てんちゃんのビックリ箱

~ 想いを沈め、それを掘り起こし、それを磨き、あらためて気づき驚く ブログってビックリ箱です ~ 

草間彌生展

2017-07-28 21:34:30 | 美術館・博物館 等

 正確には 草間彌生 わが永遠の魂 展

 私は海外へ行くとよく美術館へ行く。近代までの作品の展示は各国でもパターンが似ているが、現代美術は美術館によって方針が千差万別である意味とても面白い。その中で、草間彌生の作品は、クラシックになりつつある(評価が安定)人である。
 そして日本国内でも時々、まとまった展示会があり私も2度ほど行った記憶がある。

 今回の展示会は草間さんの履歴の全体を示そうとしたもので、日本画から現代美術に入り始めた時から現在の作品までが展示されている。

 全体を見て、非常にピリピリとした感受性の強い女性が、その感性を心の赴くままに歯止めなしに出すとこんな作品になるのだろうなって思った。幻覚や幻聴を書こうとしたとのことだが、性と死への恐怖がそのまま出ている。そして通常は宗教の兆しはあってもおかしくないが、それがまったくと言ってない。たぶん信じることができるのは自分だけ。そこがミュシャと違う。

 アメリカで最初に見いだされたのが画面いっぱいの網目の絵。単純なバックにちいさな網目をコツコツと書いたもの。じっと見ると確かに密度変化や、網目の太さの変化、タッチの凹凸があって面白いが・・・・ でもこれがミニマルアートの走りとして認められた。

 その後は、露骨に男根だらけの家具を作ったり、動画や音楽を使ったり、部屋いっぱいのインスタレーション、特に鏡の部屋を作ったり、ソフトビニールで彫刻にしたり、コマーシャルの色彩取り入れてみたりと今の現代美術の手法を先走りし、すべてを自分で確かめている。実験してみないと気が済まないという、視野が広く先鋭的な人である。


1 男根の彫刻


2 鏡の部屋

 そして最近の大型絵画シリーズ「わが永遠の魂」に収斂する。 ここでは大きな部屋が作られていてそこにぎっしりとポップな絵画が並べられている。中央には最近のカラフルな彫刻がおかれている。その色彩は全体として保育園なんかでの発表会を思わせる。でもそれぞれはやはり大人の絵で、それぞれに生、死、愛、平和、戦争など、大人が頭の中でドッチボールしている言葉の題目がつけられている。でも全体としての心地よさがある。
 
 その中でたくさんの眼が書かれている。これは見られることへの恐怖を意味しているのか、またはもっと見てほしいと思っているのか・・・ いずれにせよ、周辺の眼への意識なしには、存在しえない人なのだろう。

3 わが永遠の魂 の展示室(この部屋はカメラ撮影が可能)



 草間彌生は、通常の大人が憧れる子供の純粋さとむき出しの表現力を持っている。若い頃はその底が見えなくてどこまで行くのか、もっと反社会性を持つのかと恐れられていたと思うが、現在は、内的基盤の範囲が普通の人の常識の範疇にあることが分かり(これは社会の許容範囲が草間彌生に追いついてきたこともあるが)、現在は怖くない、でも楽しくやんちゃしているアイコンとして、完全にコマーシャリズムの中に取り込まれた。私もグッズを購入したが、並んで購入までに20分を要した。(展覧会の入場は並ばなかった。) 

 特に女性が大量に購入していて、ヤヨイちゃん人形が飛ぶように売れている。女性は草間彌生が自分たちの悩みをあからさまに表現しているのに、共感しているに違いない。

 今回の展覧会は、かつて跳ね上がっていて危険視されていた現代美術家が、表現の規模を見切られ、突飛に見えるけれども安全な芸術家としてコマーシャリズムの中で消費される過程を示す、ある意味残酷な展示会かもしれない。
たぶんミュシャ展と一緒に見なければ、この感想は変わっただろう。

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2 コメント

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不思議なヤヨイちゃん♪ (夕顔)
2017-08-05 19:06:44
日本を飛び出してNYで奔放な生き方をした女性が 今日本で普通に受け入れられているのは彼女の憎めない子供のような純粋さのような気がします。
直島に行きたくて香川で一泊してフェリーで渡ったのはもう5年以上前です。直島が見えてきた時に最初に目に入ったのは草間彌生の大きなかぼちゃでした…その感動は忘れられません^^
その時直島では赤のかぼちゃ、黄色のかぼちゃのストラップや文房具をたくさん買いました♪ ヤヨイちゃん人形もほしいなぁ…。
「私が死んだ後も、私の創造への意欲と、芸術への希望と、私の情熱を感じていただければ、それに勝る喜びはありません」って言っているやよいちゃんが可愛く好ましく感じます。
展覧会がこちらであれば 行きたいです。
ところで香川は芸術の町ですよね^^
イサムノグチの生家とアトリエも感動でした!
東山魁夷の美術館もあり、時間が足りないくらいでした。
直島では他にもたくさん訪ねるところが多くてキラキラ光る瀬戸内のさざ波を見ながらの探索はとても楽しかったです。
取り留めのないコメントになってごめんなさい。
草間彌生展のご報告ありがとうございました。
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夕顔さん (てんちゃん)
2017-08-06 11:21:49
夕顔さんは、彌生さんに興味があるのですね。
 彌生さんは、なかなか扱いが難しい人で、本文にも書いたように若い頃はヒエラルキー上層部からは社会を壊すかもしれないモラルの革命児として、危険視されていました。
 それが精神的な病を持つ人の異常行為として彼らから理解され分類わけされるとともに、安全視されコマーシャリズムに取り込まれ、やよいちゃんってことに至っています。
 でも、病んだ人なればこそ純化された眼を持っている可能性っがあります。なにより彼女は、世間に対して「しょうがない」という言葉で自分を縛っていない人です。
 曇った眼鏡を掛けさせられ、また制約の多い中を生きている人にとっては、あの人の表現している制約のない自由さは憧れになるでしょう。
 
 
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