある。
(1)イー・イラン
《ティカ・レーベン(マットのリボン)》
東南アジア一帯に広がるマットの織り方で長いリボンを作っている。多くの人が、同じマットの上で上下関係なく語らうことを期待している。
映像ではマレーシアの小島の少数民族、そしてマレーシア系漂海民族バジャウ族を文化的に繋ぐ梯としての役割(フラットなもの)が流されている。
(2) 宮田 明日鹿
芸術祭開始1か月前から「有松手芸部」を立ち上げ、近所の人と手芸を作りあっていたとのこと。それが会期中も継続していて、、来場者も参加できるようだ。手芸を通じた交流で「人生を編む」というのが、作品テーマとのこと。壁に作品が飾ってあるとともに、手芸用の素材や道具が並べられている。
他に 2か所作品があるのですが、時間がなかったのでパスしました。
こういった感じに、一か所1~2作品だと、じっくり考えて観ますね。クラシックで絞りという伝統文化を持った街と、ここのために選ばれた現代アートの展示品はかなり合致しているとおもいます。
竹田家、岡家の展示品はおすすめです。
国際芸術祭「あいち2022」の有松会場では、その街並みおよび民家の佇まい、そして布を活用するような展示がなされている。
1.街並み
有松駅から南に少し下ると、古い街並みが現れる。そこで芸術祭が開催されている。
いたるところに美術祭のポスターが貼られ、「ありまつ」と染められた暖簾、また絞りにちなんだ門飾りがある。
街はもちろん生きていて、芸術祭の観賞者以外に、その土地の人も歩いている。街の情報発信もしているようだ。浴衣の女性が途中の入口で書付を掲示している。それが下記の蔵で開催のコンサートと落語の連絡。蔵は江戸時代に作られた市の指定文化財。
<オーボエ演奏 落語会 チケット完売>
残念なり
聴いてみたかった
蔵中の
江戸の空気の
響き具合を
残念なり
聴いてみたかった
蔵中の
江戸の空気の
響き具合を
2.街中 ミット・ジャイインの展示
《ピープルズ・ウォール(人々の壁)2022》・《1000回のカレンダー》
街のあちこちに、暖簾のようにやや銀色の幅広い布がぶら下がっている。厚く塗ったキャンバスを切ることで、空間の分断や境界をあいまいにしようという作者の意図があるとのことだが、みんながそれを見つけてなんだろうと集ってくる効果がある。
<記念写真>
由緒ある
家を飾るは
モダンアート
だったら当然
ネットにアップでしょ
由緒ある
家を飾るは
モダンアート
だったら当然
ネットにアップでしょ
このテープ状のものを1日に一本ずつ観賞者に配布して、ネットに挙げてもらうプロジェクトも進んでいる。
3.竹田家住宅
絞りの商家の繁栄を示す豪華な造りの家。この中に2人の作品が展示されている。
(1)プリンツ・ゴラーム
《見られている》
母屋の展示。いろいろなところに紙の面が掲示されている。そして座敷で仮面をつけた製作者2人がいろいろなポーズをとっているビデオが流されている。
仮面は着用する人物の人格を変容させたり、匿名的な存在に変化させたりするが、特にコロナ禍で、その意味が問われている。
<仮面の人たち>
君たちも
仮面が欲しい?
変身だ
それをつければ
なんでもできる
君たちも
仮面が欲しい?
変身だ
それをつければ
なんでもできる
(2)ガブリエル・オロスコ
ロト・シャク(回転する尺) 掛け軸《オビ・スクロール》
離れの茶室に、掛け軸状の作品、そして尺にインスピレーションを受けた棒が並んでいる。
掛け軸状の作品は布の一部を円状に切り反転させたというものだが、立派でシックな茶室にマッチして違和感がない。
掛け軸の円の意匠は曼荼羅とか日輪それに結びつく永遠を連想させ、棒のほうは、それを守る結界を示すように感じられた。
4.岡家住宅
この住居も江戸末期の豪壮な町屋で、道路への間口が大きい。ここにも2点の展示がある。中の明り取りの天窓が歴史を感じさせた。
(1)ユキ・キハラ
第2章《サーモアのうた- Fanua(大地)》
日本人の父とサモア人の母をもつユキ・キハラのアイデンティティを示す作品。意匠は振袖だが、素地はサモアの伝統の樹皮から作ったシアポ(樹皮を一生懸命たたいて薄く広げる)。それに手書きで自然由来の染料で描く。 描かれているのはサモアの現在。振袖5着が並べられ、本来の美しい自然や生活、グローバリゼーションによってもたらされたもの、特に弊害が描かれている。
表面が日本のシルクの柔らかな感じではなく、皮にプリントしたかのような艶やかな輝き方をする。物凄く手が込み、時間のかかる作品。
振袖の形にに親しみを感じて近付くと、その迫力に吹っ飛ばされた。
<サーモアは今>
振袖を
彩るサーモアの
今の姿
自然呑込む
グローバリーゼーション
振袖を
彩るサーモアの
今の姿
自然呑込む
グローバリーゼーション
人が作品を背にしているのは作者が製作意図をビデオ放映しているため。
(2)AKI INOMATA
「彼女に布をわたしてみる」
この作者は人間以外の生き物と共同制作をするということで、有名とのこと。画像がきれい。
<虫への人の思い込み>
思い込み
進化の歴史を
すっ飛ばす
おしゃれしたいって
思っていないのに
思い込み
進化の歴史を
すっ飛ばす
おしゃれしたいって
思っていないのに
強制的に、人間の感覚で綺麗な布を与えて、身にまとわせた。
その虫の生存に合致した素材特性ではないし、目立つと天敵に襲われる。
5.旧加藤呉服店
2つの作品がある。
(1)イー・イラン
《ティカ・レーベン(マットのリボン)》
東南アジア一帯に広がるマットの織り方で長いリボンを作っている。多くの人が、同じマットの上で上下関係なく語らうことを期待している。
<どこまでも届け マットのリボン>
どこまでも
リボンよ届け
同じマットの
上で楽しく
語り合えるよう
どこまでも
リボンよ届け
同じマットの
上で楽しく
語り合えるよう
映像ではマレーシアの小島の少数民族、そしてマレーシア系漂海民族バジャウ族を文化的に繋ぐ梯としての役割(フラットなもの)が流されている。
(2) 宮田 明日鹿
芸術祭開始1か月前から「有松手芸部」を立ち上げ、近所の人と手芸を作りあっていたとのこと。それが会期中も継続していて、、来場者も参加できるようだ。手芸を通じた交流で「人生を編む」というのが、作品テーマとのこと。壁に作品が飾ってあるとともに、手芸用の素材や道具が並べられている。
他に 2か所作品があるのですが、時間がなかったのでパスしました。
こういった感じに、一か所1~2作品だと、じっくり考えて観ますね。クラシックで絞りという伝統文化を持った街と、ここのために選ばれた現代アートの展示品はかなり合致しているとおもいます。
竹田家、岡家の展示品はおすすめです。
古い町並みが残っているところが全国にありますね。
四国の有光駅近くもそうでした。馬籠、妻籠にも行ったことがあります。
有松の古い町並みの中でのアート展を考えた人は斬新な方なんでしょうね。
返信が遅くなりました。
この道は古い東海道です。
今までのトリエンナーレでも、地域活性化のために、特徴を持った元気な地域でアート展を分散開催しています。