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クラシックがジャズより優れているところ②

2005-01-16 23:07:21 | 音楽一般
ダイナミクス。
英語では「Dynamics」、ドイツ語で「Dynamik」(デューナミク)、日本語で言うと「強弱法」の事ね。
これを音楽辞典で引いてみると、

・デューナミク
強弱法。ギリシア語で力を意味するDynamisに由来し、一般に力学、動力学を指すが、音楽では強弱変化による表情報を意味する術語として使われる。強弱はフォルテシモよりピアニシモに至る段階的略号や、クレッシェンド、ディミヌェンドなどの表情用語や符号が使われるが、微妙な強弱操作により音楽に有機的表情を与える事は、演奏家の楽曲解釈に委ねられる・・・・・以下略。

だそうです。
要するに「音の強さとその変化」の事ね。
前回はこの「音の強さとその変化」の幅がクラシックに比べるとジャズは格段に狭くって、そこはクラシックに比べて大きく劣っているところだと、そこまで書いたのね。
まぁさ、ジャズと比べてもこんだけの差があるんだから、他のジャンルを見渡したらもっと差があるよ!って、ジャズ贔屓の僕としてはそんなふうにジャズを擁護したくなったりもするんだけど(笑)。
で、この「ダイナミクスの幅」に、クラシックとジャズではどうしてここまでの差があるんだろうかと・・・・・今回はそれを書こうと思う・・・・・難しいな・・・・・初っ端から挫折しそうだ(笑)。

これは僕が個人的に思っている事なんだけど、ダイナミクスっていうのはテンポと密接な関係があって、ある一定以上の急激な(短いタイムスパンで)ダイナミクスの変化をつけようとした場合、同時にテンポの変化を伴なわなければ、楽曲として説得力のあるものにはなりにくいのね。逆もまた然りで、ある一定以上の急激なテンポの変化をする場合、同時にダイナミクスの変化を伴なわなければ、楽曲として説得力をもつ事は難しいのさ。
説得力って言うと語弊があるかな・・・・・楽曲としての必然性というか、楽曲としての自然なまとまりというか・・・・・ダイナミクスかテンポ、このどちらかのみが急激に変化した場合、曲中でその部分だけがどうしても不自然になってしまうと思うんだよね。
クラシックを聴いていると、ほとんどの曲がこの法則に当てはまっていると思う。
テンポの変化にはダイナミクスの変化が、ダイナミクスの変化にはテンポの変化が、大抵の場合不可分のように伴なっている(と思う)。

それでね、クラシックとジャズの違いって「ジャズはインテンポが前提になった音楽である」ってのが大きいんじゃないかと思うんだ。
クラシックでは、テンポが一定である事が前提になってなくて、常にテンポは変化していく。ハシるとかモタるとかって次元じゃなく、天から地まで、基本のテンポが常に変化していくのが当たり前なの。「テンポを変えながら」というのが前提として演奏されているのさ。
それに対して、あらかじめ定められたテンポを設定しておいて、そこに楽曲やアドリブを乗せていくのがジャズ。
アレンジやヘッドアレンジでの決め事としてテンポを変化させる事はあるけれど、それは一定の地点からまた別のインテンポを設定しなおすという事に過ぎないんだよね。
揺らぐ事はあるよ、ジャズでもテンポが揺らぐ事はある。でもそれはビートに対するノリであって、根本的なテンポをいじくるという事とはまた別のお話だよね。モタるっていっても次の拍が過ぎてしまうくらいモタる事は稀だし、ハシる場合も前の拍を追い越してしまう事は稀。しかもそれであってさえ、おおもとのインテンポは守られている。
なんでジャズがそこまでインテンポに固執するかというと、それはジャズの最大の特色である「スイング」が「一定の間隔での反復」を前提としたリズム感であるから、だと思う。
これはもう方法論の違いなんだ。
インテンポが前提であるという事は、「テンポの変化を前提とした曲は書かれにくい」という事を意味してるよね。これはアドリブでも一緒で、作曲が熟考の上に行なわれるか即興で行なわれるかの違いでしかない。それはつまり「テンポの変化を伴なわなければならないような、急激なダイナミクスの変化があるような表現はなされにくい」という事なのさ。
音楽において「急激なダイナミクスの変化」ってのはイコール「表現される情緒の幅、もしくは豊かさ」であったりするわけで・・・・・ここら辺にジャズを含めたクラシック以外の音楽が辞書や事典などで、「芸術」ではなく「軽音楽」とか「民衆音楽」と括られる所以があるような気がするねぇ。

クラシックでは「テンポは常に変化するものである」であって、それを支えるために指揮者のタクトだったり楽譜の指定だったり、演奏者間の曲の解釈のシンクロだったりといった方法論を用いてる。
さて、ジャズがジャズの特色(アドリブやスイング、かな?)を殺さずに、この「テンポの自由」を獲得していくのに、一体どのような方法があるでしょうか・・・・・これを乗り越えたらジャズは確実により表現の深みを増すと思う。
でもこれは厳しいかな・・・・・アドリブはともかくスイングはね・・・・・ルバートでスイングするヤツなんていないだろうしね(笑)。
・・・・・100年後のジャズは、クラシックに匹敵するダイナミクスの幅を獲得しているでしょうか?。

今回も長くなったね。
寝ます
本日の安眠盤、Bobby Hutcherson(ボビー・ハッチャーソン、vib)の「Montara」
ではでは。

3 コメント

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Unknown (med-swing)
2005-01-17 01:03:39
トラックバック、ありがとうございます。



僕もジャズにクラシックほどのダイナミクスが要求されないのは、やはりジャズが根本的にリズムを聞かせる音楽だからだと思います。とはいえ、実際演奏してみると、十分にダイナミクスを付けたつもりでも聴衆にはあまり伝わっていない…なんてこともザラにあるので、この辺はクラシックの人が聞いたら「?」なのかもしれませんが。

たまたま今度、ビッグバンドでドラムを叩く事になったので、今まで以上に気を配って演奏してみます。



でも意外にジャズに劇的なダイナミクスが要求されないのは、キャパが小さいクラブでばっかり演奏しているから…なんて事だったりしたら嫌ですね。ちょっと救われない(笑)。
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Unknown (ヨックタイ)
2005-01-17 21:26:44
ダイナミクスがクラシックに比べてジャズが小さいというのは、TAROさんの説明を拝読して、なるほどと思いました。クラシックは「無音を聴くのだ」などと禅問答のようなことを言われたことがありますが、まさにダイナミクスの極みでしょうね。



確かにクラシックはテンポに揺らぎがありますね。でもワルツなどはテンポに揺らぎがないほうがいいときもあります。これは元来踊りのための音楽だったからだと聞いたことがあります。テンポが揺らいだら踊れないですからね(笑)クラシックに慣れた人間がジャズをかじろうとした時に、まず困ることはノリなんですよ。楽譜通りにジャズを弾くと、「なんじゃこりゃ!」となってしまう。クラシックでは楽譜を記録(record)として捉える一方でジャズはメモ(note)なんだろうなと思います。
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むぅ・・・・・ (TARO)
2005-01-17 22:28:53
>med-swingさん



>ジャズが根本的にリズムを聞かせる音楽だ



あー、なるほど。言い得て妙ですね。

ジャズがもともとは黒人達たちが冠婚葬祭のマーチングバンドとして日銭を稼いだりしたところに原点があるのを思えば、頷けますね。

スイングジャズだってダンスミュージックだし、行進曲や舞曲って「まずリズムありき」ですもんね。





>キャパが小さいクラブでばっかり演奏しているから



ううむ・・・・・(笑)。

まあコンサートホールなどで演奏される純粋に観賞の為の音楽としての側面は、ジャズではこれから花開いていくのだと思いたいですねぇ。

クラシックも室内楽だった時期はあったわけですし、それを考えるとジャズはこれからこれから!、なんて(笑)。





>ヨックタイさん



>クラシックは「無音を聴くのだ」



わからん・・・・・それってフレーズ間のスペースを重要視するって事ですかね・・・・・。

まぁこういう禅問答が理解できるようになれば、評論で食っていける・・・・・のかな?(笑)。





>確かにクラシックはテンポに揺らぎがありますね。

>ワルツなどはテンポに揺らぎがないほうがいい



そうですね。

med-swingさんへのコメントでも書いていますが、舞曲や行進曲はインテンポが前提ですよね。





>クラシックに慣れた人間が

>まず困ることはノリなんですよ



僕はリズムに対するノリというのは音楽のジャンルではなくて、それぞれの「郷土、風土」に基づいているという持論があるのです。

例えばジャズのスイングは南部の黒人のリズムから来ていますね。

譜面に忠実なはずのクラシックであっても、例えばオーストリアの「ウインナーワルツ」とかありますよね。均等なな3拍子で記譜されているのに、2拍目がなぜか食い気味に入ってくる。

農耕民族の日本人にはワルツは難しくって基本的には2拍子。裏拍を意識する事に慣れてない、とか。

つまり「ノリ」はジャンルごとに違いがあるのではなくて、「郷土、風土」によってその傾向が決まってくるという・・・・・そういった世界各国にある独自のノリを、クラシック音楽の記譜法で譜面に起こすという事自体に無理があるのかもしれませんね。
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